14 / 16
14話:好意
しおりを挟む
戸崎燐には、友達が居ない。いや、上辺だけの友達は、居るのかもしれない。ただ毎日行動を共にするような気の合う友達が少ないのは、確かな事なのだ。彼は、決して自分から同級生の輪の中に入って行こうとはしない。何時も一歩退いて、後ろからそれを眺めているような人物だった。まるで何かに絶望して、全てを諦めている。最初に彼を見て要の目には、その様に映った。だが、その認識が間違いであると気がつくには、それほどかからなかった。要が戸崎燐と親しくなったのは、ある昼休みの事……ぼーっと窓際の席から外を眺めている燐に要が声を掛けたのがきっかけである。何も無いグランドをただ永遠と眺め続けている燐の姿を見て、要は、思わず声を掛けてしまった。
「何外見て、ぼーとしてるの?」
そんな要の問いかけに燐は、驚いた様子で振り向いた。
そして、気を取り直した様子で
「ぼーっとしてたんじゃない。外に居る人を観察してたんだ」
燐は、そんな事を言った。要は、とんでもない言い訳をする人物だなぁっと笑いを堪えるの必死だった。だが、燐は、本気でそう思っていた事が後になって解って、要は、戸崎燐と言う人物にとても興味を惹かれたのだ。燐は、人を観察するのが好きな人だった。同級生の輪から一歩退いて、人を観察する。要は、どうして燐がそんな事をするのか最初は、不思議でならなかった。しかし、次第にその理由が要には、理解できるようになっていった。燐は、要と同じ様に他人が羨ましいのだ。他人を観察する燐の瞳は、まるで眩しいものでも見る様な悲しみに満ちている。それが解った時、要は、燐に対して強い親近感を覚えたのだ。
放課後。ようやく最後の授業を終えて、要は、つまらなそうに溜息を吐く。また、一日が終わってしまう。学生の身である要にとって、時間と言うものは、名残惜しいものでもあり、早く過ぎ去って欲しいものでもあった。ただ要にとって不安でならないのは、その大切な時間を無駄に浪費してしまう事。それは、要が時間を無駄に浪費する事しか知らないから。大切な時間を有意義に使う術など、今の要には持ち合わせて居なかった。ほんの小さな希望さえもあれば要は、変われたかもしれなかった。しかし、現実に要の目の前にあるのは、真っ黒な暗闇だけ。このまま大人になってしまえば……自分の未来は、不幸に違いないと確定している事に不安になる。それでも時間は、残酷に時を刻んでいくのだ。要は、席から立ち上がると鞄を提げて教室から出て行く。廊下をゆっくりとしたペースで歩き、階段を下りて一階のロビーへとたどり着いた。
「ん?」
そこで要は、一人の男子生徒が下駄箱の前で自分を見ている事に気がついた。良く見ればその男子生徒は、要のよく知る人物だった。葉月翔太。この学校で彼の名前を知らない人物は居ないほど彼は、有名人だった。それも、成績が優秀だからとか運動できるとか言う方面では、なく……最悪に性質の悪い不良として有名だった。
誰もこの学校で彼に逆らう者は、存在しなかった。逆らえば何をするのか解らないからだ。それほど短気で暴力的で切れやすい性質の不良。しかし、まてよっと要は、葉月翔太に逆らえる人物を一人だけ思い出していた。戸崎燐だ。戸崎燐だけは、彼……葉月翔太に逆らえる事ができる唯一の人物だった。どう言う理由か知らないが戸崎燐に対してだけは、葉月翔太は、かなり消極的な態度を取る。誰にでも突っかかるような態度をとる葉月翔太も戸崎燐の前だけでは、かなり慎重な行動を取ろうとするのだ。まるで何かを警戒している様な感じで不自然な行動を取ろうとする。
金髪の髪に、銀のピアス。はだけたシャツに銀のネックレス。札付きの不良達がする見た目だけでも相手を威嚇する為の装飾を葉月翔太も例にもれずに身に纏っていた。肩で風を切るように歩き、要の方へ歩いてくる。
「よお。 今日は、いい返事を聞かせてくれるんだろうな?」
葉月翔太は、要に息が掛かる距離まで迫るとそう声を掛けてきた。そのまま、翔太は、身を抱きしめる様に要の腰に手を回す。要は、直ぐに翔太の胸を両手で押して、突き放した。
「いい返事って? 何?」
要は、そう言ってとぼけて見せる。実は、要は、この葉月翔太に交際を求められていた。いや、そんな交際を求めると言うような生易しいものではなかった。とても強引で高圧的な態度で「俺の女になれ!」と迫ってきたのだ。正直……要は、葉月翔太が嫌いだった。戸崎燐とは、逆で人を見下す態度は、どうしても好きにはなれない。とは言え……翔太がそう簡単に諦めてくれそうに無い事を要は、解っていた。
「とぼけんなよ! 何度も一緒に寝た仲だろ?」
「なにそれ……あなたは、私の身体を金で買った。 ただ、それだけでしょ? 何勘違いしてんの?」
