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97 ランドとの再会
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火の玉は、魔獣と区別するために『星外獣』と呼称することになった。
また、グロースター家の資産をなげうち、冒険者協会に討伐依頼が出されることになった。Aランク以上の魔物と同様で、冒険者の適性もA級以上が推奨される代わりに、報酬は莫大なものとなる。
「そうか、冒険者協会を作ったのは勇者のラザレスか……」
竜になったゼビカの背に乗りながら、俺は納得した。
「残った魔獣を狩るのが目的だったのだろうが、ロイと一緒にこの状況を予見していたのなら、境界を作った理由に外敵の排除も含まれていたのだろうな」
「だろうな」
「ゼビカ、お前全部知っていたんじゃあるまいな?」
「俺は聞かされていなかった。魔王が封印されてからしばらく竜の国にいたからな」
「……ふん」
ファスターはグッドフェロウに残り、住民避難や周辺の警戒にあたっている。
――と、クインタイルまで半分ほどの距離を進んだところで、ファスターから連絡が来た。
「ファスターから冒険者証を通して連絡があった。調べたところ、第二波まではあと三日といったところで、規模は第一波の十倍だそうだ」
「クインタイルは遠い。一日がかりだから猶予があるのは助かった」
「話聞いてたか? 十倍だぞ」
「大規模な破壊を防ぐために、トントン、お前が動いているのではないのか?」
「……さすがに俺一人ではさばききれんだろう」
「クインタイルに落ちる予定のひと際でかい『星外獣』の情報は?」
「確認できん」
「ううむ……」
ほぼ一日かけてクインタイルに到着する。ドラゴンが来たということでクインタイルは騒ぎになったが、そんなことは気にしない。俺はゼビカから降りて、再びクインタイルの町に帰ってきた。
「では俺は、ファスターに支援してもらいながらほかの地域の応援に向かう。対応しきれない所があるだろうからな」
「わかった。礼を言う」
「精霊王の居場所はわかったのか?」
翼をはばたかせながらゼビカに言われて、俺は嘆息した。
「……まったく、遊ばれている気分で実に不快だ。精霊王に会ったら一発殴ってやらなきゃ気が済まん」
「精霊王に対してそこまで言える人間はお前くらいだ。ではな」
ゼビカはそのまま、騒然とする人々に見送られて飛び立っていった。
「トントン!」
竜が飛び立ってから、遠巻きに見る人々の中から声をかけられた。
「ランドか! 久しいな」
復活したての時、俺に絡んできたチンピラ……いや冒険者のランドだった。なんだかしばらく見ないうちに激太りしているように見える。まったく冒険者に見えん。
「何に乗ってきてるんだお前。目立ちまくってんじゃねえか。来い」
ランドに促されて、俺たちはやじ馬から逃げるように酒場に入っていく。
「まず言いたいことがある。あんたに出会ったことで、俺の人生は変わった。本当に感謝しきれねえ」
そして酒も供されないうちに頭を下げられた。
「ああ、まあ、それはよかった」
あっけにとられながら返す。
「だがグランドイーターをさばいた金を元手に金を稼ぎすぎた。百回生まれ変わっても使いきれねえ金だ。今までその日の食い扶持だけどうにかしてきた俺にとっては、余りまくっている金をどうしていいかマジでわからない。稼がなくてよくなったから冒険者として働く意味もなくなったし、毎日酒飲んでるだけだ」
「だから腹だけ立派になっていたのか」
ぜいたくな悩みである。だが、まあ、ちょうどよかったのかもしれない。
「『星外獣』のうわさは出回ってるか?」
「ああ、そういや冒険者協会に警告が出されてたな。でも冒険者が処理してくれたんだろ?」
「あれは第一波だ。十倍の規模の第二波と、おそらく本隊と思われる巨大『星外獣』が残っている。これからすべて倒さねばならん」
「……やばいのか?」
「ああ。ランド、世界を救ってみたくはないか? 俺と、お前でだ」
俺が微笑しながら言うと、ランドは閉口して眉をひそめた。
事情を一通りかいつまんで説明する。それから、これから俺がやろうとしていることも。話を聞くと、ランドは深いため息とともに口を開く。
「……あんたのことだ、冗談なんかじゃねえんだろうな」
「無論だ。いくら金があっても世界は救えない。人生に潤いがよみがえるぞ」
「もともとあんたのおかげで拾った金と命だ。やってやるよ」
ランドは二つ返事でうなずいた。
早々に酒場を出る。時刻は夜になっている。
「さっそく頼む。俺は山の方に向かう」
俺が言うと、ランドがうなずいた。
「冒険者たちに呼びかけりゃいいんだな?」
「ああ」
『星外獣』について、冒険者たちの意識が甘い気がした。
今まで平和だったからか、どこかで自分たちのところだけは大丈夫、という根拠のない安心があるのだろう。
ファスターと冒険者協会が緊急で呼びかけてはいるが、まだまだだ。
ランドには冒険者たちへの注意喚起と、もし手すきの者がいればここクインタイルの防衛を呼びかけてもらうことになった。
「だったら、まずはクインタイルの冒険者協会に行く」
「頼んだ。ファスターやゼビカの連絡先も教えておくから連携してくれ」
「……なあ」
別れ際、ランドが言った。
「本当にあんたのこと、尊敬してるんだ。誰よりも」
「英雄のゼノン・ウェンライトよりか?」
「まあな」
