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第3章 スノービーク〜
いつもの宿屋へ行こう!
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ゴーダさんの店を出て、いつもの宿屋へと向かう。
女将さんにも久しぶりに合うから、驚かれるかな?
それともゴーダさんみたいに、他のメンバーがいないことに不安を感じるだろうか?
そう思いつつ、宿屋のドアを開けた。
「いらっしゃい!……って、おや!久しぶりじゃないのさ!元気そうだね!他のメンバーとは別行動なのかい?」
「はい、皆はまだスノービークにいて、俺だけ用事のために魔法でこの街に来ました!」
俺がにこにこ顔でそう女将さんに言うと、同じくニコっと笑った。
「なるほど、あの子たちはここに来てないのかい。じゃあもしかして……うちのメニューを補充しに来たって事だね?」
「はい。話が早くて助かります!」
「ハッハッハッハ!やっぱりねぇ!そんなこったろうと思ったよぉ!待ってな、腕によりをかけて作ってもらうからね!」
女将さんはそう言うと厨房へと歩いていった。
俺も厨房についていき、中で旦那さんと話している女将さんに声を掛ける。
「女将さ~ん、もしだったらこのお肉使えますか~?」
女将さんは俺の方に振り向き、手招きをした。
「もしかして帰省の時になにか美味しい魔物を狩ったのかい?」
「はい、実はルーシェさんの故郷で修行中に狩ったものがあるんです。ワイルドボアとグリードベアなんですが、何か料理作れますか?」
俺は鞄から2種類の肉を取り出しながらそう言う。
すると女将さんの目がキランッ!と光った気がした。
「なんだって?ワイルドボアとグリードベアって言ったかい?」
「はい、そう言いましたが……とりあえずそれぞれ1頭分出しておきますね!」
「おや、そんなに出してくれるのかい?」
「はい、お願いします。」
「じゃあグリードベアは煮込み料理で、ワイルドボアは焼いたり炒めたりする料理を作ろうかねぇ。」
お肉を持った女将さんは、鼻歌を歌いながら旦那さんにお肉を手渡す。
「こりゃあとても鮮度のいい肉じゃねぇか!煮込みかぁ……ちょっとだけ切り取って、塩を付けて焼いてどうするか考えてみるか。お前たちも食べてみるか?」
おぉ~、2種類のお肉を味見させてもらえるんだね!
とれたての時に焼肉をして食べたけど、あれは美味かったなぁ!
焼肉のタレが絡んで、臭みも感じなくて……って、考えていたら涎が出てきたよ。えへへっ!
そうこうしている間に旦那さんがぱぱっと焼いてくれて、女将さんが俺に小皿を渡してくれた。
中には一口大のお肉が2個乗っている。
「これは味見用の、塩のみの味付けで焼いたもんだよ!こうすると味がよくわかって良いんだ。」
自分の小皿からお肉を口に運びながら、そう言った女将さん。
「……美味しいねぇっ!どちらも脂が乗っていて、ただの塩で焼いただけでも美味いじゃないか!……どうする、あんた?」
「そうさなぁ……もちろん煮込みも作るが、グリードベアもこれだけ臭みがないなら軽く焼いたりするのもアリだな。」
味見を終えた旦那さんが唸りながらそう言う。
そうだよねぇ~、臭みがほとんどないから焼いただけでも美味しかったよ!
