逆転!? 大奥喪女びっち

みく

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【異能覚醒編】

311 実況・秘め事の夜① ★

「……あの、家光さま」


 振の声は、夜風に揺れる花びらのように心細く震えていた。
 顔を上げると、そこには昨夜、自分がなりふり構わず貪ってしまった青年――ではなく、一人の“側室”としての覚悟を決めた、潤んだ瞳の振がいた。


「私は……。今朝、家光さまに頂いたお言葉、忘れておりません。めろめろ……だと、仰ってくださったこと」

「っ……」


(あ、あああ! 言った! 言っちゃったよ、私! あでぃくと……とか、めろめろ……とか、三十六歳・独身・彼氏いない歴=年齢+十七年の喪女が吐くにはあまりに痛いセリフをさぁあああっ!)


 家光の脳内で、黒歴史の映像が猛スピードで逆再生される。
 だが、振はそんな彼女の羞恥心など露知らず、細い指先で家光の着物の裾を、ぎゅ、と掴んだ。


「局様に厳しくお叱りを受けましたが……。私は、後悔はしておりません。あのような激しいお姿、私以外には……、その。見せてほしくない、と思ってしまったほどで……」


 上目遣いに向けられる、熱を含む視線。
 その瞬間、家光の身体の芯が、昨日覚えたばかりの“発情発作”の残り火に炙られたように、ドクンと跳ねた。


(……やばい。振ちゃん。この子、見た目は可憐な乙女ゲームの攻略対象キャラなのに、中身は意外と独占欲強めの男の子じゃないの! 私、そういうギャップに弱いんだよぉおお!)


 ……と、脳内で叫んでいると――。


『……何を、見つめ合っているのですか。家光様、振。無駄話はそこまでになさい』


 衝立の向こうから、冷徹な声が飛んでくる。

 その声のしたほうへと視線を移し、「どこから覗いてるのよ……!」と家光は思ったが、衝立の下方が格子になっているから見えて当たり前だった。


(これ、横になったら目ぇ合うやつ……嫌すぎる……)


 正勝はいつも背を向けていたけれど、春日局はきっとこちらを向いているに違いない。
 絶対、春日局側には目を向けないぞと心に決めて、家光は衝立から振に視線を戻した。


『白橿。……記録の用意を』

『はい、局様。……上様、振様。どうぞ、昨夜以上の睦言を、わたくしにお聞かせくださいね? 筆を休める暇もないほどに……ふふふ』


 白橿の艶やかな笑い声が、かえって家光の心臓をバクバクと加速させる。

 昨夜は、発作という勢いがあった。
 だが、今は素面しらふ――いや、五感は鋭敏なまま、すべての動きを“養父ちちおや”に見守られているという、前代未聞のドM極まりない状況だ。


(無理! こんな環境で最後までなんて、現代の倫理観がログアウトしちゃう! ……けど。けどさぁ……!)


 目の前で、振がゆっくりと帯を解いていく。
 細い肩が露わになり、白橿に“記録される”ことを羞恥に染まりながら受け入れている、その健気な姿。

 振の細身の身体には、家光が付けた紅い痕がいくつも刻まれていた。


「……家光さま。お慕い申し上げております……。今宵もどうか、私めにお情けを……」


 震える振の唇が、家光の首筋に寄せられる。
 その甘い吐息に含まれた「自分を求めてほしい」という切実な願いに、家光の中の、しばらく封印されていた“エロおばさん根性”が、ついに羞恥心をなぎ倒して立ち上がった。


(……よし、わかった。そこまで言うなら、やってやろうじゃない! 福! 白橿! せいぜい驚いて、筆を折らないように気を付けなさいよ! 昨日やったんだもん、今日だってできらぁ……!)


 家光はそっと自分の寝衣に手を掛ける。
 ……ところがその上から振の手が重なった。


「……今宵は、私がして差し上げてもよろしいですか……?」

「――へ? え、あ、うん?」


(あれ? あれあれあれ?)


 振の細い指が寝衣の帯に伸びる。
 小さな衣擦れの音がして、はらり。

 帯は取り払われて、肌にひんやりした空気が触れた。
 次の瞬間。


「あ……」


 どさっと、家光は褥に押し倒され、振が自らを見下ろしている。
 熱を帯びた視線に射抜かれて、家光の身体が勝手に発熱した。


「家光さま……♡ 口吸いをしても……?」

「は……はぃ……♡」


(ちょ、ちょっと振ちゃん!? 昨夜と、全然違うんだけど……!?)


