乙女ゲームの悪役兄様、冷徹神王騎士団長の寵愛に囲われる

高無

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優しさに触れて

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俺に向けられた手は突然目の前から消えた。

音もなく現れて、狼は悲鳴のような声を上げ噛みつこうとした。

綺麗に横に斬りつけ、血も何も出さずに狼が消えた。

俺と歳はそう遠くない黒髪の後ろ姿が見えて、倒れているユニコーンに近付いた。
何をしているのか俺からは見えないが、ユニコーンは立ち上がり少年に親しげに擦り寄っていた。

ユニコーンは離れていき、少年は俺の方を振り返った。
隙がない完璧な美しい顔で直視が出来ずに視線を逸らした。

視界に映ったのは俺が首に巻いていたマフラーで、首に触れると無防備だった。
この年齢だと呪いの紋様について理解しているはずだ。
首が見えないほど離れてはいないから確実に見られている。

顔が真っ青になり、襟を立てて隠すように両手で掴んだ。
騎士団に突き出されたら子供でも問答無用で処刑される。

少年がこちらに近付いてきて、逃げたいのに腰が抜けて動けない。
ガクガクと震えていて、目元も熱くなり涙をこぼす。

「ここで何をしている」

「ご、ごめっ…なさ…」

「なんで泣いてるんだ?」

頬を両手で包まれて上を向けられると、涙でぐちゃぐちゃになった顔を見られる。

汚いと思われるかと思ったが、頬を指で拭われた。
優しく抱きしめられて、ビクッと体が小さく跳ねた。

何をされているのか理解が追いついていなくて頭が真っ白になった。

生まれ変わってからこんな風に優しくされた事がなかった。
だから初対面の相手に頭を撫でられているこの状況は何なんだろう。

優しい人というのは分かる、ユニコーンも懐いていたから…
でも、正義感があったら神殺しの呪いは許せないはずだ。
優しいからこそ、俺をこうやって逃さないように抱きしめているんじゃないかと思ってきた。

「…ごめんなさい…騎士団には言わないで…死にたくないっ」

「死ぬ?騎士団が君を殺すのか?」

「だって…俺は…」

「大丈夫、君を悲しませる相手から俺が守るよ」

見上げて少年の顔を見ると、その顔には見覚えがあった。
面影がある、その優しい瞳は俺に向けるものではなかったはずだ。

涙が止まり「俺はもう大丈夫…ありがとう」と頭を下げた。
少年は俺から離れて立ち上がり、俺に手を差し伸ばしてきた。

それはゲームであったイラストと重なり、首を隠すのも忘れて手を掴んだ。
引っ張られて、軽くよろけると体を支えられた。

この話はゲームではなかったはずだ、悪役視点の話はなかった。
裏でこんな事があったとしても、ゲームでは成長してから初対面として出会っていた。

どういう事だろう、昔の記憶を覚えていないって事なのかな。

「家まで送るよ」

「そこまでしてもらうわけにはいきません!」

「騎士団に追われてるんだろ、俺が守るよ」

今、追われているわけではないけど彼と居て大丈夫だろうか。
彼はまだ本物の神様だと知っているのは少数だけど、神様である彼の手を煩わせたと目を付けられるかもしれない。

そうなればいずれ首の呪いの紋様もバレてしまう。
優しいこの人は悪くない、俺が死なないために…

マフラーを掴んで土を叩いて落として、首に巻くと安心する。

「パニックになってて、さっきの話は忘れてください…心配してくれてありがとうございました」と頭を下げた。

なにか言いたげだったが、背中を向けて歩き出した。

次に会う時は敵同士だろう、出来れば会いたくない。

「ねぇ!また会える?」

「た、多分…同じ街に住んでたらすれ違うかも」

俺と会いたいなんて変わってるな、それも記憶と一緒に忘れてしまうんだろう。

もしかしたら友達になってくれそうだけど、やっぱりダメだ。

彼はゲームの攻略キャラクターの中でメインの数年後、神王騎士団長になる男だ。

俺と住む世界が違いすぎる、関わらない事が長生きに繋がる。

来た道を帰ると、気付いていなかったが街が夕陽に染まっていた。

そこでローラの存在を思い出し、すぐに戻ろうと再び森を封鎖している縄を掴んだ。
いろいろありすぎて頭から抜けていた、ローラは大丈夫だろうか。

響く森の中で悲鳴は聞こえなかったが、無事だと安心するのはまだ早い。
いつも通り無事のローラを見るまで安心なんて出来ない。

あの人はまだいるのかと考えながら森の中に入ろうと思った。

「何してるのよ」

「えっ!?ローラ?」

後ろから声が聞こえて、後ろを振り返るといつも通りのローラがメイドを従えて立っていた。
妖精を捕まえに行くと言っていたが、メイドが持っているのは大量の買い物袋だった。

ただの買い物だったのかと俺の全身の力が抜けた。








ーーー
※?視点
ーーー

初めて見た、キラキラと輝く涙を浮かべた可愛らしい生き物を…

俺は小さな結晶から生まれた者、人とは違う力を持っている。
魔法と呼ばれる力は常に俺の中に存在している。

それが、本物の神様という人のカタチをした人ではない存在。
赤ん坊ではなく、子供の姿で地面に立って歩いた。

生まれ変わるのに随分経ってしまった、前世の記憶は残っていない。
唯一残るのは手に残っている嫌な感触だけだった。

この国は神に一番近い場所にあり、魔物にも狙われやすい。
加護をするために街に向かい、帝王に挨拶する。
俺が神だと知るのは、俺の誕生を見ていた帝王と一部の側近だけだ。

帝王自ら迎えにきて、俺の住む場所は決まった。

しかし、ここの人間の信仰心は少々行き過ぎている。
神を尊敬するのは構わないが、人生の全てにする人が多くて生まれたばかりの俺には荷が重かった。

与えられた城の部屋にいるのも休まらないから、こっそり街を出て森の中を歩いていた。

ここには人間がいないから、気分転換にはいい。
妖精達が俺に集まってきて、魔物は寄り付いて来ない。

ここで暮らしたいな…と考えていたら、ユニコーンの悲鳴が聞こえてきた。
人間には神の使者の声は聞こえない、俺だから聞こえる助けだ。

急いで向かい、魔力を剣に変えて狼の魔物を斬りつけた。
下級魔物だったからすぐに消えて、怪我をしたユニコーンの手当てをした。

そして俺は出会ったんだ、首に奇妙な模様がある心奪われる子供に…
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