さくらの花はおわりとはじまりをつげる花

かぜかおる

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お絵かき②

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「よしのお姉ちゃん、絵かけた?」

ハッとして、手元を見ると真っ白な画用紙が手元にあった。

「・・・、あ~ごめん。ちょっとぼーっとしてたみたい。」

私は素直に謝って、真っ白なままの画用紙をサクラちゃんに見せた。

「・・・やっぱり、家族の絵はかきたくなかった?ごめんなさい、無理言って。」

しょぼんとしたサクラちゃんに、私は慌てる。

「ち、違うの、絵を描くのが久々すぎてどう描けばいいかな~って考えてたら、考え過ぎちゃっただけだから。
あ、私サクラちゃんの描いた絵を見たいな~。」

無理やりだったけど、サクラちゃんは蒸し返すことなく描いた絵を差し出してきた。

「これは、・・・真ん中がサクラちゃんで、右がお母さんで、左がお父さん?」


「うん、そうだよ。」

そこに描かれていたのは、サクラちゃんなりに精一杯頑張って描いたであろう3人家族の絵。
色鉛筆でしっかりと色付けされていて、全体的に青や紫系の多い配色。

お父さんとお母さんはどこと無く怒ったような顔をしていて、サクラちゃんは笑顔なのに悲しそうに見える。
何より違和感を感じたのは、他の背景などは特に描かれていないのに3人がそれぞれ離れて描かれているところ。左端、真ん中、右端に、画用紙に対して小さめに描かれているから、それぞれがポツンとした感じだった。

「・・・3人家族なんだね。」

「うん、そう。」

「・・・そうなんだ。あ!サクラちゃんは青とか紫が好きなの?」

「ううん、黄色とかオレンジとかが好きだよ。」

「そっかぁ。」

質問の仕方が悪いのか、うまく話題を広げられない・・・。

「あ、そう言えば昨日は大丈夫だった?」

「・・・昨日?」

サクラちゃんは不思議そうな顔をしている。

「うん、ごめんね、昨日はあのまま寝ちゃったみたいで、お家にちゃんと帰れた?」

「家には帰って無いよ。」

「えっ?お父さんとお母さん心配してるんじゃない?」

そう私が口にした途端、サクラちゃんの顔が曇った。

「多分、2人は気づいて無いよ。帰ってくるのも遅いし、家にいてもケンカばっかりだし。部屋にいるって思って、わたしから声をかけなければ気づかないよ。」

サクラちゃんが昨日と比べて大人しい訳が分かった気がした。



どこか暗くて大きな家に帰るのに慣れてきた頃。
好きこそ物の上手なれ、とはよく言ったものでお母さんは仕事でみるみるうちに頭角を現していった。
はじめて1人で顧客を担当するようになった日はみんなでお祝いをした。
そして、それと同時に帰りが遅くなる日が増えて行った。


歯車が狂い始めたのはいつからだったのかな?
いま思い返しても全然分からない。

でも、あれって思ってからは坂道を転げ落ちるようにあっという間だった。
家族団欒の時間が無くなって、ひとりで夕飯を食べる機会が増えた。
顔を合わせて会話する事も少なくなって、ちょっとさみしいなって思い始めた。

少しずつ、両親の喧嘩が増えた。

ひどい時には顔を合わせる度に怒鳴りあうくらい、いつも喧嘩していた。
その怒りが私に向くことはなかったけれど、怒りの残滓やイライラを全て隠しおおせる事ができるはずも無い。

怒鳴り声に怯えて、家の中に残る怒りやイライラの感情から逃げるように、私は部屋に閉じ籠るようになった。
お休みの日でも、居間に行くことはなく部屋でひとり勉強などに明け暮れた。

そんな家族の状況を知られたくなくて、でもどう振る舞えばいいのかも分からなくて、家族から逃げることしかできない自分に落胆していた。
学童に行ったり友達と遊ぶ事も減っていき、私は口数の少ない大人しい子になっていた。


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