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終章
『慶ばしい』予想
しおりを挟むその後もお茶会はなごやかに進み、問題なく終わった。
そして、多分私の疑念はほぼ確信に変わった、と言って良いと思う。
いつもはミルクティーを好んで飲むのに、先ほどのお茶会ではレモンティーを飲んでいた。ドレスは胸のすぐ下で切り替わるデザインのものを着ていた。立った時の目線が少し低く、おそらくヒールの低い靴を履いていたはず。
それらから導き出される答えは・・・。
「そう言えば、あのお茶はどこで飲んだのだったっけ?」
事実から目を逸らすように別の話題に意識を向ける。
確証はないのだから、と言い訳をして。
なぜ目を逸らすのか、なんてことも考えない。
「一度どこかで飲んだことがあったはずなのよね。どこだったかしら?」
独り言が部屋に響く、少し休みたいからと一人にしてもらっているから存分に口に出しながら考える。
うんうんと唸りながら頭を捻るけれど、なかなか答えが出てこない。
「あれだけ癖の強い味だから、忘れることはないと思うけど。もう少しで思い出せそうな気が・・・。」
そこまで、口に出したところで、思い、出した。
お茶を口にした時の感想が、あまりにも違いすぎて、すぐに思い出せなかった。
そうだ、あれは、昔友人の家で飲んだんだ。
里帰りしていた友人のお姉さんのために取り寄せたと言うそのお茶を、私たちは珍しがって呑みたいと我儘を言った。そうやって入れてもらったお茶をその時は友人と不味い不味いと言いながら、お菓子を口いっぱいに頬張りながら飲んだ。そんな私たちの横で、里帰りしていた友人のお姉さんは平然と美味しそうにそのお茶を口にしていた。
平然と美味しそうにお茶を飲むお姉さんのお腹は、大きく、膨らんでいた。
そのお茶は西の方で取れる、この辺りでは珍しい種類のお茶で、妊婦の体にとても良いとされているお茶だった。
気づけば、目から涙がこぼれ落ちていた。
目を逸らすために考え始めたはずなのに、その答えが確証を得る結果となってしまった。
すっぱいものを好むようになった、味覚の変化。
胸のすぐ下で切り替わるドレスを好んで着るようになった、服装への意識の変化。
飲むお茶の種類やお菓子の種類や量を変えた、口にするものへの意識の変化。
体調の変化、医者の訪問する回数、etc、etc・・・。
少しずつ、巧妙に段取られた変化から導き出される答えは、ライサさまの妊娠。
これだけであればなんとでも誤魔化しようがあるけれど、妊婦の体に良いと言うお茶を好んで飲んでいる、となればもう誤魔化しようのない事実として考えて良いだろう。
そのお茶が、この辺りでは珍しい、わざわざ取り寄せなければならないような品なら尚更に。
慶ばしいこと、本当に、涙が出るくらい慶ばしい。
王太子の御子が生まれるのだから、とてもとても喜ばしいはずなのに、なぜか、気持ちが下がっていく。
嬉し涙ってなかなか止まらないものなのね、次から次に涙が溢れて止まらない。
いつ、お生まれになるのかな?情報から逆算して、今が5ヶ月くらいで、あと半年ないくらい?
ご懐妊の発表は安定期に入ってからのつもり?だとしたらもうそろそろ発表される?
涙がこぼれ落ちるのもそのままに、そんな風にどこか見当違いなことを独りつらつらと考えながら、その場で動けないままに時間が過ぎて行った。
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