 上から見下ろす振の瞳には、さっきまでの心細さは微塵もなかった。

 むしろ、何かスイッチが切り替わったような……獲物を逃さないと決めた若鷹のような、静かな熱が灯っている。
 家光の寝衣の衿元を緩く割り、露わになった鎖骨に、振がそっと指先を滑らせた。


「……昼間、局様に教わりました。……家光さまは、首筋や、このあたりを愛でられると、……可愛らしいお声を出す、と」


(ふ、福ぅううう!! アンタ余計な個人情報を側室に流してんじゃないわよぉおお! ってかなんで知ってんのっ!? プライバシーの侵害で訴えてやるからねっっ!)


 家光の脳内叫びをよそに、振がゆっくりと顔を近づけてくる。
 さらさらと、振の長い髪が家光の頬をくすぐった。


「……いきますよ、家光さま……♡」


 ふわり、と柔らかな唇が家光の唇に重なった。
 昨夜の家光のような強引さはなく、けれど、拒むことを許さないような、丁寧で深い口吸い。
 柔らかい舌の先が、家光の歯列をなぞり、ゆっくりと内側へ侵入してくる。


「……んっ、……ふ……ぅ……」


 触れ合った舌が擦れ合い、ぞくりと背中に衝撃が走り、家光の口から、自分でも驚くほど甘い吐息が漏れた。
 それと同時に、衝立の向こうで“さらさら”と筆が走る。


『……ふむ。まずは、丁寧な接吻から、か。……白橿。上様の今の表情、しっかり書き留めておけ』

『……はい。頬が、桃色に染まり……。瞳は、潤んで……。……あら、上様の手が、振様の背中に回りましたよ、局様……♡』


(……っ! あー、もう! 実況中継しないで! 恥ずかしすぎて集中できない……っ、はずなのに……)


 振の指が、家光の脇腹から、じわじわと上へと這い上がってくる。
 その指先は驚くほど熱く、触れられた場所から火がついていくようだ。


「……あ、……振……っ」

「……はぁ、……家光さま。……もっと、私の名前を呼んでください。……昨夜のように、めろめろに、なって……。……ね?」


 振が家光の耳朶を、はむ、と甘噛みした。
 その瞬間、家光の腰が“びくん”と跳ねる。


(あ、あかん……! この子、昨夜の私のセリフを逆手に取って、私を落としにかかってる……! 中性的な外見のくせに、攻め方が絶妙にエロいぃ……♡)


 振の膝が、家光の脚の間に、ぐい、と割り込んできた。
 細身のはずの彼の身体が、今は驚くほど大きく、頼もしく感じられる。


「……いえみつさまの……ここ、……すごく、あつくなってます……♡ ……さわっても、いいですか……?」

「――っ、……あ、……ぁ……っ♡」


 もはや、言葉にならない。
 家光は、ただただ振の首にしがみつき、彼がもたらす熱い快感の波に、身を任せることしかできなかった。


「……はぁ、……家光さま。そんなに、ふるえて……。わたくしのこと、こわいですか……?」


 振が家光の耳元で、軽い口付けとともに、わざとらしく切なげに囁く。
 彼の指先が家光の寝衣の合わせ目をじりじりと割り、触れた感触は、見た目の可憐さに反して驚くほど熱く、そして硬かった。

 女の子のような白く細い指だと思っていたのに、家光の柔肌をなぞる腹は、わずかに荒れていて、男特有の“ざらり”とした質感を伴って皮膚を削るように這い上がってくる。


「……あ、ひ……ッ」


 華奢な指が、家光の脇腹を掠めて柔らかな膨らみへと伸びた。
 昨夜、乱暴に触らせたそれを、今夜は、まるで壊れものでも扱うかのような丁寧な手つきで、優しく揉み、桃色の尖りをくりくりと甘くこねる。


「ン、ふっ……」


 左を優しくこねられ、「ちゅう」と右の膨らみは吸い付かれる。
 吸い付かれた尖端が、振の口の中でれろれろと転がされた。
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