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第5話
しおりを挟む商店街まで走り、入り口のアーチが見えてくると、既に制服姿の明日香が立っていた。
「はぁっ……はぁ………ふぅ」
若いとはいえ、運動不足だな……。
コントローラー握ってても体力はつかない。 ゲーマー諸君、偶には走ろう!
「そんなに急いで、私はどこにもいかないわよ?」
「か、会長は?」
「そんなに急いで、私はどこにもいかないわよ?」
「さっさと終わらそーぜ、時間がない」
「そんなに急いで、私は――」
「どこにもいかないよなっ!!」
「………はい」
満足そうにしやがって……。 ちょっと可愛いじゃねーか。
「で、どうなってんだ?」
「今日の下着?」
お前は昨日から……。
「ちげーよ、撮影は……」
「今日は何も着けてないの」
「――はぁ?!」
の、ノーパン撮影会ですか……?
「冗談よ、半分ね」
「その冗談に半分はねぇ!」
上がないの? 下はやばいって!
明日香と “NoランジェリーNoジョーク” な会話をしていると、おデブな会長がのそのそとやって来た。
「やぁ二人共、来てくれてありがとう」
「時間がない、早く始めてくれ」
俺が数々の映画やドラマで聞いたような台詞を言うと、会長は困った顔をして、
「それがね、ちょっとカメラマンが遅れちゃってて、少し待ってくれないかな?」
「あ゛あ゛!?」
「ひ、ひぃぃっ! そ、そんなに怒る? キレやすい若者的なやつですかぁ?!」
そんなゆっくりしてらんねーんだよ……!
段取りわりーなぁ!
「まあまあ篤人くん。 せっかく私達の “ラブラブPRポスター” なんだから」
「趣旨わかってる明日香?! そんなPRキンキンとケロンパでもしねーよ!」
「古っ! てか君達そういう関係なの? ……釣り合わねー……」
おっさん偶に言葉若ーよな。
「なんでもいいから、早くしてくれよ」
「ああ、もちろん急がせるよ。 その間さ、そこの店で待っててくれないか?」
店? ここは………。
「ここ、昼間はやってないから」
だろうな、完全にスナックだ。
『スナック南疾風』……潰してしまえこんな店。
ママは新体操でもやってんのか? 風の吹き方がヤンキー漫画か走り屋じゃねーか。
「さ、入って入って。 なんか適当に飲んでていいから、お酒はダメだよ?」
「なんで会長が鍵持ってんだ?」
「えっ………」
「なんでもない、具合が悪くなってきた」
中に入り、お盛んな会長が電気をつける。
店内を見渡すと、棚には焼酎やウイスキーのボトルが並んでいた。
「なんだこのボトルネック、 “たっちゃん” 、“かっちゃん” ……。 会長、この商店街救う価値あるか?」
「いじめないでおくれよ、青春の名残りってやつさ」
青春ねぇ、いつか俺にもそんな時が来るのか?
「ちなみに、会長のボトルは?」
「ああ、その “新田明男” って……」
「お前は孝太郎だろーがぁぁぁっ!」
コイツ、自分を美化するにも程があるわ!
「い、いいだろ別にぃぃ!」
「許容範囲を超えてんだよっ!」
「篤人くん、そのぐらいにしてあげて」
明日香、そうは言ってもなぁ……。
「あっちゃん」
「は? あっちゃん?」
「明日香を甲子園、連れてって」
「俺帰宅部だから!」
「きみきみ、 “たっちゃん” も元々は帰宅部……」
「はよカメラマン連れてこんかいッ!!」
全く困ったやつらだぜ。
そうだ、由那にスタンプを送らなければ………。
◆
「――あっ……も、もうやだぁ、あっつん……聞いてる?」
一人きり、部屋で時々震えるスマホと知らないサントラの音を聴かされる由那。
「さっきから黙ってるけど……ま、まさかこれ――― “放置プレイ” ?」
確かに放置はされているが、篤人は “プレイ” のつもりは無い……と思う。
「わかった……謝るからもう許して。やり過ぎました、ごめんね」
遂に折れた由那、だがその部屋には謝罪を聞いてくれる相手はいない。
「でもね、わかってほしいのは……もう、あっつんと離れたくないんだよ? 一度離れて、すごく……辛かったから………」
別れていた期間、およそ半年。
その間由那は辛い日々を過ごし、無い知恵を絞ってやっと篤人と、 “別れても好きな彼” とよりを戻せたのだ。 CMでした。
「だから毎週、遠くても会いに来るんだよ? あっつんに……会いたいから」
篤人の性格も考え、毎週末に二時間もかけて由那から会いに行く。 篤人の野郎、滅びてしまえ。
「それに倉西さん、美人だし………少し前の彼女なんだよ? 心配するに決まってるじゃん………ぼけ」
そこは可愛く『ばか』、と言って欲しかった。
「………なんか言ってよ」
うん、言えないの、いないから。
「………よぉし、わかった! あのゲームまた私が買うから!それならいいでしょ? ねっ? ………あっつん?…………まさか」
篤人がいれば飛びつく筈の台詞、それでも無反応な事に違和感を覚えた由那は―――。
「あいつ………どっか行ったなぁぁっ! 藤井篤人ぉぉぉ!!」
その怒声と共に、力任せに手枷、足枷を同時に引きちぎる由那。
アイマスクを外したその瞳には、燃え盛る炎が宿っていた。
「こんな物で私を繋げるとでも思ってたの?」
―――なんなら出来ます?
(制服が無い……休日になんで……?)
「………倉西明日香かぁぁぁッ!!」
解き放たれた……というか、自力で封印を解いた “自己救出型ヒロイン” 。
スマホを手にし、すぐさま電話を掛ける。 当然その相手は……。
◆
「―――ッ!? こ、この着信は……」
「どうしたの? 篤人くん」
(……バカな。 ど、どうやって……?)
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