1 / 5
地味な花には毒がある(1)
しおりを挟む
『スズラン』をご存じかしら?
白くて華奢で小さい草花。
正直、薔薇みたいなパッと目を引く華やかさはない。
でも、地味な花だと侮るなかれ。
スズランの全草には毒がある。
過去に、スズランを活けたコップの水を飲んだ子供が亡くなるという、痛ましい事件があったほどの猛毒だ。
『だから何だ?』『何を言いたいんだ?』と思うでしょう?
私が忠告したいのは、こういうことよ。
見た目が平凡地味で冴えないからって、馬鹿にして見下すのはやめた方が良いわ。
花も人も見かけによらず……【猛毒】を持っていることが多いから――。
◇◇◇
宮廷舞踏館では、今夜のダンスパーティーに向けて慌ただしく準備が進められていた。
王族の皆様も出席される盛大な夜会。当然、準備も大がかりなものになる。
女学院に通う貴族令嬢たちも今日は授業はお休み。
代わりに、人手不足を補うため、会場設営の手伝いに駆り出されていた。
ローズ・ハルモニアも例外ではなく、朝から床の掃き掃除をしたり、窓拭きをしたり。
今は、玄関ホールに置いてある花瓶に薔薇を飾っている。
ふいに背後から喧しい女性達の声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声にげんなりしながら肩越しに振り返ると、三人の令嬢がこちらに向かって歩いてくるのが見える。
華美なドレスをまとった彼女らは、ローズの級友であり、ことあるごとに嫌味を言ってくる……少々厄介な人たちだ。
三人組のうち二人が、真ん中にいるリーダー格の令嬢を褒め称えた。
「まぁ! 素敵な婚約指輪ですわね。いいなぁ。私のより高そう……羨ましいですわ」
「ええ、本当に綺麗で素敵! とてもお似合いですわ」
「貴重な宝石を使った特注品なの。凄く高かったでしょうに。今日の夜会のために、私の婚約者が贈ってくれて……。ふふっ、私って愛されているわ。――それより、あなたのドレスこそ素敵よ。今日は一段と気合いが入っているじゃない」
「ありがとうございます! わたくし、実は第三王子のルーク殿下を狙っているんですの。今日の夜会でダンスを踊る予定で……今から緊張してしまいますわ!」
「あぁ、だからあなた、まだ誰とも婚約していないのね。美人で爵位も高いのに不思議だったのよ。頑張りなさい」
「はい! 」
廊下のど真ん中に立ち、手より口を動かす令嬢達。
――まったく、どこの世にもサボり魔はいるのね……。とにかく、見つかると面倒だわ。
ローズがそう思っていると、三人組のリーダーがこちらに気が付いた。
瞬間、にやりと意地の悪い笑みを浮かべ、ひん曲がった口を開く。
白くて華奢で小さい草花。
正直、薔薇みたいなパッと目を引く華やかさはない。
でも、地味な花だと侮るなかれ。
スズランの全草には毒がある。
過去に、スズランを活けたコップの水を飲んだ子供が亡くなるという、痛ましい事件があったほどの猛毒だ。
『だから何だ?』『何を言いたいんだ?』と思うでしょう?