「鼻が高いよ」
「だから、あんたの頼みなら何だってやってやるよ。命がけで世界だって救ってやる」
「その意気だ」
俺とランドは拳を合わせて、それぞれ目指す場所へ向かう。
また、グロースター家の資産をなげうち、冒険者協会に討伐依頼が出されることになった。Aランク以上の魔物と同様で、冒険者の適性もA級以上が推奨される代わりに、報酬は莫大なものとなる。
「そうか、冒険者協会を作ったのは勇者のラザレスか……」
竜になったゼビカの背に乗りながら、俺は納得した。
「残った魔獣を狩るのが目的だったのだろうが、ロイと一緒にこの状況を予見していたのなら、境界を作った理由に外敵の排除も含まれていたのだろうな」
「だろうな」
「ゼビカ、お前全部知っていたんじゃあるまいな?」
「俺は聞かされていなかった。魔王が封印されてからしばらく竜の国にいたからな」
「……ふん」
ファスターはグッドフェロウに残り、住民避難や周辺の警戒にあたっている。
――と、クインタイルまで半分ほどの距離を進んだところで、ファスターから連絡が来た。
「ファスターから冒険者証を通して連絡があった。調べたところ、第二波まではあと三日といったところで、規模は第一波の十倍だそうだ」
「クインタイルは遠い。一日がかりだから猶予があるのは助かった」
「話聞いてたか? 十倍だぞ」
「大規模な破壊を防ぐために、トントン、お前が動いているのではないのか?」
「……さすがに俺一人ではさばききれんだろう」
「クインタイルに落ちる予定のひと際でかい『星外獣』の情報は?」
「確認できん」
「ううむ……」
ほぼ一日かけてクインタイルに到着する。ドラゴンが来たということでクインタイルは騒ぎになったが、そんなことは気にしない。俺はゼビカから降りて、再びクインタイルの町に帰ってきた。
「では俺は、ファスターに支援してもらいながらほかの地域の応援に向かう。対応しきれない所があるだろうからな」
「わかった。礼を言う」
「精霊王の居場所はわかったのか?」
翼をはばたかせながらゼビカに言われて、俺は嘆息した。
「……まったく、遊ばれている気分で実に不快だ。精霊王に会ったら一発殴ってやらなきゃ気が済まん」
「精霊王に対してそこまで言える人間はお前くらいだ。ではな」
ゼビカはそのまま、騒然とする人々に見送られて飛び立っていった。
「トントン!」
竜が飛び立ってから、遠巻きに見る人々の中から声をかけられた。
「ランドか! 久しいな」
復活したての時、俺に絡んできたチンピラ……いや冒険者のランドだった。なんだかしばらく見ないうちに激太りしているように見える。まったく冒険者に見えん。
「何に乗ってきてるんだお前。目立ちまくってんじゃねえか。来い」
ランドに促されて、俺たちはやじ馬から逃げるように酒場に入っていく。
「まず言いたいことがある。あんたに出会ったことで、俺の人生は変わった。本当に感謝しきれねえ」
そして酒も供されないうちに頭を下げられた。
「ああ、まあ、それはよかった」
あっけにとられながら返す。
「だがグランドイーターをさばいた金を元手に金を稼ぎすぎた。百回生まれ変わっても使いきれねえ金だ。今までその日の食い扶持だけどうにかしてきた俺にとっては、余りまくっている金をどうしていいかマジでわからない。稼がなくてよくなったから冒険者として働く意味もなくなったし、毎日酒飲んでるだけだ」
「だから腹だけ立派になっていたのか」
ぜいたくな悩みである。だが、まあ、ちょうどよかったのかもしれない。
「『星外獣』のうわさは出回ってるか?」
「ああ、そういや冒険者協会に警告が出されてたな。でも冒険者が処理してくれたんだろ?」
「あれは第一波だ。十倍の規模の第二波と、おそらく本隊と思われる巨大『星外獣』が残っている。これからすべて倒さねばならん」
「……やばいのか?」
「ああ。ランド、世界を救ってみたくはないか? 俺と、お前でだ」
俺が微笑しながら言うと、ランドは閉口して眉をひそめた。
事情を一通りかいつまんで説明する。それから、これから俺がやろうとしていることも。話を聞くと、ランドは深いため息とともに口を開く。
「……あんたのことだ、冗談なんかじゃねえんだろうな」
「無論だ。いくら金があっても世界は救えない。人生に潤いがよみがえるぞ」
「もともとあんたのおかげで拾った金と命だ。やってやるよ」
ランドは二つ返事でうなずいた。
早々に酒場を出る。時刻は夜になっている。
「さっそく頼む。俺は山の方に向かう」
俺が言うと、ランドがうなずいた。
「冒険者たちに呼びかけりゃいいんだな?」
「ああ」
『星外獣』について、冒険者たちの意識が甘い気がした。
今まで平和だったからか、どこかで自分たちのところだけは大丈夫、という根拠のない安心があるのだろう。
ファスターと冒険者協会が緊急で呼びかけてはいるが、まだまだだ。
ランドには冒険者たちへの注意喚起と、もし手すきの者がいればここクインタイルの防衛を呼びかけてもらうことになった。
「だったら、まずはクインタイルの冒険者協会に行く」
「頼んだ。ファスターやゼビカの連絡先も教えておくから連携してくれ」
「……なあ」
別れ際、ランドが言った。
「本当にあんたのこと、尊敬してるんだ。誰よりも」
「英雄のゼノン・ウェンライトよりか?」
「まあな」
「鼻が高いよ」
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