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鶴井こう

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67 クラン拠点

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 俺は新しくクラン拠点を購入した。

 やはり予算がないので一番安いクラン拠点である。拠点名は『パンデモニウム』とした。
 グランニット王国地域のアサギ村付近が背景で、畑と青空が広がっている。

 例によって野原しかない。

「さっそく農園作るのだ!」

 パヴロヴァは鍬を担いでやる気十分であるが、家が先ではないだろうか。
 足元でネコッコのおせんべがはしゃいでいる。

「わあ! すごいですね! 自宅の保管庫からあふれてる素材ここに移していいですか?」

 イリネイカはすぐさま保管庫をクラフトする。

「あふれました!」

 そしてすぐに二個目の保管庫をクラフトした。アイテムは自宅の保管庫から転送できるらしくどんどん入れている。

「こんこんちきちき! ゲーム実況Vtuberのぉー、小手先りんりん! 今日はお友達のクラン拠点ができたから見に来たよ!」

 りんは当たり前のように遊びに来て動画を配信している。

 皆やりたい放題でまとまりがない。まあいいのだが。

「取り急ぎ、戦闘要員は欲しいところだな……」

 クラン戦は少なくとも五人は必要である。シーズンごとに対戦環境や条件も異なり、運営から事前告知され、シーズンごとに順位を決定する。

 パヴロヴァは対人戦をはじめとしたガチの戦闘はやらない主義で、イリネイカは素材を収集することに心血を注いでいる。

 戦闘員は、今俺一人だけだ。

「え? なんか今日見てる人多くない……? ええ? この間のキャロルさんとの意図しないコラボ動画がバズって……?」

 いちおう戦闘クランとはいっても、メンバーそれぞれ事情が違うのだから、そのへん明確にしておく必要があるな。

「ちょっと待って。何この再生数!?」

 投稿した動画の履歴を見ながらりんはわめいていた。

「ボクよりフェルちゃんやキャロルさんを出せって? いやボクのチャンネルなんですけど!?」

 いずれにしてもクラン戦はまだ早そうだ。集団戦に一人で挑むような真似はできん。

 しばらくはキャロルやホノホムラたちとチーター狩りでも楽しむとするか。

「ぐううー!」

 俺が腕組みして考えていると、りんが俺の背中をぽかぽかと殴り始めた。

 放っておく。

「パヴロヴァ、メシを頼む。少し出かけてくる」

 殴られながら、俺はパヴロヴァに言った。
 土を耕し終え、畑を囲うフェンスを設置していたパヴロヴァが目を輝かせながら顔を上げる。

「喜んでなのだ! 戦闘目的なのだ? それとも採集なのだ?」

「無論戦闘で、対人戦だ」

「ストックしてある料理をいくつか渡すのだ。存分に暴れてくるのだ」

 俺はパヴロヴァから戦闘用のバフが得られる料理をいくつかもらってバッグの中へ入れた。

「私は採集用でお願いします!」

 イリネイカもパヴロヴァに料理をもらい、出かける準備を始める。素材収集のためにウルミーシュ周辺をぶらつくらしかった。

「いいけど、イリネイカもレベル30以上なのだ。PK目的の冒険者には十分注意するのだ」

「あ、大丈夫です。貴重な装備は置いていくので」

 ラスベート霊城で手に入れた装備はつけていないらしい。

 イリネイカは採集専用装備を着けた。
 装備には採集に関して補正がかかるものがあり、素材があれば作成できる。推奨レベルが低い物なら、自由市場での価値はそれほど高くはない。

「パヴロヴァさんとりんりんさんも一緒に行きますか?」

「ボクはフェルちゃんについていくよ。なんかランカーの人たちが集まるみたいだし」

 イリネイカに言われて、りんは答えた。

「おじさんはクラン用の拠点とか設備をいろいろ作っておくから、みんな楽しんでくるのだ」

 パヴロヴァは留守番らしい。

「じゃあ行ってきますね!」

 イリネイカは一足先にクラン拠点を出ていく。

「お前、また秒殺されるぞ。いいのか?」

 俺はりんに確認を取る。

「今日こそガチ装備! どんと来るがいいの!」

 りんは今度はスカートの短い赤いドレスのような装備を身に付けている。

 そういう問題じゃなく、不正に操作された攻撃力の犠牲になるのではということなのだが……何を相手にしようとしているか理解しているということでいいんだろうか。

「まあ構わないのならいい」

 俺は言って、りんとパーティーを組んだ。
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