7 / 15
お絵かき②
しおりを挟む「よしのお姉ちゃん、絵かけた?」
ハッとして、手元を見ると真っ白な画用紙が手元にあった。
「・・・、あ~ごめん。ちょっとぼーっとしてたみたい。」
私は素直に謝って、真っ白なままの画用紙をサクラちゃんに見せた。
「・・・やっぱり、家族の絵はかきたくなかった?ごめんなさい、無理言って。」
しょぼんとしたサクラちゃんに、私は慌てる。
「ち、違うの、絵を描くのが久々すぎてどう描けばいいかな~って考えてたら、考え過ぎちゃっただけだから。
あ、私サクラちゃんの描いた絵を見たいな~。」
無理やりだったけど、サクラちゃんは蒸し返すことなく描いた絵を差し出してきた。
「これは、・・・真ん中がサクラちゃんで、右がお母さんで、左がお父さん?」
「うん、そうだよ。」
そこに描かれていたのは、サクラちゃんなりに精一杯頑張って描いたであろう3人家族の絵。
色鉛筆でしっかりと色付けされていて、全体的に青や紫系の多い配色。
お父さんとお母さんはどこと無く怒ったような顔をしていて、サクラちゃんは笑顔なのに悲しそうに見える。
何より違和感を感じたのは、他の背景などは特に描かれていないのに3人がそれぞれ離れて描かれているところ。左端、真ん中、右端に、画用紙に対して小さめに描かれているから、それぞれがポツンとした感じだった。
「・・・3人家族なんだね。」
「うん、そう。」
「・・・そうなんだ。あ!サクラちゃんは青とか紫が好きなの?」
「ううん、黄色とかオレンジとかが好きだよ。」
「そっかぁ。」
質問の仕方が悪いのか、うまく話題を広げられない・・・。
「あ、そう言えば昨日は大丈夫だった?」
「・・・昨日?」
サクラちゃんは不思議そうな顔をしている。
「うん、ごめんね、昨日はあのまま寝ちゃったみたいで、お家にちゃんと帰れた?」
「家には帰って無いよ。」
「えっ?お父さんとお母さん心配してるんじゃない?」
そう私が口にした途端、サクラちゃんの顔が曇った。
「多分、2人は気づいて無いよ。帰ってくるのも遅いし、家にいてもケンカばっかりだし。部屋にいるって思って、わたしから声をかけなければ気づかないよ。」
サクラちゃんが昨日と比べて大人しい訳が分かった気がした。
どこか暗くて大きな家に帰るのに慣れてきた頃。
好きこそ物の上手なれ、とはよく言ったものでお母さんは仕事でみるみるうちに頭角を現していった。
はじめて1人で顧客を担当するようになった日はみんなでお祝いをした。
そして、それと同時に帰りが遅くなる日が増えて行った。
歯車が狂い始めたのはいつからだったのかな?
いま思い返しても全然分からない。
でも、あれって思ってからは坂道を転げ落ちるようにあっという間だった。
家族団欒の時間が無くなって、ひとりで夕飯を食べる機会が増えた。
顔を合わせて会話する事も少なくなって、ちょっとさみしいなって思い始めた。
少しずつ、両親の喧嘩が増えた。
ひどい時には顔を合わせる度に怒鳴りあうくらい、いつも喧嘩していた。
その怒りが私に向くことはなかったけれど、怒りの残滓やイライラを全て隠しおおせる事ができるはずも無い。
怒鳴り声に怯えて、家の中に残る怒りやイライラの感情から逃げるように、私は部屋に閉じ籠るようになった。
お休みの日でも、居間に行くことはなく部屋でひとり勉強などに明け暮れた。
そんな家族の状況を知られたくなくて、でもどう振る舞えばいいのかも分からなくて、家族から逃げることしかできない自分に落胆していた。
学童に行ったり友達と遊ぶ事も減っていき、私は口数の少ない大人しい子になっていた。
20
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
鎌倉黒猫カフェ クロスオーバー
櫻井千姫
キャラ文芸
鎌倉の滑川近くにある古民家カフェ「クロスオーバー」。イケメンだけどちょっと不思議な雰囲気のマスター、船瀬守生と、守生と意思を交わすことのできる黒猫ハデス。ふたりが迎えるお客さんたちは、希死念慮を抱えた人ばかり。ブラック企業、失恋、友人関係、生活苦......消えたい、いなくなりたい。そんな思いを抱える彼らに振る舞われる「思い出のおやつ」が、人生のどん詰まりにぶち当たった彼らの未来をやさしく照らす。そして守生とハデス、「クロスオーバー」の秘密とは?※表紙のみAI使用
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
神戸三宮割烹料理 武田 女料理人物語
蔵屋
キャラ文芸
神戸北野にある活きた食材の調理をカウンター越しに楽しむことが出来る。特別な日に大切な方と一緒に日本料理の味を楽しむ。
割烹武田は神戸ならではの鮮魚と神戸牛を中心とした旬の高級食材を使用している。
都会の喧騒を離れ、ゆったり美味しい食事を愉しむことが出来る。
情緒溢れる佇まいで店内に入ると洗練された上質な和の空間が広がる。
カウンター席からは今までの神戸にはない全く新しいダイナミックで繊細な調理の様子も愉しんむことが出来るのだ。
この小説は、実際に神戸北野にある割烹武田をモデルに私が脚色した物語である。
この物語に登場する人物、団体など、同一の物があっても一切関係ありません。但し、割烹武田は、実際に神戸北野で営業されています。
プロローグでご紹介している内容は、全て真実です。
割烹武田のweb上から引用しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる