40 / 40
~ 救国の転生幼魔女 ~
40話
しおりを挟む
クリスティーヌが談話室の扉を開けると、先程まで元気にお喋りしていたセレスティアがアルフレッドの膝の上ですやすやと眠っていた。
その愛らしい寝顔に、思わず笑みがこぼれる。
「ふふっ。セレスティアさん、寝てしまったのですね」
「あぁ。はしゃぎ疲れたようだ」
クリスティーヌが手渡したブランケットを、アルフレッドがセレスティアの肩にそっと掛け、優しく頭を撫でる。娘を見下ろす彼の眼差しは、陽だまりのように温かだった。
「ここ最近は死骸虫の件で特に忙しく、この前の誕生の祝祭もろくに祝ってやれなかった。埋め合わせに、この子の喜ぶことをしてやりたいのだが、なにがいいだろうか?」
「そうですね……。あっ、旅行はいかがでしょう?」
「旅行?」
「はい! セレスティアさんが以前、人がたくさんいる街に行ってみたいと言っていたのです。ふたりで家族旅行できると知ったら、喜ぶと思いますよ」
「ふたり? 君は行かないのか?」
「えっ? ……私も同行して、よろしいのですか?」
「もちろんだろう、君も家族なのだから」
当たり前のように告げられた、そのひと言。
アルフレッドはきっと、なんの気なしに言ったに違いない。
けれども、実家にも居場所のなかったクリスティーヌにとって、その言葉はとても、とても嬉しいものだった。
「ありがとうございます……」
クリスティーヌはこみ上げてくる喜びを胸に、ちょっぴり涙ぐみそうになりながら微笑んだ。
するとアルフレッドもわずかに目元をやわらげ、静かに頷く。
「旅行か……。では近々王都へ行こう。スチュアート殿下から、今回の死骸虫の問題を解決した労をねぎらいたいと、晩餐会に招待されたんだ」
「素敵ですね。私も久しぶりにヒルデガルト様にお会いしたいですし、一緒に行きたいです」
「それでは決まりだな。スチュアート殿のところには、六歳になるアドニス様もいらっしゃる。少し気難しい方だが、セレスティアならば仲よくできるだろう」
アルフレッドがそう告げたところで、膝の上にいたセレスティアが「んんぅ……」と呟き、薄目を開けた。目元を擦りながら、ゆっくりと上体を起こす。
「すまない、起こしてしまったな」
「んんう、だいじょぶ……。なんかね、おとうしゃまと、くりすちーぬさまと、あそびにいってるユメみてた……」
「ふふっ。その夢、正夢になりそうですよ、セレスティアさん」
「へ?」
首を傾げていたセレスティアは、クリスティーヌから王都旅行の予定を伝えられると、大きな目をきらきらと輝かせた。
「ホント? ホント? おっきなマチ、いける?」
「はい、行けます!」
「やったーっ! りょこうっ、りょこうっ!」
左右に揺れながら上機嫌に鼻歌をうたいはじめたセレスティアを見て、クリスティーヌはアルフレッドと顔を見合わせ、ふふっと微笑んだ。
舞台はリシャール領から王都へ。
前世をひた隠す転生幼魔女の日常は、まだまだ続くのだった。
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
ラストまでお読みいただき、ありがとうございます!
今回は初めて幼女主人公に挑戦しました。
「このシーンが好きだった」
「このキャラが印象に残った」
「ひらがなセリフが読みにくい汗」
「このキャラの掘り下げエピソードを読んでみたい」など
ご感想ありましたら、ひとことでも歓迎ですので、残していただけますと励みになります!
また、第一幕では深掘りしていないクリスティーヌの実家方面の事情や、セレスティアが念願の王都へ行くエピソード、アドニスをはじめとした王宮の人々との交流など、この先も考えておりますので、ブックマーク(お気に入り)をつけてお待ちいただけますと幸いです。
ここまでお読みくださり、誠にありがとうございました!
