貞淑な王妃

朝倉志月

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プロローグ

独りきりの離宮

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 街道から市街の中心の通りまで、途切れることなく市民が迎え出ている。祝いの行進なのは明らかなのに、華やいだ空気と言うよりは、疲弊を感じさせる市民の顔。その中を、近衛に厳重に守護され、を絹と花々で飾り立てた葦毛を揃えた十六頭立て馬車が通り抜けていく。華々しい御者の帽子くらいがせいぜいで、中の人物などは微塵も見えない。行進を管理する軍人が街道に目を遣る度に、惰性のようにまばらな拍手が鳴る。
 市民が虚ろな目を向ける中を延々と抜けた馬車は、やがて市街を抜け、王宮に辿り着いた。
 いる限りのおべっか使いの貴族たち。礼法も何もあったものではなく、迎えに出た国王。馬車の扉横に台が設置され、恭しく扉が開かれた。
 流れるような白絹の流れと共に、馬車の中から女神が降り立った。
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