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102 ヴァーノンの魔法石
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襲撃しようとする者は、もういない。そもそも気絶しているか戦意を失っている。
ほとんど試作一号の手柄である。消費魔力は多いし人混みでは使えないので実用に向かないが、さすがの威力だ。降参していた者たちにも容赦なく魔法を放っていたのは、もう見ないふりしよう。
俺たちはしりもちをついているグレントに近付く。
「さすがにわざと逃がして『ルキフゲ』に追わせるわけにはいかないし、そのまま捕まえますよ?」
「うん。そうして」
サフィさんは満足そうにうなずいた。もう『ルキフゲ』の試運転による確認は完了したとみえる。
「てめえ……!」
グレントは俺のことを思い出したのか、後ずさりしながらも俺を睨む。
「おとなしく捕まってくれ、グレント。すでにここにいる全員、逃げても自動で追跡できるようにしている。ジェラードさんの名誉のためにも、すぐに捕まったほうがいいと思う」
「誰だよジェラードって!?」
「いや、お前らの移送の指揮取ってた隊長」
「知るかよ!」
グレントは立ち上がって、踵を返して走り出す。
それを――
「がはっ!」
殴り飛ばした男がいた。首に魔法石を下げた大男だった。
「ふん、まあこんなものだったか」
「ヴァーノン……さん」
呆れてため息をつく大男に、殴られた頬を押さえながらグレントは苦い顔をした。
「誰だ? グレントの仲間か?」
「仲間? 俺がこいつを使っているだけで仲間なんて関係じゃねえな。なあグレントよ」
大男――ヴァーノンがグレントに言うと、
「…………」
グレントは少し顔をそらした。
ヴァーノンは肩をすくめると、首から下げていた魔法石を発動させた。
倒れていた襲撃者たちが、ぴくりと動いた。
「てめえら! まだ祭りは終わってねえぞ!」
ヴァーノンが仲間たちを鼓舞した、ように見えた。
「起きやがれクソども!」
「!?」
襲撃者たちが起き上がるが――様子がおかしい。
「――――」
あれだけ大騒ぎしていた襲撃者たちが、みな静まり返っている。
襲撃者たちが、静かに、腰に差していた剣を抜いた。
「何が起きている――?」
何かによって操られているように見える。しかし、『精神操作』系の魔法の挙動じゃない。
「おい! あの負傷でゴーレムに攻撃させたら最悪死ぬぞ!」
屋根に上っていたスキアさんが、地上の様子を見降ろしながら叫んだ。
そうだ。本来なら、起き上がれないほどのダメージのはずだ。
襲撃者たちが一斉に俺に襲い掛かる。
「くっ!」
シールドの魔法を張りながら、包囲されないよう逃げる。
襲撃者は、サフィさんやゴーレムの方にも向かう。
「なんだ、あれ……?」
と、なぜかグレントも不思議がっていた。
「グレントよ、こっちへ来い」
「?」
ヴァーノンがグレントを呼び寄せる。
そして、ヴァーノンは静かに腰の剣を抜くと、
「――え?」
仲間であるはずのグレントを切り伏せた。
「なっ!?」
「グレント、てめえはもう用済みだ」
深く、斜め上から腰にかけて剣が入った。目を見開くグレントは血を流しながら倒れる。
しかし倒れた次の瞬間には、ほかの襲撃者と同じく、起き上がってこちらへ襲い掛かってくる。大量に血を流していてもお構いなしだ。
「一体なんなんだあれは!?」
本格的に何なのかわからない。
――が、あのヴァーノンが魔法石で何かをしたことはわかった。
とにかく、探ってみるしかないか……!