「じゃあ煮込み以外も作れば良いじゃないのさ。別に作る数なんて決まっちゃいないんだし。」
女将さんが呆れ顔でそう言うと、旦那さんはポン!と手を打った。
「なるほど、そりゃそうか!あの子たちはうちの料理が食いたいだけなんだし、数は多くても構わないよな!よし、じゃあ腕によりをかけてたくさん料理を作るか!」
旦那さんはなんだかとても張り切って準備をしだす。
女将さんはそれを見て、笑顔で俺に聞いてきた。
「物は相談なんだけどね、あのお肉、あんなにあるんだから少し分けてもらえないかねぇ?その代わり代金は要らないからさ!」
「えっ、でもあのお肉を使わないメニューもお願いしたいんで、料金は支払いますよ!」
「いや、あのお肉の値段、あんた知らないんだろ?結構な金額になるんだよ。魔物自体が強いっていうのもあるけど、生息地域が特殊でね。この街ではまず手に入らないお肉なんだよ。だから、量を多めに作ってもらったものをうちの宿で限定メニューとして出すのはどうか?と思ってね。お客から料金取るし、気にしないでおくれよ!」
女将さんはまるで手揉みでもしそうな雰囲気で俺にグイグイと『お願い』してくる。
「そ、それなら良いですけど……そちらが損しないようにしてくださいね?」
「ああ、そこら辺は気にしなくて良いから、また夕方にでも来ておくれよ!その時までには用意しておくからさ。」
「分かりました、じゃあまた夕方にきます!」
俺は女将さんと約束をして、宿を出る。
さて夕方まで何をしようかな?と考えてみた。
せっかくローランに来たのだからついでにパン屋さんや米屋さんに行こうと思い立ち、いろんなパンやおにぎり、お米を買い足した。
いや~、ここぞとばかりに買い込んだよ!
だって、エルフの里やスノービークでもお米買えるかな?と思ったら売ってないんだもん!
てっきり全国で売ってるのかと思ったら、お米屋さん曰く「隣国の獣人の国ネシアでは常に暖かいのでそれに適応した細長い米が作られているけど、この国で作られている何種類ものお米は温かい地方でしか育たない」らしく、王都より下の方で収穫されているそうだ。
それから考えると、さすがに寒い地方のスノービークではお米が育たないから流通もしないんだね。
そうやって1人ショッピングを楽しんでいるうちに夕方になったので、とりあえず宿に戻ってみた。
「待っていたよ!料理はたくさん用意しておいたからね!」
宿に行くと女将さんが待っていて、そう言って厨房に俺を案内した。
「前回と同じでこの中身だけ持っていってくれるんだよね?」
「はい、たくさんの鍋がありますので。」
俺は鞄から空いた鍋を取り出していく。
料理はその場で火をかけて温め直してくれたので、熱々になった物から鍋や大皿に盛り付けては鞄に入れていった。
全部の料理を鞄に入れると、女将さんは「毎度あり!またいろんなお肉の土産、楽しみにしてるよ。」と、にこにこ顔で俺を送り出してくれた。
それから俺は転移のためにまた冒険者ギルドのルーシェさんの部屋へ戻り、ついでにこの街の領主の反応はどうだったのか聞いてみたところ、領主からは「あまり大人数じゃないなら受け入れても良い」との返事をもらったそうだ。
良かった、良かった!
これで、彼の国へ向かえるね。
とりあえず俺はその良い返事といっぱいのお土産を、スノービークの領主の館の自分の部屋に持ち帰った。
ローランのルーシェさんのギルマス部屋から、リッキーの家にある俺に割り当てられている部屋に直接転移して帰ってきた。
部屋にはユーリとセバスしかおらず、2人はのんびりとお茶を楽しんでいた。
「お帰り、ママ!遅かったね、何かあったの?」
ユーリは俺が転移してきたのをすぐに察知したらしく、ソファーから俺に向って走って抱きついてきた。
「ごめん、ごめん!頼まれていたいつもの宿の料理が夕方引き取りだったんだよ。だからそれまでの間におにぎりやお米、パン、屋台飯なんかを買い込んできたんだよ。また旅に出たときにでも皆で食べような!」
「ホント!?楽しみだなぁ!早く旅に出ようよ!」
興奮したユーリがそんな事を言って、俺の服を掴んで激しく揺さぶってきた。
「まだ旅には出ないけど、神聖法国に行くのは決定かもしれないぞ?ローランは受け入れOKだっからな。ところでリッキーは?一度戻ってきたか?」
「んとね、お昼の時に知らせに来たんだけど、ママがまだ戻って来ていないから報告はまた後にするって言ってた!夕飯の時に聞けるんじゃないかな?」
なるほど、確かにその時聞けるな。
最初の話でもOKだった感じだし、受け入れてくれる可能性は高そうだよね。
そういえばユーリの方はどうなった?
