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190 きっと楽しい明日
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「ロ、ロッドくんがついに女の子をさらってきた! ヴェルドリンで!」
メリアとアールカを連れてサフィさんの工房へ行くと、サフィさんが飛び上がった。
「いや、なんでそうなるんですか!」
ヴェルドリンに行ったお土産のお茶菓子を渡しがてら紹介しに行ったらこれである。アールカは俺の背後に回って恐る恐るサフィさんを見ている。
昼寝していたスキアさんも起き上がった。
「後輩、まさか隠し子か!?」
「どう見ても違います!」
起き抜けに大声で言われて俺は否定した。そもそも年齢的におかしいだろ。
事情が事情なので、ラズリーズさんから紹介された俺の弟子ということで二人に話す。まあアールカも力を使わなければ普通の女の子だし、お手伝いくらいはしていたほうがそれっぽく見えるだろう。
「まあ、クリムレット卿もロッドくんに弟子とらせたがってたしね。ヴェルドリンを代表する大魔法使いの紹介なら間違いないし、いいタイミングじゃない?」
サフィさんは納得したようにうなずいた。
クリムレット卿の事前の根回しが完璧すぎる。助かったけど。
「家どうすんの?」
「俺の部屋に空き部屋があるのでそこに住んでもらおうかと」
「ふーん」
なんだかとげがあるなあ。
「ま、いいけど。ロッドくんヘタレそうだし」
「どういう意味ですか」
わけわからずに返して、ふと工房の隅を見た。
よく目を凝らしてみると、魔力の層が人の形でうっすらと視える。
あれは、まさか……
「ウェルトランさん、もしかしています?」
俺がアールカからもらった目で凝視しながら尋ねると、
「……これは驚いた」
魔力の層があるところからウェルトランさんの声が聞こえた。
隠匿魔法で隠れていたようである。
「いやあ、まさか私の魔法が見破られるとはね。驚いたよ」
サフィさんのお兄さんであるウェルトランさんが、隠匿魔法を解除して現れた。
珍しく動揺している様子である。
「こっそりわが妹の様子を見てから颯爽と登場しようと思ったのに、まさかこんなに早く――ゴッ」
「帰れ!」
サフィさんが空間転移の魔法を使いながらウェルトランさんを殴り抜いた。ウェルトランさんは殴られた勢いのまま空間転移の穴に吸い込まれて消える。いったいどこに通じている穴だったのか、考えたら恐ろしくなったのでやめた。
「……なんだか、ヴェルドリンへ行って得たものもあるみたいだね?」
気を取り直したサフィさんは直接聞こうとはしない。
「あー、まあ、詳しくは説明できないんですが」
俺は頭をかきながらあいまいに答える。
「ま、いいよ。どうせクリムレット卿のことだから、いろいろ裏があったんだろうしね」
どう説明しようか悩んでいたらサフィさんが微笑しながら言った。
「すいません」
その時、工房のドアがノックされた。
「おー、そろそろ帰ってくるかと思ったがタイミングよかったぜ! 土産あるか?」
アララドさんだ。
「アララドさんにはおつまみ買ってきましたよ」
「ありがてえぜ」
流れでアララドさんにもアールカを紹介する。
「なんだ弟子とったのか。だったら今度オレが辺境伯領案内してやるぜ」
アララドさんは俺の背後に隠れているアールカに笑いかけた。
「俺の時みたいな冗談はやめてくださいよ」
俺が初めて辺境伯領に来た時にやられたサプライズを思い出して、俺は釘を刺しておく。
「そういやこの間軍の遠征で岩塩をしこたまとってきてよ」
アララドさんは言った。
「そんなことまでしてるんですか辺境伯軍って」
「まあな。塩とか交易商人から買うと高いからよ。領民に配るために定期的に岩塩のある山まで行って大量に取ってくるんだよ」
アララドさんが説明する。
「だから今、塩がたんまりあるからよ……オレは明日、異邦付近で川魚取ってきて塩釜焼きしてくるぜ。一緒に来るか?」
「いいですね塩釜焼き! ぜひ!」
俺はうなずいた。
「余はアトラスと一緒にタキオナの影響がなくなった異邦の調査をしてくる。深淵方面に同族がいるかもしれんからな」
スキアさんは工房の中に置いてあるゴーレムをぺしぺし叩きながら言った。
「なんだ、だったら途中まで一緒に行くか」
アララドさんが言うと、
「ま、余がいることで心強くなるんなら一緒に行ってやるのもやぶさかではないがな!」
スキアさんはドヤ顔で笑った。
「わたしは明日、午後からオズさんとお茶会がありますので、お留守番です!」
メリアが言ったところで、
「ごきげんよう、ですわ」
ちょうどあいさつに来たらしく、オズが工房にやってきた。
「ではわたくしたちもご一緒させていただくのはどうでしょうか?」
話を聞いたオズは提案して、メリアはうなずいた。
このお嬢様たちは、少しやんちゃが過ぎるきらいがある。危険地帯の付近に足を運ぶのは心配ではあるが、異邦を渡れるくらいには強いので何も言えない。この突拍子もない剣呑な提案にクリムレット卿はいつも二つ返事でうなずいてくるので本当に何も言えない。
「じゃ、せっかくだしみんなで一緒に行こうか」
サフィさんが言った。
「サフィさん、でも仕事は大丈夫ですか? 俺はまだ休暇の期間内ですけど、サフィさんは普段の仕事があるんじゃ?」
「…………」
「サフィさん?」
「次の日二倍がんばればいいし?」
「おい」
かくして、塩釜焼きのためだけに危険地帯『異邦』のすぐ近くの川辺まで足を運ぶことになった。
しかし山沿いの地域である。何の準備もなく安心していけるような場所ではない。これから必要なものを準備しないといけない。
「じゃあ、今から言う段取りで一緒にやっていこう、アールカ」
俺はアールカに、辺境伯領フーリァンに来てから初めての仕事を指示することにした。
メリアとアールカを連れてサフィさんの工房へ行くと、サフィさんが飛び上がった。
「いや、なんでそうなるんですか!」
ヴェルドリンに行ったお土産のお茶菓子を渡しがてら紹介しに行ったらこれである。アールカは俺の背後に回って恐る恐るサフィさんを見ている。
昼寝していたスキアさんも起き上がった。
「後輩、まさか隠し子か!?」
「どう見ても違います!」
起き抜けに大声で言われて俺は否定した。そもそも年齢的におかしいだろ。
事情が事情なので、ラズリーズさんから紹介された俺の弟子ということで二人に話す。まあアールカも力を使わなければ普通の女の子だし、お手伝いくらいはしていたほうがそれっぽく見えるだろう。
「まあ、クリムレット卿もロッドくんに弟子とらせたがってたしね。ヴェルドリンを代表する大魔法使いの紹介なら間違いないし、いいタイミングじゃない?」
サフィさんは納得したようにうなずいた。
クリムレット卿の事前の根回しが完璧すぎる。助かったけど。
「家どうすんの?」
「俺の部屋に空き部屋があるのでそこに住んでもらおうかと」
「ふーん」
なんだかとげがあるなあ。
「ま、いいけど。ロッドくんヘタレそうだし」
「どういう意味ですか」
わけわからずに返して、ふと工房の隅を見た。
よく目を凝らしてみると、魔力の層が人の形でうっすらと視える。
あれは、まさか……
「ウェルトランさん、もしかしています?」
俺がアールカからもらった目で凝視しながら尋ねると、
「……これは驚いた」
魔力の層があるところからウェルトランさんの声が聞こえた。
隠匿魔法で隠れていたようである。
「いやあ、まさか私の魔法が見破られるとはね。驚いたよ」
サフィさんのお兄さんであるウェルトランさんが、隠匿魔法を解除して現れた。
珍しく動揺している様子である。
