封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう

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64 決勝トーナメント前夜

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歓声や拍手喝采とともに、対戦表が埋まる。


第一試合《Eランク冒険者》トントン対《双剣の騎士》ブランク。

第二試合《暁の魔法使い》ライジング対《竜殺し》ゼビカ。

第三試合《剣帝》ガゼット対《大魔法使い》グレン。

第四試合《精霊剣使い》フューエル対《剣客》レインシード。


そして第一試合と第二試合の勝利者、第三試合と第四試合の勝利者がそれぞれ準決勝を闘い、勝った二人の決勝戦となる。

俺の対戦相手は《双剣の騎士》ブランク……一番謎の多い奴である。

このパーティーにも姿を見せていない。
今までの試合を見てきたが、圧倒的な双剣の技量と、マナ・クォーツを埋め込んだ籠手で戦って来た人物である。
マナ・クォーツには《障壁》のような防御できる魔法が込められている。攻撃は、ほとんど双剣である。

「おやおや」

ライジングは対戦表を確認すると微笑した。

「トントンさんとは、お互い勝ち残れば準決勝で対戦ですね」

「ああ、そうだな」

「まあ、ブランクさんも強そうですが」

「俺は問題ない。しかしそちらの対戦相手はゼビカだ」

「いやあ、怖いですよ。死ぬかも知れない」

「余裕そうだな」

「まあ、お互い勝ち残ったときにうかがいますよ。あなたが本当に聞きたかったことを。……勝ち進めれば、ですが」

「ああ。聞かせてもらうぞ。その時に」

何のことなく、視線を交わし合う。その瞳の奥に、お互い強い意志が介在しているのは目に見えている。

そうだ。酒の席などで語れはしない。本心は、剣を交えてだ。

「へっ、なんだよ。俺様の対戦相手はじいさんかよ?」

フューエルがこちらに近づいてくる。

対戦相手である《剣客》レインシードは、

「ふん。油断していたら首が飛ぶぞ、小僧よ?」

挑発を挑発で返して、また酒を煽った。

「上等だよ」

「冥土の土産にお前さんの魂も持って行ってやるわ」

「こちらこそ、寿命を待たずにあの世へ送ってやらあ」

ゼビカも、対戦表を見て近づいてくる。

「あなたですね、《竜殺し》のゼビカ」

ライジングは、飄々としながら握手を求める。

「ああ。対戦をよろしく頼む」

ゼビカは、快くその手を握った。

「殺しても恨まないでくださいよ」

「大した自信だが、自分の命の心配をしていたらどうだ?」

……遠くでは、《剣帝》ガゼットも対戦表を見た。

彼の相手は優勝候補の一人である《大魔法使い》グレン。

対戦表を一瞥してから立ち去ろうとするグレン――それを見もせずに、まっすぐに踵を返した。

歩み寄ってくる。こちらへ。

目的を持って歩くだけで、周囲がざわつく。

目指すのは、視線の先にいたライジング――かと思われた。

「……上がってきたか。ここまで」

ガゼットは、力強い瞳を俺へ向けながら、小さく言った。

遠目に見ている者は気づかない。
覇者が注目している、要注意人物。それは俺と一緒にいるライジングか、フューエルか、ゼビカか。

びりびりと威圧的な空気がのしかかる。

言われた俺は、肩をすくめた。

「ちゃっかりチェックしていたのか? 冴えない試合しかしていない俺のことを?」

「強者は、一目見ればわかる」

「買いかぶり過ぎだ」

「……ふん」

気に食わなさそうにしながら、ガゼットは改めて、その場にいる俺たちを見回した。

「ライジングに、フューエルに、ゼビカに、レインシードか。健闘を祈る」

そしてねぎらいの言葉をかけた。

その言葉を聞いた周囲の客は、感心の声を上げる。そしてその圧に、畏敬の念を抱く。

ガゼットの圧に屈服する剣士は、ここにはいない。
ライジングも、フューエルも、ゼビカも、レインシードも。
だが、意外にも律儀な言葉に、内心面食らっている者はいるだろう。

「俺も応援してくれ。俺だけ『健闘を祈る』と言われていない」

ガゼットに指摘したが、無視された。
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