その愛らしい寝顔に、思わず笑みがこぼれる。
「ふふっ。セレスティアさん、寝てしまったのですね」
「あぁ。はしゃぎ疲れたようだ」
クリスティーヌが手渡したブランケットを、アルフレッドがセレスティアの肩にそっと掛け、優しく頭を撫でる。娘を見下ろす彼の眼差しは、陽だまりのように温かだった。
「ここ最近は死骸虫の件で特に忙しく、この前の誕生の祝祭もろくに祝ってやれなかった。埋め合わせに、この子の喜ぶことをしてやりたいのだが、なにがいいだろうか?」
「そうですね……。あっ、旅行はいかがでしょう?」
「旅行?」
「はい! セレスティアさんが以前、人がたくさんいる街に行ってみたいと言っていたのです。ふたりで家族旅行できると知ったら、喜ぶと思いますよ」
「ふたり? 君は行かないのか?」
「えっ? ……私も同行して、よろしいのですか?」
「もちろんだろう、君も家族なのだから」
当たり前のように告げられた、そのひと言。
アルフレッドはきっと、なんの気なしに言ったに違いない。
けれども、実家にも居場所のなかったクリスティーヌにとって、その言葉はとても、とても嬉しいものだった。
「ありがとうございます……」
クリスティーヌはこみ上げてくる喜びを胸に、ちょっぴり涙ぐみそうになりながら微笑んだ。
するとアルフレッドもわずかに目元をやわらげ、静かに頷く。
「旅行か……。では近々王都へ行こう。スチュアート殿下から、今回の死骸虫の問題を解決した労をねぎらいたいと、晩餐会に招待されたんだ」
「素敵ですね。私も久しぶりにヒルデガルト様にお会いしたいですし、一緒に行きたいです」
「それでは決まりだな。スチュアート殿のところには、六歳になるアドニス様もいらっしゃる。少し気難しい方だが、セレスティアならば仲よくできるだろう」
アルフレッドがそう告げたところで、膝の上にいたセレスティアが「んんぅ……」と呟き、薄目を開けた。目元を擦りながら、ゆっくりと上体を起こす。
「すまない、起こしてしまったな」
「んんう、だいじょぶ……。なんかね、おとうしゃまと、くりすちーぬさまと、あそびにいってるユメみてた……」
「ふふっ。その夢、正夢になりそうですよ、セレスティアさん」
「へ?」
首を傾げていたセレスティアは、クリスティーヌから王都旅行の予定を伝えられると、大きな目をきらきらと輝かせた。
「ホント? ホント? おっきなマチ、いける?」
「はい、行けます!」
「やったーっ! りょこうっ、りょこうっ!」
左右に揺れながら上機嫌に鼻歌をうたいはじめたセレスティアを見て、クリスティーヌはアルフレッドと顔を見合わせ、ふふっと微笑んだ。
舞台はリシャール領から王都へ。
前世をひた隠す転生幼魔女の日常は、まだまだ続くのだった。
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
ラストまでお読みいただき、ありがとうございます!
今回は初めて幼女主人公に挑戦しました。
「このシーンが好きだった」
「このキャラが印象に残った」
「ひらがなセリフが読みにくい汗」
「このキャラの掘り下げエピソードを読んでみたい」など
ご感想ありましたら、ひとことでも歓迎ですので、残していただけますと励みになります!
また、第一幕では深掘りしていないクリスティーヌの実家方面の事情や、セレスティアが念願の王都へ行くエピソード、アドニスをはじめとした王宮の人々との交流など、この先も考えておりますので、ブックマーク(お気に入り)をつけてお待ちいただけますと幸いです。
ここまでお読みくださり、誠にありがとうございました!
152
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【だって、私はただのモブですから】
10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした――
※他サイトでも投稿中
編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?
灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。
しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす
yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。
P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ
汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。
※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる
冬野月子
恋愛
「私は確かに19歳で死んだの」
謎の声に導かれ馬車の事故から兄弟を守った10歳のヴェロニカは、その時に負った傷痕を理由に王太子から婚約破棄される。
けれど彼女には嫉妬から破滅し短い生涯を終えた前世の記憶があった。
なぜか死に戻ったヴェロニカは前世での過ちを繰り返さないことを望むが、婚約破棄したはずの王太子が積極的に親しくなろうとしてくる。
そして学校で再会した、馬車の事故で助けた少年は、前世で不幸な死に方をした青年だった。
恋や友情すら知らなかったヴェロニカが、前世では関わることのなかった人々との出会いや関わりの中で新たな道を進んでいく中、前世に嫉妬で殺そうとまでしたアリサが入学してきた。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
猫3号 様
大変お久しぶりでございます!
感想と校正コメント、ありがとうございます(⁎ᵕᴗᵕ⁎) ⁾⁾♡