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175 ラズリーズ魔法工房
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大魔法使いラズリーズ・オーラリックはヴェルドリンに工房を構える魔法使いだ。
魔法や魔法石の研究をしながら、個人の趣味で古代魔法を調べたりもしているらしい。
事前にランドラック卿に教えてもらった区域で魔法工房を探していたらすぐに見つかった。
「…………」
俺は扉を開ける手を一瞬ためらう。
ランドラック卿の口ぶりで確信を得た。これは、何かある。
それにこの休暇、クリムレット卿の方でも絶対裏があるに違いない。
まあ命の危険が伴うものでもないだろうし、何かあるはずという点にさえ気を付ければ大丈夫……のはず。
緊張しながら、俺はドアをノックする。
「はあい」
「!」
どんな化け物が出てくるのだろうと思っていたが、別の意味で驚いた。
気の抜けた幼い声とともにドアを開けたのは、銀色の髪をした少女だった。
「お、女の子……!?」
メリアと同じくらいの年だろうか。俺よりずっと背が低い少女だった。
大魔法使いラズリーズ・オーラリックは女の子――いや、見た目に騙されてはいけない。こんな少女の姿をしているが絶対百歳越えの老婆だ。違いない。侮ったら殺される。
「こんにちは。辺境伯領フーリァンからまいりました、ロッド・アーヴェリスです」
「?」
女の子は首をかしげる。
「お話は、伺っていませんか?」
「えっと……難しくてよくわかんない」
なんだろう。試されているのだろうか。
「ここに大魔法使いラズリーズ・オーラリックさんがいるとうかがっているんですけれども」
「あっ、おばちゃーん!」
名前を出すと、女の子は室内に向かって大声を上げた。
「ああ、来たね」
言いながら、七十歳ほどの老婆が中から歩いてきた。
老婆だが背筋が伸びていて、姿勢がきれいだ。伸びている白髪にも艶があり健康的な印象を受ける。
「私がラズリーズだ。クリムレット辺境伯から話は聞いているよ」
この老婆がラズリーズさんだった。女の子は、弟子かお手伝いみたいな感じだろうか。
「あ、どうも。ロッド・アーヴェリスといいます」
……なんていうか、普通だった。
そりゃそうだ。
辺境伯領以外じゃこれが普通なのだ。年端もいかない女の子が大魔法使いのはずない。百歳を超えて筋骨隆々だったりする人間は普通ではない。戻ってきた。ずいぶん長い間迷子だった俺の中の常識が。
中へ入ると、そこは年季の入った魔法工房だった。大量の本はもちろん、魔法石の加工設備、薬術工房のような坩堝や試験管もある。サフィさんの工房のように、なんでも設備をそろえている感じだ。
だけど、いろんな種類の鉱石のようなものも棚に並んでいて、少し雰囲気は違う。
「目が見えなくなって、どうたらってことだけど」
ラズリーズさんは言った。
俺を出迎えてくれた銀髪の女の子は、ラズリーズさんの腕にしがみついている。お茶とか出したりなどの手伝いをしているわけでもないらしい。
「失明したのは右の方かい?」
「ええ、そうです。魔眼の副作用で……」
俺はうなずいて、古代の魔法薬術書を取り出してラズリーズさんに渡した。
「魔眼ね。そんなもの強制的に使えるようにして目一つ失っただけなら安い方だよ」
ラズリーズさんは薬術書を読みながら言った。
「……で、こんな代物どこで手に入れた?」
「スギル伯領のトリニティ将軍から譲り受けました」
「まったくとんでもないものをよこしてきたもんだね。量産できりゃ世界を変えられるものばかりじゃないか」
載っている古代魔法薬は、どれも効果が強力なものばかりだ。たしかに世界を変えてしまうものだろうが、最初は読むことさえ難儀した。
「現代の製法に合わせて作れたのも感心だけどね」
「はあ、ありがとうございます」
「褒めとらん。その才能は危険だよ。まったく辺境伯もとんでもないのを臣下に加えたものだよ」
「買いかぶりすぎですよ」
俺は苦笑すると、ラズリーズさんはため息を漏らした。
「それに、第二級紋章とは、城塞伯も太っ腹だね」
「これ、やっぱりすごいんですか」
「上は一級と特一級しかない。二級より上は、所領の機密を共有でき、城塞伯軍の大隊さえ動かせる権限で、ほんの一握りの者しか持っていない。ロッド、お前さんの持っているそれは、必要なら城塞伯軍の隊を動かせるほどの権力だよ」
