乙女ゲームの悪役兄様、冷徹神王騎士団長の寵愛に囲われる

高無

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霧の中

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霧がだんだん濃くなってきた。

馬車の窓から冷たい風が吹いていて肌に突き刺さる。
早く城に着かないかな、城の中はさすがに温かそうだ。

小さく息を吐くと、息が白くなっていて秋ぐらいの季節だけどここまで寒い事はない。

大きな音を立てて馬車が揺れて、体が軽く浮いて転がる。

なにが起きたのか、前を見ても霧で分からない。
トラブルでもあったのかと思い、馬車から顔を出した。

馬車は止まっていて「どうかしたんですか?」と声を掛けた。
さすがに雇われ御者が俺を無視するとは思えない。

一応一言「降りますね」と伝えて、馬車から降りた。

前の方を見ようと思って、血の気が引いて恐怖で体が震えた。
馬を御者の男が食べていて、御者の背中には大きな悪魔の羽根が生えていた。
ユニコーンの時とは違い、もう馬は生きていない。

魔物?もしかして人間に擬態していたのか?そんな事出来るのか?

ゲームでそんな事なかった、魔物の存在はあったが擬態して人に紛れているとは思わなかった。

どうしよう、丸腰の俺では何も出来ないから騎士団を呼ばないと…
周りを見渡しても小さな外灯と霧でよく見えないが、賑やかな街から離れている気がした。

顔も服も血だらけで俺は後ろに下がってこの場から逃げようと思った。

チリッ…と突き刺すように呪いの紋様がある首が痛くなる。
早くこの場から逃げないとダメだと焦っていたら、小さな枝を踏みつけた。
その音で視線が馬から俺の方に向けられていて、悲鳴に近い声を上げて突進してくる。

全速力で駆け出して、何処に向かっているのか分からないが走り続けた。
こんなところで嫌だ、嫌だ、死にたくない、死にたくない!!

息が苦しくなり、触れていないのにチョーカーが外れた。
足がもつれて地面に倒れて、すぐに起き上がろうとした。

しかし俺の体は起き上がる事が出来ず、背中を踏みつけられた。
這いつくばって逃げようとしてもミシミシと骨が軋む嫌な感じがした。

息が出来なくて、背中を踏みつけられるだけではなく呪いの紋様に首を絞められているようだ。

俺の影の首から突然鎖が現れて、俺に向かって伸びて外灯を破壊した。
唯一灯りで見えていた外灯が破壊されて視界が薄暗くなった。

恐怖と不安が大きくなり、鎖の数が増えてきた。

魔物を攻撃するわけではなく、四方八方に伸びているだけで俺の味方ではない。
影から鎖が出ているから体がピクリとも動かない。

止める方法が分からず、自分の首に触れる事しか出来ない。

早く止まれと心の中で祈りながら、逃げ出す事も諦めていない。
どうすればいいのか考えていたら、鎖が突然粉砕された。

目の前で鎖だったものがキラキラと舞いながら落ちた。

背中を踏んでいた重みもなくなり、後ろを振り返った。

飲み込まれるほど大きな満月で、魔物の腹部を銀の剣で貫いて黒い霧になり消えた。
魔物が消えると、周りを包み込んでいた霧もなくなった。
あの魔物が霧を出していたのか、突き刺さる寒さも今はない。

満月に照らされる銀色の髪の青年は俺の方を向いた。
真っ赤に染まる瞳でずっと見られたら吸い込まれそうだ。

何処か見覚えがあるが雰囲気と髪色と瞳の色が違う、彼はいったい誰だ?

魔物というより神様のような神秘的な雰囲気があった。

「やっと見つけた、迎えにきたよ」

そう言う青年は俺に向かって手を差し伸ばしていた。
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