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139 精霊樹をもらう

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「た、助かった……!」

おそらくウィンターが作ったものであろう『デモナイズ』モンスターがこんなところにもいるとは……実験体だろうか?

「よかったー!」

「ロッド強い!」

ドリアードたちが歓声を上げる。

手を引かれて、ドリアードたちの集まりの中心に連れていかれる。

「あ、ど、どうも……みんな無事でよかったです」

バンディを見ると、白目をむいているが生きてはいるようだ。

「バンディはエセ商人だから死んでいい」

ドリアードたちはバンディに冷たい目線を送る。まあ、そうなんだろうけど……とりあえず俺が持って帰るか。

「モンスターが襲ってくるのはいつものことだからいいけど、バンディの悪意には気づけなかった……」

モンスターはいつものことなのか……。

「それは仕方ないと思います。騙そうとする人を見極めるのは、同じ人間でも難しいので」

言うと、ドリアードたちが首を左右に振った。

「精霊樹がもっと育てば、悪意とかも感知できるようになるんだけど……」

「もうすでにけっこうおっきいですけど」

「もっと育つの! 古い精霊樹が死んじゃって、今いるのは若い精霊樹だから、まだ悪意の感知はできない。僕らがいれば育つのは早いんだけど、もう少しかかるかなぁ」

精霊樹が完全に育つまでは、知能のある敵の見極めは難しいようだ。

「それなら――」

俺は持っている土壌強化ポーションをわけてあげることにした。手元に少し残っていたそれをすべてドリアードに渡す。

「これなに?」

「異邦の環境に効くかはわかりませんが、植物の成長を助けてくれるポーションです」

「すごい!」

「でももし精霊が気に入らなければ、あげるのはやめてください。逆に枯らしてしまうかもしれないので。もし精霊に合えば、後日もっと調合して持ってきます」

「精霊樹ほしいって!」

精霊樹に手を触れていたドリアードの一人が言った。

散布装置はないので、定期的に土にかける必要があることを伝える。

それから俺がバンディを連れて一時帰ろうとすると、

「待って!」

ドリアードたちがそれを引き留めた。

その後、

「ねえねえ、古い精霊樹がまだあったじゃない?」

「倒れて死んじゃったやつ?」

なにやら相談を始める。

「あれ持ってってもらえばいいんじゃない?」

「あー」

「なかなか腐らないから邪魔だしさ」

「でも、まだ魔力は残ってるよ。人間にとっては強力すぎないかなあ」

「お礼なんだし、友好の証として持って行ってもらってもいいんじゃない? あれならどんなキノコでも育つしさ」

「なるほど」

「なるほど」

ちょっと待て。なんの話だと思ったら、キノコの原木の話してる?

ドリアードにとって、精霊樹は守り神のようなものだ。倒れて死んでしまったということだが、それでもそんなものでキノコを育てたりなんてしてもいいのだろうか?

そもそも精霊樹でキノコ育てるって、そんなことできるのか?

「ねえロッド、よかったら」

ドリアードたちが一斉に俺の方を向いて、提案した。

「いや、その、それはちょっと恐れ多いというか」

「遠慮しなくていいよ!」

そんなわけで、死んだ精霊樹をぶつ切りにしてもらってしまった。
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