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【新妻編】
190 実況はだめ ★
しおりを挟む「あ……っ、どうしよう……」
――何なりとって……、どういうこと……!?
こんな、お姫様みたいな扱いして……!
指先に柔らかい唇が触れると、そこから熱が湧き出すように家光の身体が熱くなる。
目の前の男は、自分の意のままに動くらしい。
言わないとしてくれないということか。
……まだ未開通の家光にはハードルが高すぎやしないだろうか。
だが振の声や視線は、いやらしさよりも、優しさを感じる。
彼になら正直に話しても大丈夫かもしれない。
「……家光さま?」
「その、さっき、気持ち良くて……あのままだと変になっちゃいそうだったから止めたの」
――振なら、わかってくれるよね……?
振なら女心をわかってくれるはず……と、期待を込めて家光は素直に感想を述べた。
こう言えば、経験豊富な振なら優しく手解きしてくれるはず……?
……だが、家光の予想は外れる。
「変に……? それは大変ですっ!」
「え」
振の瞳は見開かれ家光の手をぎゅっと強く握りしめる。一瞬名残惜しそうに乳房を見下ろしたが、すぐに家光と目を合わせ、次に出た言葉は――。
「やはり乳房はこの辺りにして、ほとに触れても宜しいですか?」
「えっ、ほとって??」
――あれ? 振、なんかキャラ変わってない……?
家光の前に振は膝立ちをし、急に距離を縮めた。
いつもゆったりとした話し方の振の口調がやけに早い。
ほととは何ぞやと、家光は迫る振に僅かだが身構える。
「……失礼致します」
「えっ、ちょ、ちょっと振……!?」
“失礼致します”とだけはいつものゆったり口調で丁寧だったが、振は家光の背に腕を回し、そっと褥に押し倒した。
押し倒すと同時に褌ぱんつの上から振の指が触れる。
「あっ……! そこは……!」
くちゅり。粘着質な音が家光の窪みから僅かだが、聞こえた。
「……家光さま、湿っておりますね……よかった……。私の拙い愛撫でこんなに潤うなんて……、有難き幸せ……」
振の目は嬉しそうに細められ、家光の首に唇を寄せる。
首筋に唇を何度も触れさせながらも、窪みではこすこすと、振の指は優しく蠢いていた。
「ンンッ!(ナニコレ! 自分で触るのと全然違うっ!!)」
下からも上からも同時に刺激を与えられた家光は、身悶え身体を跳ねさせる。
「……布の上からでもぬるぬるしているのがわかりますか? 私が触れると家光さまの蜜が奥から溢れて……」
「あぁんっ! 実況ダメぇっ!!」
くちゅくちゅ。
振の指が擦れる度に、水音が下半身から聞こえる。
身体も振の囁く声が木霊する耳から、唇が触れる首から、指が触れる下肢の付け根から、熱を帯びて全身が火照り体温が上昇していく。
滅多にない暇な時、何度か自慰行為はしたことがあるが、軽く擦られているだけでこんなに気持ちが良いなんて思ったことはない。
振の指先が布越しに前後運動し、隠された花芽を時折擦る。
その度に家光の口から「んっ、ンンッ」とくぐもった声が鼻から漏れた。
――これ気持ち良いっ、もっと触って欲しい……!
さすがは振、経験者は違う……! なんて――家光は勘違いをしながら与えられる感覚に酔わされる。
「家光さま……、あなたはとても甘いですね……。はぁ……っ……」
振は家光の耳を甘噛みし、耳裏を舐めると“甘い”と優しく囁く。
そして家光の額に薄っすらと掻いた汗も吸い取るようにそっと口付けた。
「はっ、はぁ……ふ、振ぃ……、ね」
――ねぇ、直接触って……。
下腹部にむず痒い感覚を覚えた家光は、瞳を虚ろわせ振の名を呼んだ。
催促すれば、振はその通りにしてくれるだろう。
……ところがその声は小さく、興奮した振には届かず、彼は手を止めてしまった。
「……はぁ……。家光さま、とろ蜜をお舐めしても宜しいでしょうか」
「はぁ、はぁ……ぁ……(私……!)」
――今、何を言おうとしたの……!?
振の声に家光は我に返って目を見開く。
今、振に直接触れろと催促しようとしていなかっただろうか。初めてだというのに催促するなんて、淫乱だと思われたら恥ずか死確定――。
……そもそも振とは性別を超越した友達だったはず。
いや、でも振も男で……、というのはまだ脱いでもいない振の下半身がこんもりと膨れているのが視認できるからなのだが……。
振のソレがどういう形をしているのかは知らないが、ソレが、アソコに入る……?
『家光さま。ほら、見て下さい。家光さまのほとが私を少しずつ呑み込んでいますよ。わかりますか? ああ、中は熱いですね……』
家光の頭の中で、振が逐一実況する光景が浮かぶ。
「家光さま、褌を脱がしても宜しいですか?」
妄想中の家光をよそに、いつの間にか振は家光の股座へと移動していた。返事がないのを肯定と捉えた振は褌型ショーツに手を掛ける。
「へっ? っ、うわぁあああっ!! 実況だっ、めぇえええっ!!」
「えっ」
家光は身体を起こして、どんっ! と振を突き飛ばし、彼は無様に褥に転がった。
「や、ダメ。無理。今夜はホント、ここまでっ、お願いっ。ムリッ!」
――私っ! 友達になんてことをさせようと……!!
既に解けてしまった褌の紐を掴み、家光は涙目で振を拒絶する。
「ぁ……、申し訳……」
「あっ、ちがっ!(もぉっ!!)」
家光の拒絶に振はショックを受けたように眉を寄せたものの、すぐさま態勢を立て直し座礼を……としたところで、家光は振の頬を両手で捉え、自ら唇を重ねた。
「っ……!(家光さまっ……!?)」
「ん……はぁっ……。振、また近い内に呼ぶから、今夜はもう休も? 私、もういっぱいいっぱいなの」
「……家光さま……はい……」
振は何か言いたげだったが、それを呑み込み視線を落とす。
家光のとろ蜜で濡れてしまった手先を見下ろし、その指を鼻元に持ってきたかと思うと、ぺろりと舐めた。
「……甘い、です……♡」
「くあっ!?(振っ!!)」
「あっ! 家光さまっ……!?」
嬉しそうに微笑む振の姿に家光は卒倒し、そのまま気を失ってしまった。
……その晩は結局そこまでで、最後の一線まで超えることができず、家光は生娘のまま、また、振も生息子のまま――。
「……(未遂に終わって良かった……)」
家光は次の朝まで起きることはなく……すっかり忘れ去られているが、衝立向こうの正勝は、両手拳を握り締め“よし!”と鼻息を勢いよく吹き出し、二人の寝息が聞こえ始めてやっと眠りに就くことができたのだった。
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