私が忠告したいのは、こういうことよ。
見た目が平凡地味で冴えないからって、馬鹿にして見下すのはやめた方が良いわ。
花も人も見かけによらず……【猛毒】を持っていることが多いから――。
◇◇◇
宮廷舞踏館では、今夜のダンスパーティーに向けて慌ただしく準備が進められていた。
王族の皆様も出席される盛大な夜会。当然、準備も大がかりなものになる。
女学院に通う貴族令嬢たちも今日は授業はお休み。
代わりに、人手不足を補うため、会場設営の手伝いに駆り出されていた。
ローズ・ハルモニアも例外ではなく、朝から床の掃き掃除をしたり、窓拭きをしたり。
今は、玄関ホールに置いてある花瓶に薔薇を飾っている。
ふいに背後から喧しい女性達の声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声にげんなりしながら肩越しに振り返ると、三人の令嬢がこちらに向かって歩いてくるのが見える。
華美なドレスをまとった彼女らは、ローズの級友であり、ことあるごとに嫌味を言ってくる……少々厄介な人たちだ。
三人組のうち二人が、真ん中にいるリーダー格の令嬢を褒め称えた。
「まぁ! 素敵な婚約指輪ですわね。いいなぁ。私のより高そう……羨ましいですわ」
「ええ、本当に綺麗で素敵! とてもお似合いですわ」
「貴重な宝石を使った特注品なの。凄く高かったでしょうに。今日の夜会のために、私の婚約者が贈ってくれて……。ふふっ、私って愛されているわ。――それより、あなたのドレスこそ素敵よ。今日は一段と気合いが入っているじゃない」
「ありがとうございます! わたくし、実は第三王子のルーク殿下を狙っているんですの。今日の夜会でダンスを踊る予定で……今から緊張してしまいますわ!」
「あぁ、だからあなた、まだ誰とも婚約していないのね。美人で爵位も高いのに不思議だったのよ。頑張りなさい」
「はい! 」
廊下のど真ん中に立ち、手より口を動かす令嬢達。
――まったく、どこの世にもサボり魔はいるのね……。とにかく、見つかると面倒だわ。
ローズがそう思っていると、三人組のリーダーがこちらに気が付いた。
瞬間、にやりと意地の悪い笑みを浮かべ、ひん曲がった口を開く。
31
あなたにおすすめの小説
聖女は聞いてしまった
夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」
父である国王に、そう言われて育った聖女。
彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。
聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。
そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。
旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。
しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。
ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー!
※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!
落ちこぼれ公爵令息の真実
三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。
設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。
投稿している他の作品との関連はありません。
カクヨムにも公開しています。
傾国の悪女、リーゼロッテの選択
千 遊雲
ファンタジー
傾国の悪女、リーゼロッテ・ダントは美しすぎた。
第一王子を魅了して、国の王位争いに混乱をもたらしてしまうほどに。
悪女として捕まったリーゼロッテだが、彼女は最後まで反省の一つもしなかった。
リーゼロッテが口にしたのは、ただの一言。「これが私の選択ですから」と、それだけだった。
彼女は美しすぎる顔で、最後まで満足げに笑っていた。
不謹慎なブス令嬢を演じてきましたが、もうその必要はありません。今日ばっかりはクズ王子にはっきりと言ってやります!
幌あきら
恋愛
【恋愛ファンタジー・クズ王子系・ざまぁ】
この王子との婚約ばっかりは拒否する理由がある――!
アレリア・カッチェス侯爵令嬢は、美麗クズ王子からの婚約打診が嫌で『不謹慎なブス令嬢』を装っている。
しかしそんな苦労も残念ながら王子はアレリアを諦める気配はない。
アレリアは王子が煩わしく領内の神殿に逃げるが、あきらめきれない王子はアレリアを探して神殿まで押しかける……!
王子がなぜアレリアに執着するのか、なぜアレリアはこんなに頑なに王子を拒否するのか?
その秘密はアレリアの弟の結婚にあった――?
クズ王子を書きたくて、こんな話になりました(笑)
いろいろゆるゆるかとは思いますが、よろしくお願いいたします!
他サイト様にも投稿しています。
馬鹿王子と悪役令嬢とヒロインと
越路遼介
ファンタジー
フィオナ王国第二王子のレオン、王立学園卒業パーティーで婚約者たる公爵令嬢ロゼアンナに『ベルグランド公爵令嬢ロゼアンナ!私の愛するキャサリンに苛めを重ねていたこと断じて許せん!貴様との婚約を……』と何故か最後まで言い切らない。いや、言いきれない。何故か。その瞬間にレオンの体内に宿りし者がいた。それは婚約破棄後の人生を全うした94歳のレオン自身の魂が若き日の、婚約者ロゼアンナ断罪の日に戻ってきてしまったのだ!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
越路遼介と言います。前から挑戦してみたかった婚約破棄と悪役令嬢にチャレンジしてみました。前後編の短い小説ですので、気軽に読んでもらえたらと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる