辺境薬術師のポーションは至高 騎士団を追放されても、魔法薬がすべてを解決する

鶴井こう

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189 辺境伯を丸め込め

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自分の意思で力が使えてしまうなら、力を使わない状態にして厳重に管理したほうがいい。

クリムレット卿の言っていることはそういうことだ。

でも何か言いくるめるための糸口があるはずだ。

「それにね」

考えていると、クリムレット卿が続けた。

「ランドラックが《神格アルカへストの召喚》を手放したのは、何も危険な魔法と判断しただけじゃない。『危険な魔法兵器が存在している』という事実だけで、他国から攻められる口実になる可能性があったからだ。危険すぎて使えないとなれば、相手も安心して攻めることができる。《神格召喚》というのは、そういう不用意にリスクを生み出す存在でもあるんだよ」

「……ヴェルドリンの場合、南方のメルザリア帝国との関係が崩れるきっかけにもなりえたということですか? アールカが存在しているだけで?」

「そういうこと。だからランドラックは私に《神格召喚》を引き渡す決断をしたんだ」

……地政学リスクというやつだろう。俺はその学問についてよく知らないが、それが原因で隣国に攻め込まれる可能性があることくらいはわかる。《神格召喚》の存在を認識されれば、攻め込むための口実を与えてしまう。うまく奪うことができれば、悪用することだってできる。争いの種になるには十分な存在だ。

「だから、表に出さないよう厳重に管理しておくに越したことはないんだよ。《神格タキオナの召喚》と同様にね」

「でも、俺が見る限り魔法の発動は抑えていてくれたようでした。魔法を使わなければ、普通の女の子と同じです。だから誰かが一緒にいてくれれば大丈夫だと俺は判断しています」

「そうだね、それは名案だ! きみがアールカのそばについて見てくれればいい」

クリムレット卿は屈託のない笑顔で腕を広げた。

「え?」

「だから、きみが見ていて、アールカが自分の魔法を使うようなら全力で隠蔽すればいい。そうすれば大丈夫だね。きみはもともとフーリァンでは変なポーションを作ることで有名だから」

俺、変なポーションを作ることで有名だったの!?

「きみがそばにいれば万が一彼女が魔法を使っても、きみのせいってことでごまかせるわけだね。まさかきみが『不死の軍団』をアールカに作らせて武装蜂起するとは思えないし、力を周辺所領や他国にひけらかすとも思えない」

「するわけないですけど……あれ?」

さっきまでの厳しめの口調はどこに?

「えっと……最初からそう言うつもりで俺を誘導しました?」

「なんのことだい?」

クリムレット卿はしれっと返す。

「ええと、では、それで」

「うん、よろしくね。あっ、このことは他言無用で頼むよ。アールカはきみの弟子ってことにしておいて」

だからこの人怖いんだよ! 最初から最後まで全部手のひらの上だったってことか!?

この調子でタキオナの魔法陣もどこかにしれっと隠されてそうだな。俺のように踊らされている人がいるに違いない。

「サフィちゃんたちに土産話でもしに行きなよ。アールカの紹介も兼ねて」

「そうですね。そうします」

なんだかどっと疲れた。

それにしても、神格召喚の魔法か。

俺はふと禁忌の可能性を考える。「創造と再構築」に「認識を含めた現実の改変」――
創造と変革……そういう役割だと考えると、

「まさか《破壊》の神格召喚もあったりします?」

俺が尋ねると、クリムレット卿はにこにこの笑顔で答えた。

「きみが今まで《神格召喚》に出会って、さらに深くかかわってきているのは、その勘の良さに起因するのかもしれないね。まあただ、そんなのは誰もわかっていないんだよ。口にするだけで危険だから禁忌なわけでね。――口にするだけで危険なんだよ」

「……何も言わなかったことにします」

口は禍の元か。それにしても断言しないで断言するところも怖いんだよなあ……。
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