「こっそりわが妹の様子を見てから颯爽と登場しようと思ったのに、まさかこんなに早く――ゴッ」
「帰れ!」
サフィさんが空間転移の魔法を使いながらウェルトランさんを殴り抜いた。ウェルトランさんは殴られた勢いのまま空間転移の穴に吸い込まれて消える。いったいどこに通じている穴だったのか、考えたら恐ろしくなったのでやめた。
「……なんだか、ヴェルドリンへ行って得たものもあるみたいだね?」
気を取り直したサフィさんは直接聞こうとはしない。
「あー、まあ、詳しくは説明できないんですが」
俺は頭をかきながらあいまいに答える。
「ま、いいよ。どうせクリムレット卿のことだから、いろいろ裏があったんだろうしね」
どう説明しようか悩んでいたらサフィさんが微笑しながら言った。
「すいません」
その時、工房のドアがノックされた。
「おー、そろそろ帰ってくるかと思ったがタイミングよかったぜ! 土産あるか?」
アララドさんだ。
「アララドさんにはおつまみ買ってきましたよ」
「ありがてえぜ」
流れでアララドさんにもアールカを紹介する。
「なんだ弟子とったのか。だったら今度オレが辺境伯領案内してやるぜ」
アララドさんは俺の背後に隠れているアールカに笑いかけた。
「俺の時みたいな冗談はやめてくださいよ」
俺が初めて辺境伯領に来た時にやられたサプライズを思い出して、俺は釘を刺しておく。
「そういやこの間軍の遠征で岩塩をしこたまとってきてよ」
アララドさんは言った。
「そんなことまでしてるんですか辺境伯軍って」
「まあな。塩とか交易商人から買うと高いからよ。領民に配るために定期的に岩塩のある山まで行って大量に取ってくるんだよ」
アララドさんが説明する。
「だから今、塩がたんまりあるからよ……オレは明日、異邦付近で川魚取ってきて塩釜焼きしてくるぜ。一緒に来るか?」
「いいですね塩釜焼き! ぜひ!」
俺はうなずいた。
「余はアトラスと一緒にタキオナの影響がなくなった異邦の調査をしてくる。深淵方面に同族がいるかもしれんからな」
スキアさんは工房の中に置いてあるゴーレムをぺしぺし叩きながら言った。
「なんだ、だったら途中まで一緒に行くか」
アララドさんが言うと、
「ま、余がいることで心強くなるんなら一緒に行ってやるのもやぶさかではないがな!」
スキアさんはドヤ顔で笑った。
「わたしは明日、午後からオズさんとお茶会がありますので、お留守番です!」
メリアが言ったところで、
「ごきげんよう、ですわ」
ちょうどあいさつに来たらしく、オズが工房にやってきた。
「ではわたくしたちもご一緒させていただくのはどうでしょうか?」
話を聞いたオズは提案して、メリアはうなずいた。
このお嬢様たちは、少しやんちゃが過ぎるきらいがある。危険地帯の付近に足を運ぶのは心配ではあるが、異邦を渡れるくらいには強いので何も言えない。この突拍子もない剣呑な提案にクリムレット卿はいつも二つ返事でうなずいてくるので本当に何も言えない。
「じゃ、せっかくだしみんなで一緒に行こうか」
サフィさんが言った。
「サフィさん、でも仕事は大丈夫ですか? 俺はまだ休暇の期間内ですけど、サフィさんは普段の仕事があるんじゃ?」
「…………」
「サフィさん?」
「次の日二倍がんばればいいし?」
「おい」
かくして、塩釜焼きのためだけに危険地帯『異邦』のすぐ近くの川辺まで足を運ぶことになった。
しかし山沿いの地域である。何の準備もなく安心していけるような場所ではない。これから必要なものを準備しないといけない。
「じゃあ、今から言う段取りで一緒にやっていこう、アールカ」
俺はアールカに、辺境伯領フーリァンに来てから初めての仕事を指示することにした。
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