「ユーリの方はラーシェさんの返事どうなんだ?」
「もちろん受け入れ可能だって言ってたよ!人数もグリーに聞いてみるとそんなにエルフはいなかったみたいだしね。」
そうなんだ、エルフは少ないんだね。
「じゃあ獣人は?」
俺がユーリに聞くと、セバスがユーリに代わって口を開いた。
「そちらは私の方から報告を。獣人はエルフの倍くらいいまして、大半はリッキー殿のような人族とドワーフでした。ドワーフはこの街にもいますし、分散して避難することは可能では?」
そう、この街には普通にドワーフがいるんだよね。
ゴーダさんもこの街出身だし、実は意外とドワーフは街のあちこちを歩いているよ。
だからドワーフは2つに分散して一時避難できるから、1つの街でいっぱい受け入れなきゃならないって事にはならないと思うんだ。
そうこうしているうちに夕飯の時間になったようで、リッキーが呼びに来た。
「シエル、帰ってきていたんだな!お帰り。ところで……どうだった、ローランの方は?」
「そんな2カ月ほどで変わることはないんじゃないか?まぁ、実際に全然変わってなかったがな。あ、もちろん避難民受け入れの話もしてきたし、ゴーダさんのところに行ってきたし、いつもの宿屋にも行ってきたぞ。」
「おぉ~、ちゃんと行ってきたか!偉い、偉い!」
そう言ってリッキーは俺の頭を撫でた。
俺は大人だっての!頭を撫でられるのは卒業だよ!
「そういえばゴーダさんが、みんなが一緒じゃなかった事を残念がっていたぞ?それに俺以外の武器はみんな作り替えになったよ。」
俺たちは歩きながら会話をしていたが、俺の返事で立ち止まってしまった。
そしてこちらを見たリッキーの顔は驚きの表情だった。
「えっ、作り変えになったのか!?俺、自分の刀、すっかり手入れするの忘れていたんだが、まさかそこまで傷んでいたとは思ってもみなかったぞ。」
「リッキーのだけじゃなく、みんなの武器が歪んだりして修復不可能らしい。だから新しく作り替えるから、年明けにでも来てくれって言っていたよ。」
「そうか……じゃあ今度、武器を受け取りに行く時は顔見せも兼ねてみんなで行くか?」
「それが良いよ。みんなの姿がないことに相当心配していたからな。あ、女将さんも気にしていたから、もしだったら一泊しても良いかもね。」
「なるほど、それも良いかもな。皆も久々にローランの街に行きたいと思うぜ?」
「じゃあ、明日にでも皆に伝えようね。」
そう話がまとまると、またリッキーは歩き出した。
「ああ、そういえば例の件、まだ話していなかったな?父さんは種族で分散して受け入れるのにOKだったぞ。」
「それは良かった!その方が1か所の負担が少なくて済むからね。」
そんな事を話しているうちに食堂に着く。
今回は俺達のほうが先だったから、4人を待たせなくて済みそうだ。
暫くして4人が来て席に座ると、夕食のスタートだ。
他愛もない話をしながら夕食を食べて、デザートの頃に急にウォールさんが俺に話しかけてきた。
「リッキーから聞いたよ?彼の国の強制的に連れ去って奴隷にした者たちを救出するんだって?」
「はい、混乱している今が丁度いいと思ったので。その避難民の一部の受け入れを引き受けていただき、ありがとうございます。」
「いや、私もその話を聞いた時は良い考えだと思ったまでのことだよ。以前から気にはなっていたんだ、うちの国から人を攫っていき奴隷にする、その行為が。だから賛同したんだよ。ところで、それはいつ決行するんだい?」
ウォールさんは紅茶を飲みながら俺に問う。
「それに関しては他の街の意見を聞いてからと思っていたんですが、夕方には聞いていた街すべてで賛同が得られたので、明日にでも……と思っています。」
「そうだね、早いうちが良い。もう少しするとこの街にも雪が降る。その前に来て体を慣らしておかないと、体がついていけずに病気になってしまうからね。」
なるほど、確かに!
日本でも寒くなるとインフルエンザとか流行るからね!
それから食事が終わり、俺達は部屋に一旦戻り、3人揃って風呂へ行く。
相変わらずセバスは魔法で体を綺麗にして済ましているようだ。
そんなに水やお湯に濡れるの嫌なもんなのかな?強制はしないけど。
風呂から帰ってホカホカなうちにユーリと一緒にベッドへ入る。
すると2人共、思っていたより疲れていたようで、すぐに眠りに落ちた。
女将さんにも久しぶりに合うから、驚かれるかな?
