妹が約束を破ったので、もう借金の肩代わりはやめます

なかの豹吏

文字の大きさ
1 / 17

1,

しおりを挟む
 

「こっ、これは……!」

「へっへーん、すごいでしょ? お父様っ」

 自慢げに仰け反ってみせるのは、わたしの双子の妹ステラリア。

「まさか、お前……」

「そうっ! わたし『加護』を手に入れたのっ!」

 目の前の黄金を見て、お父様は怖いくらい目を大きくしていた。 それはそうだろう、だってそれは、元々ただの『石』だったんだから。

「す……――――すごいぞステラリアッ!!」

「えへへ、姉さんもできるよっ!」

「――なんだと!? や、やって見せてくれダリアッ!!」

「う、うん」

 お父様の迫力に気圧されながら、わたしは石を一つ机に置き、それに両手をかざした。

「おお……おおおおッ! 素晴らしいッ! これでノームホルン家は安泰だッ! あーっはっはっは!」

 わたしが作り出した金を手に取って、お父様は高らかに笑う。

 世界に10人と居ない加護を持つ人間、その能力は一つとして同じ物が無いらしい。 そして、わたし達姉妹が授かったのは『錬金の加護』、この時12歳だった。 

「これで巻き返せる……。 見ていろよダラビット家、いや―――アインツマンよッ!」

 わたしが作り出した金は、ステラリアの物より光り輝いていた。 

 でも、わたしが錬金の加護を使ったのは、神様が授けてくれた今日、この日だけだった―――。


 その夜、並んだ二つのベッドに入ったわたし達は、運命の日に興奮して中々寝付けなかった。

「ねえ、姉さんリオネルのこと好きでしょ?」

「えっ」

 リオネルは、昔からわたし達がこっそり会って遊んでいる幼なじみだ。 なぜこっそりなのかは、お父様が言っていたダラビット家の子供だから。

「わたしも好きだけど……いいよ、姉さんに譲ってあげる」

「ほっ、ホントに? いいの?」

「ほらっ、好きなんだ!」

「う……」

 よくわからないけど、お父様はリオネルのお父さんが嫌いみたい。 同じ公爵家だから、競走でもしてるのかな?

「いいよ。 だってわたし達は加護を持ったんだから、わたしはもっと上の王子様と結婚するっ!」

「そ、そっか」

 嬉しかった。 わたしは王子様なんか興味が無い。 ずっと好きだった、リオネルと結ばれたいから……。


 それから4年後、妹はあっさりとその約束を破った――――

しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

【完結】返してください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。 私が愛されていない事は感じていた。 だけど、信じたくなかった。 いつかは私を見てくれると思っていた。 妹は私から全てを奪って行った。 なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、 母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。 もういい。 もう諦めた。 貴方達は私の家族じゃない。 私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。 だから、、、、 私に全てを、、、 返してください。

病弱な妹と私のお見合い顛末

黒木メイ
恋愛
病弱な妹は昔から私のモノを欲しがった。それが物でも、人でも、形ないものでも。だから、この結末は予想できていたのだ。私のお見合い相手の腕に抱かれた妹。彼は私ではなく、妹を選んだのだという。 妹は「お姉様。こんな結果になってしまって……本当にごめんなさい」と言った。優越感を滲ませながら。 この場にいる皆は二人の婚姻を喜んでいる。ただ一人を除いて。 ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※小説家になろう様からの転載。他サイトにも掲載中。 ※小説家になろう様にて、4/23日間総合ランキング1位感謝! ※他視点は随時投稿していきます。

どうやらこのパーティーは、婚約を破棄された私を嘲笑うために開かれたようです。でも私は破棄されて幸せなので、気にせず楽しませてもらいますね

柚木ゆず
恋愛
 ※今後は不定期という形ではありますが、番外編を投稿させていただきます。  あらゆる手を使われて参加を余儀なくされた、侯爵令嬢ヴァイオレット様主催のパーティー。この会には、先日婚約を破棄された私を嗤う目的があるみたいです。  けれど実は元婚約者様への好意はまったくなく、私は婚約破棄を心から喜んでいました。  そのため何を言われてもダメージはなくて、しかもこのパーティーは侯爵邸で行われる豪華なもの。高級ビュッフェなど男爵令嬢の私が普段体験できないことが沢山あるので、今夜はパーティーを楽しみたいと思います。

幼馴染が熱を出した? どうせいつもの仮病でしょう?【完結】

小平ニコ
恋愛
「パメラが熱を出したから、今日は約束の場所に行けなくなった。今度埋め合わせするから許してくれ」 ジョセフはそう言って、婚約者である私とのデートをキャンセルした。……いったいこれで、何度目のドタキャンだろう。彼はいつも、体の弱い幼馴染――パメラを優先し、私をないがしろにする。『埋め合わせするから』というのも、口だけだ。 きっと私のことを、適当に謝っておけば何でも許してくれる、甘い女だと思っているのだろう。 いい加減うんざりした私は、ジョセフとの婚約関係を終わらせることにした。パメラは嬉しそうに笑っていたが、ジョセフは大いにショックを受けている。……それはそうでしょうね。私のお父様からの援助がなければ、ジョセフの家は、貴族らしい、ぜいたくな暮らしを続けることはできないのだから。

妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。

夢草 蝶
恋愛
 シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。  どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。  すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──  本編とおまけの二話構成の予定です。

完璧な妹に全てを奪われた私に微笑んでくれたのは

今川幸乃
恋愛
ファーレン王国の大貴族、エルガルド公爵家には二人の姉妹がいた。 長女セシルは真面目だったが、何をやっても人並ぐらいの出来にしかならなかった。 次女リリーは逆に学問も手習いも容姿も図抜けていた。 リリー、両親、学問の先生などセシルに関わる人たちは皆彼女を「出来損ない」と蔑み、いじめを行う。 そんな時、王太子のクリストフと公爵家の縁談が持ち上がる。 父はリリーを推薦するが、クリストフは「二人に会って判断したい」と言った。 「どうせ会ってもリリーが選ばれる」と思ったセシルだったが、思わぬ方法でクリストフはリリーの本性を見抜くのだった。

婚約は破棄なんですよね?

もるだ
恋愛
義理の妹ティナはナターシャの婚約者にいじめられていたと嘘をつき、信じた婚約者に婚約破棄を言い渡される。昔からナターシャをいじめて物を奪っていたのはティナなのに、得意の演技でナターシャを悪者に仕立て上げてきた。我慢の限界を迎えたナターシャは、ティナにされたように濡れ衣を着せかえす!

身勝手な婚約者のために頑張ることはやめました!

風見ゆうみ
恋愛
ロイロン王国の第二王女だった私、セリスティーナが政略結婚することになったのはワガママな第二王子。 彼には前々から愛する人、フェイアンナ様がいて、仕事もせずに彼女と遊んでばかり。 あまりの酷さに怒りをぶつけた次の日のパーティーで、私は彼とフェイアンナ様に殺された……はずなのに、パーティー当日の朝に戻っていました。 政略結婚ではあるけれど、立場は私の国のほうが立場は強いので、お父様とお母様はいつでも戻って来て良いと言ってくれていました。 どうして、あんな人のために私が死ななくちゃならないの? そう思った私は、王子を野放しにしている両陛下にパーティー会場で失礼な発言をしても良いという承諾を得てから聞いてみた。 「婚約破棄させていただこうと思います」 私の発言に、騒がしかったパーティー会場は一瞬にして静まり返った。

処理中です...