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君は誰
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言っている意味が分からないが、差し伸ばされた手を握る。
勢いよく引っ張られると少し体がよろけて支えられる。
冷えた体に温かな体温で包み込まれてホッと一安心した。
やっと今、助かったと実感する事が出来た。
俺の頭を撫でるその手の感触も覚えがあった。
見上げると、俺を見つめて微笑んでいた。
彼はこんな風に笑う人だっただろうか、いつも表情を崩さないクールなイメージだった。
それに、俺の事忘れていると思っていた。
ゲームではまだ俺達は出会っていない。
「怪我は?」
「助けてくれたから痛くはないです」
「そう、それは良かった」
「…あの、貴方の名前は?」
そういえば、幼少期の頃に自己紹介していなかった事を思い出した。
俺は名前を知っているが、彼は俺が誰かを知らない。
至近距離で見つめ合っていると、耐えられなくて体を少し押して逃げる。
やっぱり超人的な美形を見ると、自分が恥ずかしくなって見ていられない。
本来はこんなに間近で見る事はない。
この距離は主人公との距離だけだ。
一歩二歩と後ろに下がると、腰に腕を回されて引き寄せられる。
さっきよりも近くて、鼻と鼻が軽く触れ合う。
「逃がさない」
「あ、あの…」
「俺の名前はゼスト…君は?」
「ユーリ、です」
「いい名前だね、ユーリ」
月も霞むほどの笑顔で言われて、顔に熱が集まる。
「真っ赤」と耳元で囁かれるだけで足の力が抜ける。
足の裏に腕を回されて、お姫様抱っこされて落ちないようにゼストの首に腕を回した。
昼間にこんなところを見られたら俺は死刑かもしれない。
神王様に抱き上げられるだけで不敬罪になりそう。
彼は神王騎士団長だ、ここにいるはずがない人物。
巫女を祝う式典には必ず参加しなくてはいけない。
名前も偶然似ていて、髪色と瞳と雰囲気以外の容姿も似ていてたまたま魔法の剣が使える人。
そんな人、普通に考えて偶然会えるわけがない。
とりあえず彼が誰なのかは分からないが、俺は行く場所がある事を思い出した。
もうローラ達は着いているかもしれない。
式典が始まる前に到着してローラを会場から連れ出さないと…
「ゼストさん」
「ゼストでいいよ、ユーリ」
「俺、行きたい場所があるんです」
「何処へでも連れて行くよ」
「あ…その前に、地面に落ちたチョーカーを拾いたいんですが」
首が無防備の中で人が大勢いる場所に行く事が出来ない。
下ろしてくれるかと思ったが、ゼストは片手で俺を抱えながらしゃがんでチョーカーを拾ってくれた。
もう足は大丈夫だと言ったが、下ろしてはくれなかった。
チョーカーを受け取り、暗闇の中歩き出した。
城で行われている式典に呼ばれている事を伝えると驚いていた。
俺が式典に呼ばれるような身分だと思えないよな。
普段は着ない真っ白な正装も、転んで土で汚れてしまった。
ゼストは騎士団の服を着ているが団長の服ではない。
同じ騎士という共通点もあるのに、やっぱりゲームの彼とは別人なのかな。
「貴族だったのか」
「見えませんよね、自分でもそう思います」
「いや、もう少し早く知りたかったな…そうしたらもっと早めに会えた」
ゼストも貴族なのか、でもパーティーとかはローラがよく行っていて俺は留守番だった。
息子扱いされていない使用人だから…
今日はローラの輝かしい晴れ舞台だから今日だけは息子として呼ばれている。
こんな姿を見たら、他人のフリをされそうだけど…
歩いているのに、進むスピードが速い。
すぐに城まで到着して、煌びやかな装飾が明るく照らす。
下ろしてもらい、服に付いた土を叩いて払うとゼストは服の汚れに触れた。
少し温かくなったと思ったら、服の汚れは綺麗になっていた。
「凄い…ありがとうゼスト!」
「君の笑顔が見られるならこのくらい何でもないよ」
あれ?このゼストって攻略キャラクターだっけと思うほど優しい…何故か俺にだけど…
「じゃあまたね」と言いゼストは城には行かずに暗闇の中に歩いて行った。
城に行かないのか、じゃあ彼はやっぱりゲームの中の神王ゼストとは違うのか。
ゲームのゼストが銀髪だったところなんて見た事がない。
俺の幼少期に会っていたような事を言っていたから彼と会っていた。