それともゴーダさんみたいに、他のメンバーがいないことに不安を感じるだろうか?
そう思いつつ、宿屋のドアを開けた。
「いらっしゃい!……って、おや!久しぶりじゃないのさ!元気そうだね!他のメンバーとは別行動なのかい?」
「はい、皆はまだスノービークにいて、俺だけ用事のために魔法でこの街に来ました!」
俺がにこにこ顔でそう女将さんに言うと、同じくニコっと笑った。
「なるほど、あの子たちはここに来てないのかい。じゃあもしかして……うちのメニューを補充しに来たって事だね?」
「はい。話が早くて助かります!」
「ハッハッハッハ!やっぱりねぇ!そんなこったろうと思ったよぉ!待ってな、腕によりをかけて作ってもらうからね!」
女将さんはそう言うと厨房へと歩いていった。
俺も厨房についていき、中で旦那さんと話している女将さんに声を掛ける。
「女将さ~ん、もしだったらこのお肉使えますか~?」
女将さんは俺の方に振り向き、手招きをした。
「もしかして帰省の時になにか美味しい魔物を狩ったのかい?」
「はい、実はルーシェさんの故郷で修行中に狩ったものがあるんです。ワイルドボアとグリードベアなんですが、何か料理作れますか?」
俺は鞄から2種類の肉を取り出しながらそう言う。
すると女将さんの目がキランッ!と光った気がした。
「なんだって?ワイルドボアとグリードベアって言ったかい?」
「はい、そう言いましたが……とりあえずそれぞれ1頭分出しておきますね!」
「おや、そんなに出してくれるのかい?」
「はい、お願いします。」
「じゃあグリードベアは煮込み料理で、ワイルドボアは焼いたり炒めたりする料理を作ろうかねぇ。」
お肉を持った女将さんは、鼻歌を歌いながら旦那さんにお肉を手渡す。
「こりゃあとても鮮度のいい肉じゃねぇか!煮込みかぁ……ちょっとだけ切り取って、塩を付けて焼いてどうするか考えてみるか。お前たちも食べてみるか?」
おぉ~、2種類のお肉を味見させてもらえるんだね!
とれたての時に焼肉をして食べたけど、あれは美味かったなぁ!
焼肉のタレが絡んで、臭みも感じなくて……って、考えていたら涎が出てきたよ。えへへっ!
そうこうしている間に旦那さんがぱぱっと焼いてくれて、女将さんが俺に小皿を渡してくれた。
中には一口大のお肉が2個乗っている。
「これは味見用の、塩のみの味付けで焼いたもんだよ!こうすると味がよくわかって良いんだ。」
自分の小皿からお肉を口に運びながら、そう言った女将さん。
「……美味しいねぇっ!どちらも脂が乗っていて、ただの塩で焼いただけでも美味いじゃないか!……どうする、あんた?」
「そうさなぁ……もちろん煮込みも作るが、グリードベアもこれだけ臭みがないなら軽く焼いたりするのもアリだな。」
味見を終えた旦那さんが唸りながらそう言う。
そうだよねぇ~、臭みがほとんどないから焼いただけでも美味しかったよ!