俺は逃げながら、収納の魔法石から新作ポーション『ディープインサイト』を取り出し、
「ゴクッ」
飲み干す。
ただし、見ただけでは分析はできない。
どうにか触らなければ。
剣持って襲って来てる奴に素手で近付いて行って触るのは難易度が高いが……。
「スキアさん、サフィさん、こいつらどうにか押さえ込めますか!? 一人だけでもいいです!」
「すでにやってる」
サフィさんは光で拘束する魔法『レーザーバインド』で襲撃者たちを簀巻きにしていた。
「けど――数が多すぎる」
ただ、拘束しきれないらしい。
「大丈夫です!」
俺はサフィさんの所まで駆けていき、動けなくされていた襲撃者の一人に触れた。
ほとんど試作一号の手柄である。消費魔力は多いし人混みでは使えないので実用に向かないが、さすがの威力だ。降参していた者たちにも容赦なく魔法を放っていたのは、もう見ないふりしよう。
俺たちはしりもちをついているグレントに近付く。
「さすがにわざと逃がして『ルキフゲ』に追わせるわけにはいかないし、そのまま捕まえますよ?」
「うん。そうして」
サフィさんは満足そうにうなずいた。もう『ルキフゲ』の試運転による確認は完了したとみえる。
「てめえ……!」
グレントは俺のことを思い出したのか、後ずさりしながらも俺を睨む。
「おとなしく捕まってくれ、グレント。すでにここにいる全員、逃げても自動で追跡できるようにしている。ジェラードさんの名誉のためにも、すぐに捕まったほうがいいと思う」
「誰だよジェラードって!?」
「いや、お前らの移送の指揮取ってた隊長」
「知るかよ!」
グレントは立ち上がって、踵を返して走り出す。
それを――
「がはっ!」
殴り飛ばした男がいた。首に魔法石を下げた大男だった。
「ふん、まあこんなものだったか」
「ヴァーノン……さん」
呆れてため息をつく大男に、殴られた頬を押さえながらグレントは苦い顔をした。
「誰だ? グレントの仲間か?」
「仲間? 俺がこいつを使っているだけで仲間なんて関係じゃねえな。なあグレントよ」
大男――ヴァーノンがグレントに言うと、
「…………」
グレントは少し顔をそらした。
ヴァーノンは肩をすくめると、首から下げていた魔法石を発動させた。
倒れていた襲撃者たちが、ぴくりと動いた。
「てめえら! まだ祭りは終わってねえぞ!」
ヴァーノンが仲間たちを鼓舞した、ように見えた。
「起きやがれクソども!」
「!?」
襲撃者たちが起き上がるが――様子がおかしい。
「――――」
あれだけ大騒ぎしていた襲撃者たちが、みな静まり返っている。
襲撃者たちが、静かに、腰に差していた剣を抜いた。
「何が起きている――?」
何かによって操られているように見える。しかし、『精神操作』系の魔法の挙動じゃない。
「おい! あの負傷でゴーレムに攻撃させたら最悪死ぬぞ!」
屋根に上っていたスキアさんが、地上の様子を見降ろしながら叫んだ。
そうだ。本来なら、起き上がれないほどのダメージのはずだ。
襲撃者たちが一斉に俺に襲い掛かる。
「くっ!」
シールドの魔法を張りながら、包囲されないよう逃げる。
襲撃者は、サフィさんやゴーレムの方にも向かう。
「なんだ、あれ……?」
と、なぜかグレントも不思議がっていた。
「グレントよ、こっちへ来い」
「?」
ヴァーノンがグレントを呼び寄せる。
そして、ヴァーノンは静かに腰の剣を抜くと、
「――え?」
仲間であるはずのグレントを切り伏せた。
「なっ!?」
「グレント、てめえはもう用済みだ」
深く、斜め上から腰にかけて剣が入った。目を見開くグレントは血を流しながら倒れる。
しかし倒れた次の瞬間には、ほかの襲撃者と同じく、起き上がってこちらへ襲い掛かってくる。大量に血を流していてもお構いなしだ。
「一体なんなんだあれは!?」
本格的に何なのかわからない。
――が、あのヴァーノンが魔法石で何かをしたことはわかった。
とにかく、探ってみるしかないか……!
俺は逃げながら、収納の魔法石から新作ポーション『ディープインサイト』を取り出し、
「ゴクッ」
飲み干す。
ただし、見ただけでは分析はできない。
どうにか触らなければ。
剣持って襲って来てる奴に素手で近付いて行って触るのは難易度が高いが……。
「スキアさん、サフィさん、こいつらどうにか押さえ込めますか!? 一人だけでもいいです!」
「すでにやってる」
サフィさんは光で拘束する魔法『レーザーバインド』で襲撃者たちを簀巻きにしていた。
「けど――数が多すぎる」
ただ、拘束しきれないらしい。
「大丈夫です!」
俺はサフィさんの所まで駆けていき、動けなくされていた襲撃者の一人に触れた。
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