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15, 博物館
しおりを挟む天気の良い週末。夏目さんとの約束の土曜日がやって来た。
二日間のテスト返却は何とか乗り切り、週明けには終業式を残すのみ。気分も晴れやかに今日を迎えられた。
待ち合わせは十時、少し早く夏目さんに言われた場所についた俺は、携帯を弄って時間を潰していた。
「徳永君」
「あ、おはよう夏目さん」
携帯を見ていて気付かず、夏目さんに声を掛けられて気付いた。
夏目さんは白のフリル袖の肩を出したブラウスで、下は淡い水色の膝までのスカートを着ていた。
明るく綺麗な髪を、今日は一つに結わいて右肩から下ろしていて、とても可愛らしく見える。
「おはよう。早かったんだね」
「ああ、うん。あんまり来たことがない場所だったし」
それとない会話だったが、夏目さんは楽しそうに微笑んでいる。
そうだ、ラインで夏目さんは可愛くしていくねって言っていたし、頑張ってオシャレして来ているんだろう。実際可愛いと思うし。
ここはちゃんと言ってあげるのが礼儀だよな。
「風邪の時はよく見れなかったけど、私服もとても可愛いね」
「あ、ありがとう。……何だか言わせちゃったみたいで悪いけど……」
「そ、そんな事ないよ」
少し照れながら、夏目さんは俺が気を遣って言った風に言うので、俺は慌てて否定した。
確かに言わなくてはと思って言ったところもあるが、可愛いと思ったのは本心からだし、難しいな。
「それじゃ、行きましょ」
そう言って夏目さんが歩き出したので、俺も一緒にその後に続く。一体どこへ行くのか、俺は知らないからな。
まずやって来たのは、意外にも博物館だった。正直、プライベートでこういう所に来た事は無かったと思う。学校行事なんかではあったと思うが。
「意外なところだった?」
「え? ああ、そうだね」
「徳永君が来た事なさそうなところに行こうと思って。私も初めてだよ?」
「なるほど」
中に入ると、巨大な恐竜の化石が何種類も展示されていた。
映画で見る様なそれは、中々の迫力がある。
「こんな大きな恐竜いたら、私じゃ一口で食べられちゃうな」
「うん。安心して、俺でも一口半だ」
「ふふ、お互い現代に生まれて良かったね」
「全くだ」
夏目さんと博物館ならではの、普段はしないだろう会話をしながら見て回った。
その他に、巨大アンモナイトの化石やら、ダイオウイカの標本等。初めて見るそれらに二人で驚いていると、
「徳永君、ハチ公の剥製だよ!?」
そう言って夏目さんが俺の腕を掴んで呼びとめた。
「えっ? ハチ公は渋谷じゃないの?」
「ほら、ハチ公は上野にいたんだね」
「ほ、本当だね」
そこには確かに白い犬の剥製があった。が、俺としては夏目さんに掴まれたままの腕の方が気になってしまっていたのだが……。
「もし今度ハチ公前で待ち合わせにしたら、ちゃんと渋谷に来てね」
そんな冗談を言って、夏目さんは可愛らしく微笑んでいる。
「その時は、分かるように言ってほしいな」
「うん。会えなかったら大変だもん。 あ、ゴメン……」
「あ、いや」
喋っている途中で夏目さんは俺の腕を掴んでいたのに気付いて手を離した。お互い少し恥ずかしくなってしまったが、その後もいくつかの展示物を見て博物館を後にした。
「たまにはこういうのも良いかもね」
「本当? 良かった。私も一緒に見れて楽しかった」
うん。こういう体験も悪くはない。俺達の年齢だとあまり無いデートコースかも知れないけれど。
「それじゃ、サンドイッチ作ってきたから公園で食べよ」
「え、そうなんだ。ありがとう」
それから公園に行ってベンチに座り、夏目さんの作ってくれたサンドイッチを食べた。
「うん。美味しい」
「良かった。この前はお粥だったもんね」
「あれも美味しかったけどね」
そうだ、お粥で思い出した。一応夏目さんに看病してもらったお礼の品を渡さなければ。
「夏目さん。これ、大した物じゃないけど、お世話になったお礼」
「え? いいのに、ありがとう。開けてもいい?」
「ああ、でもその、本当になにをあげたらいいか分からなくて、喜んでもらえるか……」
何だか恥ずかしいな、本当に買った物で大丈夫かと言う不安もあるし。
「あ、可愛いハンドタオル。ありがとう」
夏目さんは本当に嬉しそうに見えて、俺はほっとした。お礼として正しかったのかは分からないが、喜んでもらえて良かった。
「凄く嬉しい。一生大事にする」
「そ、そんな大層なものじゃないから」
渡したハンドタオルを大事そうに持って俯きながら、夏目さんがそんな大袈裟に言うので、俺は少し狼狽えてしまった。
「徳永君、良かったらもっと食べてね。夏場だし、余っても困るから」
「ああ、頂きます」
休みの日に公園で食べるサンドイッチは、とても美味しかった。午後からはどうするのか分からないが、こうしてゆっくり公園で過ごすのもいいもんだ。
暑いけど、木陰でいくらか涼しいし、夏目さんも楽しそうだ。
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