「じゃあ煮込み以外も作れば良いじゃないのさ。別に作る数なんて決まっちゃいないんだし。」
女将さんが呆れ顔でそう言うと、旦那さんはポン!と手を打った。
「なるほど、そりゃそうか!あの子たちはうちの料理が食いたいだけなんだし、数は多くても構わないよな!よし、じゃあ腕によりをかけてたくさん料理を作るか!」
旦那さんはなんだかとても張り切って準備をしだす。
女将さんはそれを見て、笑顔で俺に聞いてきた。
「物は相談なんだけどね、あのお肉、あんなにあるんだから少し分けてもらえないかねぇ?その代わり代金は要らないからさ!」
「えっ、でもあのお肉を使わないメニューもお願いしたいんで、料金は支払いますよ!」
「いや、あのお肉の値段、あんた知らないんだろ?結構な金額になるんだよ。魔物自体が強いっていうのもあるけど、生息地域が特殊でね。この街ではまず手に入らないお肉なんだよ。だから、量を多めに作ってもらったものをうちの宿で限定メニューとして出すのはどうか?と思ってね。お客から料金取るし、気にしないでおくれよ!」
女将さんはまるで手揉みでもしそうな雰囲気で俺にグイグイと『お願い』してくる。
「そ、それなら良いですけど……そちらが損しないようにしてくださいね?」
「ああ、そこら辺は気にしなくて良いから、また夕方にでも来ておくれよ!その時までには用意しておくからさ。」
「分かりました、じゃあまた夕方にきます!」
俺は女将さんと約束をして、宿を出る。
さて夕方まで何をしようかな?と考えてみた。
せっかくローランに来たのだからついでにパン屋さんや米屋さんに行こうと思い立ち、いろんなパンやおにぎり、お米を買い足した。
いや~、ここぞとばかりに買い込んだよ!
だって、エルフの里やスノービークでもお米買えるかな?と思ったら売ってないんだもん!
てっきり全国で売ってるのかと思ったら、お米屋さん曰く「隣国の獣人の国ネシアでは常に暖かいのでそれに適応した細長い米が作られているけど、この国で作られている何種類ものお米は温かい地方でしか育たない」らしく、王都より下の方で収穫されているそうだ。
それから考えると、さすがに寒い地方のスノービークではお米が育たないから流通もしないんだね。
そうやって1人ショッピングを楽しんでいるうちに夕方になったので、とりあえず宿に戻ってみた。
「待っていたよ!料理はたくさん用意しておいたからね!」
宿に行くと女将さんが待っていて、そう言って厨房に俺を案内した。
「前回と同じでこの中身だけ持っていってくれるんだよね?」
「はい、たくさんの鍋がありますので。」
俺は鞄から空いた鍋を取り出していく。
料理はその場で火をかけて温め直してくれたので、熱々になった物から鍋や大皿に盛り付けては鞄に入れていった。
全部の料理を鞄に入れると、女将さんは「毎度あり!またいろんなお肉の土産、楽しみにしてるよ。」と、にこにこ顔で俺を送り出してくれた。
それから俺は転移のためにまた冒険者ギルドのルーシェさんの部屋へ戻り、ついでにこの街の領主の反応はどうだったのか聞いてみたところ、領主からは「あまり大人数じゃないなら受け入れても良い」との返事をもらったそうだ。
良かった、良かった!
これで、彼の国へ向かえるね。
とりあえず俺はその良い返事といっぱいのお土産を、スノービークの領主の館の自分の部屋に持ち帰った。
ローランのルーシェさんのギルマス部屋から、リッキーの家にある俺に割り当てられている部屋に直接転移して帰ってきた。
部屋にはユーリとセバスしかおらず、2人はのんびりとお茶を楽しんでいた。
「お帰り、ママ!遅かったね、何かあったの?」
ユーリは俺が転移してきたのをすぐに察知したらしく、ソファーから俺に向って走って抱きついてきた。
「ごめん、ごめん!頼まれていたいつもの宿の料理が夕方引き取りだったんだよ。だからそれまでの間におにぎりやお米、パン、屋台飯なんかを買い込んできたんだよ。また旅に出たときにでも皆で食べような!」
「ホント!?楽しみだなぁ!早く旅に出ようよ!」
興奮したユーリがそんな事を言って、俺の服を掴んで激しく揺さぶってきた。
「まだ旅には出ないけど、神聖法国に行くのは決定かもしれないぞ?ローランは受け入れOKだっからな。ところでリッキーは?一度戻ってきたか?」
「んとね、お昼の時に知らせに来たんだけど、ママがまだ戻って来ていないから報告はまた後にするって言ってた!夕飯の時に聞けるんじゃないかな?」
なるほど、確かにその時聞けるな。
最初の話でもOKだった感じだし、受け入れてくれる可能性は高そうだよね。
そういえばユーリの方はどうなった?