やっぱり、俺はゲームのゼストとは出会っていなかったんだな。
勢いよく引っ張られると少し体がよろけて支えられる。
冷えた体に温かな体温で包み込まれてホッと一安心した。
やっと今、助かったと実感する事が出来た。
俺の頭を撫でるその手の感触も覚えがあった。
見上げると、俺を見つめて微笑んでいた。
彼はこんな風に笑う人だっただろうか、いつも表情を崩さないクールなイメージだった。
それに、俺の事忘れていると思っていた。
ゲームではまだ俺達は出会っていない。
「怪我は?」
「助けてくれたから痛くはないです」
「そう、それは良かった」
「…あの、貴方の名前は?」
そういえば、幼少期の頃に自己紹介していなかった事を思い出した。
俺は名前を知っているが、彼は俺が誰かを知らない。
至近距離で見つめ合っていると、耐えられなくて体を少し押して逃げる。
やっぱり超人的な美形を見ると、自分が恥ずかしくなって見ていられない。
本来はこんなに間近で見る事はない。
この距離は主人公との距離だけだ。
一歩二歩と後ろに下がると、腰に腕を回されて引き寄せられる。
さっきよりも近くて、鼻と鼻が軽く触れ合う。
「逃がさない」
「あ、あの…」
「俺の名前はゼスト…君は?」
「ユーリ、です」
「いい名前だね、ユーリ」
月も霞むほどの笑顔で言われて、顔に熱が集まる。
「真っ赤」と耳元で囁かれるだけで足の力が抜ける。
足の裏に腕を回されて、お姫様抱っこされて落ちないようにゼストの首に腕を回した。
昼間にこんなところを見られたら俺は死刑かもしれない。
神王様に抱き上げられるだけで不敬罪になりそう。
彼は神王騎士団長だ、ここにいるはずがない人物。
巫女を祝う式典には必ず参加しなくてはいけない。
名前も偶然似ていて、髪色と瞳と雰囲気以外の容姿も似ていてたまたま魔法の剣が使える人。
そんな人、普通に考えて偶然会えるわけがない。
とりあえず彼が誰なのかは分からないが、俺は行く場所がある事を思い出した。
もうローラ達は着いているかもしれない。
式典が始まる前に到着してローラを会場から連れ出さないと…
「ゼストさん」
「ゼストでいいよ、ユーリ」
「俺、行きたい場所があるんです」
「何処へでも連れて行くよ」
「あ…その前に、地面に落ちたチョーカーを拾いたいんですが」
首が無防備の中で人が大勢いる場所に行く事が出来ない。
下ろしてくれるかと思ったが、ゼストは片手で俺を抱えながらしゃがんでチョーカーを拾ってくれた。
もう足は大丈夫だと言ったが、下ろしてはくれなかった。
チョーカーを受け取り、暗闇の中歩き出した。
城で行われている式典に呼ばれている事を伝えると驚いていた。
俺が式典に呼ばれるような身分だと思えないよな。
普段は着ない真っ白な正装も、転んで土で汚れてしまった。
ゼストは騎士団の服を着ているが団長の服ではない。
同じ騎士という共通点もあるのに、やっぱりゲームの彼とは別人なのかな。
「貴族だったのか」
「見えませんよね、自分でもそう思います」
「いや、もう少し早く知りたかったな…そうしたらもっと早めに会えた」
ゼストも貴族なのか、でもパーティーとかはローラがよく行っていて俺は留守番だった。
息子扱いされていない使用人だから…
今日はローラの輝かしい晴れ舞台だから今日だけは息子として呼ばれている。
こんな姿を見たら、他人のフリをされそうだけど…
歩いているのに、進むスピードが速い。
すぐに城まで到着して、煌びやかな装飾が明るく照らす。
下ろしてもらい、服に付いた土を叩いて払うとゼストは服の汚れに触れた。
少し温かくなったと思ったら、服の汚れは綺麗になっていた。
「凄い…ありがとうゼスト!」
「君の笑顔が見られるならこのくらい何でもないよ」
あれ?このゼストって攻略キャラクターだっけと思うほど優しい…何故か俺にだけど…
「じゃあまたね」と言いゼストは城には行かずに暗闇の中に歩いて行った。
城に行かないのか、じゃあ彼はやっぱりゲームの中の神王ゼストとは違うのか。
ゲームのゼストが銀髪だったところなんて見た事がない。
俺の幼少期に会っていたような事を言っていたから彼と会っていた。
やっぱり、俺はゲームのゼストとは出会っていなかったんだな。
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