やっぱ結構やばい権限だった。
「目、見せてみな」
ラズリーズさんは近づいてきて、俺の目に鑑定の魔法をかけた。
魔法や魔法石の研究をしながら、個人の趣味で古代魔法を調べたりもしているらしい。
事前にランドラック卿に教えてもらった区域で魔法工房を探していたらすぐに見つかった。
「…………」
俺は扉を開ける手を一瞬ためらう。
ランドラック卿の口ぶりで確信を得た。これは、何かある。
それにこの休暇、クリムレット卿の方でも絶対裏があるに違いない。
まあ命の危険が伴うものでもないだろうし、何かあるはずという点にさえ気を付ければ大丈夫……のはず。
緊張しながら、俺はドアをノックする。
「はあい」
「!」
どんな化け物が出てくるのだろうと思っていたが、別の意味で驚いた。
気の抜けた幼い声とともにドアを開けたのは、銀色の髪をした少女だった。
「お、女の子……!?」
メリアと同じくらいの年だろうか。俺よりずっと背が低い少女だった。
大魔法使いラズリーズ・オーラリックは女の子――いや、見た目に騙されてはいけない。こんな少女の姿をしているが絶対百歳越えの老婆だ。違いない。侮ったら殺される。
「こんにちは。辺境伯領フーリァンからまいりました、ロッド・アーヴェリスです」
「?」
女の子は首をかしげる。
「お話は、伺っていませんか?」
「えっと……難しくてよくわかんない」
なんだろう。試されているのだろうか。
「ここに大魔法使いラズリーズ・オーラリックさんがいるとうかがっているんですけれども」
「あっ、おばちゃーん!」
名前を出すと、女の子は室内に向かって大声を上げた。
「ああ、来たね」
言いながら、七十歳ほどの老婆が中から歩いてきた。
老婆だが背筋が伸びていて、姿勢がきれいだ。伸びている白髪にも艶があり健康的な印象を受ける。
「私がラズリーズだ。クリムレット辺境伯から話は聞いているよ」
この老婆がラズリーズさんだった。女の子は、弟子かお手伝いみたいな感じだろうか。
「あ、どうも。ロッド・アーヴェリスといいます」
……なんていうか、普通だった。
そりゃそうだ。
辺境伯領以外じゃこれが普通なのだ。年端もいかない女の子が大魔法使いのはずない。百歳を超えて筋骨隆々だったりする人間は普通ではない。戻ってきた。ずいぶん長い間迷子だった俺の中の常識が。
中へ入ると、そこは年季の入った魔法工房だった。大量の本はもちろん、魔法石の加工設備、薬術工房のような坩堝や試験管もある。サフィさんの工房のように、なんでも設備をそろえている感じだ。
だけど、いろんな種類の鉱石のようなものも棚に並んでいて、少し雰囲気は違う。
「目が見えなくなって、どうたらってことだけど」
ラズリーズさんは言った。
俺を出迎えてくれた銀髪の女の子は、ラズリーズさんの腕にしがみついている。お茶とか出したりなどの手伝いをしているわけでもないらしい。
「失明したのは右の方かい?」
「ええ、そうです。魔眼の副作用で……」
俺はうなずいて、古代の魔法薬術書を取り出してラズリーズさんに渡した。
「魔眼ね。そんなもの強制的に使えるようにして目一つ失っただけなら安い方だよ」
ラズリーズさんは薬術書を読みながら言った。
「……で、こんな代物どこで手に入れた?」
「スギル伯領のトリニティ将軍から譲り受けました」
「まったくとんでもないものをよこしてきたもんだね。量産できりゃ世界を変えられるものばかりじゃないか」
載っている古代魔法薬は、どれも効果が強力なものばかりだ。たしかに世界を変えてしまうものだろうが、最初は読むことさえ難儀した。
「現代の製法に合わせて作れたのも感心だけどね」
「はあ、ありがとうございます」
「褒めとらん。その才能は危険だよ。まったく辺境伯もとんでもないのを臣下に加えたものだよ」
「買いかぶりすぎですよ」
俺は苦笑すると、ラズリーズさんはため息を漏らした。
「それに、第二級紋章とは、城塞伯も太っ腹だね」
「これ、やっぱりすごいんですか」
「上は一級と特一級しかない。二級より上は、所領の機密を共有でき、城塞伯軍の大隊さえ動かせる権限で、ほんの一握りの者しか持っていない。ロッド、お前さんの持っているそれは、必要なら城塞伯軍の隊を動かせるほどの権力だよ」
やっぱ結構やばい権限だった。
「目、見せてみな」
ラズリーズさんは近づいてきて、俺の目に鑑定の魔法をかけた。
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