「ユーリの方はラーシェさんの返事どうなんだ?」
「もちろん受け入れ可能だって言ってたよ!人数もグリーに聞いてみるとそんなにエルフはいなかったみたいだしね。」
そうなんだ、エルフは少ないんだね。
「じゃあ獣人は?」
俺がユーリに聞くと、セバスがユーリに代わって口を開いた。
「そちらは私の方から報告を。獣人はエルフの倍くらいいまして、大半はリッキー殿のような人族とドワーフでした。ドワーフはこの街にもいますし、分散して避難することは可能では?」
そう、この街には普通にドワーフがいるんだよね。
ゴーダさんもこの街出身だし、実は意外とドワーフは街のあちこちを歩いているよ。
だからドワーフは2つに分散して一時避難できるから、1つの街でいっぱい受け入れなきゃならないって事にはならないと思うんだ。
そうこうしているうちに夕飯の時間になったようで、リッキーが呼びに来た。
「シエル、帰ってきていたんだな!お帰り。ところで……どうだった、ローランの方は?」
「そんな2カ月ほどで変わることはないんじゃないか?まぁ、実際に全然変わってなかったがな。あ、もちろん避難民受け入れの話もしてきたし、ゴーダさんのところに行ってきたし、いつもの宿屋にも行ってきたぞ。」
「おぉ~、ちゃんと行ってきたか!偉い、偉い!」
そう言ってリッキーは俺の頭を撫でた。
俺は大人だっての!頭を撫でられるのは卒業だよ!
「そういえばゴーダさんが、みんなが一緒じゃなかった事を残念がっていたぞ?それに俺以外の武器はみんな作り替えになったよ。」
俺たちは歩きながら会話をしていたが、俺の返事で立ち止まってしまった。
そしてこちらを見たリッキーの顔は驚きの表情だった。
「えっ、作り変えになったのか!?俺、自分の刀、すっかり手入れするの忘れていたんだが、まさかそこまで傷んでいたとは思ってもみなかったぞ。」
「リッキーのだけじゃなく、みんなの武器が歪んだりして修復不可能らしい。だから新しく作り替えるから、年明けにでも来てくれって言っていたよ。」
「そうか……じゃあ今度、武器を受け取りに行く時は顔見せも兼ねてみんなで行くか?」
「それが良いよ。みんなの姿がないことに相当心配していたからな。あ、女将さんも気にしていたから、もしだったら一泊しても良いかもね。」
「なるほど、それも良いかもな。皆も久々にローランの街に行きたいと思うぜ?」
「じゃあ、明日にでも皆に伝えようね。」
そう話がまとまると、またリッキーは歩き出した。
「ああ、そういえば例の件、まだ話していなかったな?父さんは種族で分散して受け入れるのにOKだったぞ。」
「それは良かった!その方が1か所の負担が少なくて済むからね。」
そんな事を話しているうちに食堂に着く。
今回は俺達のほうが先だったから、4人を待たせなくて済みそうだ。
暫くして4人が来て席に座ると、夕食のスタートだ。
他愛もない話をしながら夕食を食べて、デザートの頃に急にウォールさんが俺に話しかけてきた。
「リッキーから聞いたよ?彼の国の強制的に連れ去って奴隷にした者たちを救出するんだって?」
「はい、混乱している今が丁度いいと思ったので。その避難民の一部の受け入れを引き受けていただき、ありがとうございます。」
「いや、私もその話を聞いた時は良い考えだと思ったまでのことだよ。以前から気にはなっていたんだ、うちの国から人を攫っていき奴隷にする、その行為が。だから賛同したんだよ。ところで、それはいつ決行するんだい?」
ウォールさんは紅茶を飲みながら俺に問う。
「それに関しては他の街の意見を聞いてからと思っていたんですが、夕方には聞いていた街すべてで賛同が得られたので、明日にでも……と思っています。」
「そうだね、早いうちが良い。もう少しするとこの街にも雪が降る。その前に来て体を慣らしておかないと、体がついていけずに病気になってしまうからね。」
なるほど、確かに!
日本でも寒くなるとインフルエンザとか流行るからね!
それから食事が終わり、俺達は部屋に一旦戻り、3人揃って風呂へ行く。
相変わらずセバスは魔法で体を綺麗にして済ましているようだ。
そんなに水やお湯に濡れるの嫌なもんなのかな?強制はしないけど。
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*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
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