気づいたら隠しルートのバッドエンドだった

かぜかおる

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番外編

⑩ ブリュエット Side マリールイーズの母

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「バルサン伯爵家はウスターシュの父である現当主が様々な犯罪の陰で糸を引いているとされています。国王や私の父である宰相が尻尾をつかもうと長年追っているのですが、なかなか証拠を掴むことができず、時にはこちらを嘲笑うかのように足跡を残していることすらありました。」

そこで、一息ついた後、悔しさを滲ませた声で続けた。

「あなたが彼らに狙われているのは分かっていたんです。だから私があなたに近づき、あなたの人柄を確かめることになりました、あなたの護衛も兼ねて。それから王太子の前婚約者が不審死を遂げ、彼らがあなたを狙う動きが弱まりました。そして8年経ってもう諦めたのだと、楽観視してしまいました。後悔しても、しきれない、申し訳ありません。」

ギュッと握っていた手の力が強まる。

「・・・あなたのせいだけではないわ、私も油断してた。公爵家の跡取りとして、もっと警戒しなくてはならなかった。ごめんなさい。」

私も手を強く握り返した。少しの間、何も考えずにお互いの温もりを感じていた。
そして、どちらともなく握った手を緩める。

「それにしても、婚約者様の死因は病死ではなかった?」

「病死となっていますが、不審な点やわざとらしく側妃の実家やバルサン伯爵家が関わっていると察せられるような足跡が多く見られました。ですが、調査しても犯人に繋がるものは何も見つからず、病死とするしかなかったのが実際のところです。」

「・・・そうだったのね。」

「・・・あなたとウスターシュの婚姻を進めるのは、かなりの冒険です。あなたを、引いてはドーリッシュ公爵家をおとりにバルサン伯爵家の悪事を暴こうという意図です。」

カジミールの顔を見ればかなり苦々しい顔をしている。

「それは、かなり危険ということ?」

「ええ、そしてそんな無茶をしなくてはならないほど、捜査は手詰まりになっています。」

公爵家ひとつをおとりにしなくてはならない程の狡猾さとはどれ程のものなのか、想像ができない。
国に仕える貴族として、粛々と王命を受け国のために働かなくてはならないのだと、その説明を受けて思うも、嫌悪感が勝ってしまう。命すら捧げるべきと理性が訴えるも、婚姻を結べば付随する行為を考えるだけで悪寒が走る。

何より、カジミールとの幸せを再び諦めなくてはならないことに踏ん切りがつかない。

どうして、なんで私だけ?そもそもなんであなたがそれを言うの?

無言で八つ当たり気味な思いに思考が囚われ始めた時、再びカジミールが口を開いた。

「逃げましょうか。」

「え?」

「私たちの不手際です。あなたが背負う必要はない。」

不自然に明るい声と、私に向けられた笑顔。説明を重ねない簡潔な言葉は、私の逃げ道を作り、奪って行く。

「逃げないわ、わたくしはドーリッシュ公爵家の娘ですもの。」

ひどい男だ、分かっていてそう誘導するのだから。

「婚姻を命じるかわりに、ウスターシュと閨を共にしなくていいように、私と関係を続けられるように取り計らうと王からは言われています。」

急な話題転換に、どこか気まずげな物言いになる。

「は?」

思考が停止してしまった。

「もしエッテが浮気がいやと言うのなら、別ですが、いや、王家としても犯罪者の血を公爵家に入れたくないと言うか、バルサン伯爵家の悪事を突き止めることができた時に、その血を引く子しか公爵家にいなければ連座する必要に駆られるかも知れませんし。」

しどろもどろに言い訳をしている。
ついお父さまの方を向き、耳がおかしくなったのではないか確認する。

「王は、本気だと思うぞ。」

「いやいやいや、そもそもそんなこと可能なの?」

「一応、対策は考えているようですよ。」



************

次の一手は・・・
((((・_・|コソコソ!|_-))))

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