「勘違いだと? いや、違うな。要、お前のその瞳の中には、激しい憎悪がある。それも俺と同じ類のものだ。同じ類の人間同士仲良くした方が面白いだろ?」
葉月翔太は、そう言って要の心の奥底に眠るある種の感情を挑発してくる。確かに葉月翔太も井原要も同じ類の人間だ。人を好きになる事ができても決して人を愛する事ができない人間。それは、戸崎燐も同じはずで、少し違うのは、燐は、前向きで要は、後ろ向きであり、翔太は、破滅的であると言う点だけである。
「そう言う話なら、理解できるんだけどね。 葉月君の女になると言うのは、嫌!」
「その事については、別に拘っているわけじゃねぇ。 金なら出すぜ。 お前は、金さえ貰えればいいんだろ? だからさ、俺専用になれって言ってんだよ」
葉月翔太は、そう言って再び近づけて要の右手首を左手で掴み、右腕を腰に回してきた。要は、また突き放そうと腕に力を入れたが、今度は、ビクともしなかった。翔太に腕を捕まれて、無理な姿勢では抵抗できるような力が思い通りに出せなかったのだ。
「いや!! 離して!!」
ふと、要は、周りを見渡して誰かに助けを求めようとするが、誰もが翔太の姿を見るなり、目を逸らすだけだった。
「何外見て、ぼーとしてるの?」
そんな要の問いかけに燐は、驚いた様子で振り向いた。
そして、気を取り直した様子で
「ぼーっとしてたんじゃない。外に居る人を観察してたんだ」
燐は、そんな事を言った。要は、とんでもない言い訳をする人物だなぁっと笑いを堪えるの必死だった。だが、燐は、本気でそう思っていた事が後になって解って、要は、戸崎燐と言う人物にとても興味を惹かれたのだ。燐は、人を観察するのが好きな人だった。同級生の輪から一歩退いて、人を観察する。要は、どうして燐がそんな事をするのか最初は、不思議でならなかった。しかし、次第にその理由が要には、理解できるようになっていった。燐は、要と同じ様に他人が羨ましいのだ。他人を観察する燐の瞳は、まるで眩しいものでも見る様な悲しみに満ちている。それが解った時、要は、燐に対して強い親近感を覚えたのだ。
放課後。ようやく最後の授業を終えて、要は、つまらなそうに溜息を吐く。また、一日が終わってしまう。学生の身である要にとって、時間と言うものは、名残惜しいものでもあり、早く過ぎ去って欲しいものでもあった。ただ要にとって不安でならないのは、その大切な時間を無駄に浪費してしまう事。それは、要が時間を無駄に浪費する事しか知らないから。大切な時間を有意義に使う術など、今の要には持ち合わせて居なかった。ほんの小さな希望さえもあれば要は、変われたかもしれなかった。しかし、現実に要の目の前にあるのは、真っ黒な暗闇だけ。このまま大人になってしまえば……自分の未来は、不幸に違いないと確定している事に不安になる。それでも時間は、残酷に時を刻んでいくのだ。要は、席から立ち上がると鞄を提げて教室から出て行く。廊下をゆっくりとしたペースで歩き、階段を下りて一階のロビーへとたどり着いた。
「ん?」
そこで要は、一人の男子生徒が下駄箱の前で自分を見ている事に気がついた。良く見ればその男子生徒は、要のよく知る人物だった。葉月翔太。この学校で彼の名前を知らない人物は居ないほど彼は、有名人だった。それも、成績が優秀だからとか運動できるとか言う方面では、なく……最悪に性質の悪い不良として有名だった。
誰もこの学校で彼に逆らう者は、存在しなかった。逆らえば何をするのか解らないからだ。それほど短気で暴力的で切れやすい性質の不良。しかし、まてよっと要は、葉月翔太に逆らえる人物を一人だけ思い出していた。戸崎燐だ。戸崎燐だけは、彼……葉月翔太に逆らえる事ができる唯一の人物だった。どう言う理由か知らないが戸崎燐に対してだけは、葉月翔太は、かなり消極的な態度を取る。誰にでも突っかかるような態度をとる葉月翔太も戸崎燐の前だけでは、かなり慎重な行動を取ろうとするのだ。まるで何かを警戒している様な感じで不自然な行動を取ろうとする。
金髪の髪に、銀のピアス。はだけたシャツに銀のネックレス。札付きの不良達がする見た目だけでも相手を威嚇する為の装飾を葉月翔太も例にもれずに身に纏っていた。肩で風を切るように歩き、要の方へ歩いてくる。
「よお。 今日は、いい返事を聞かせてくれるんだろうな?」
葉月翔太は、要に息が掛かる距離まで迫るとそう声を掛けてきた。そのまま、翔太は、身を抱きしめる様に要の腰に手を回す。要は、直ぐに翔太の胸を両手で押して、突き放した。
「いい返事って? 何?」
要は、そう言ってとぼけて見せる。実は、要は、この葉月翔太に交際を求められていた。いや、そんな交際を求めると言うような生易しいものではなかった。とても強引で高圧的な態度で「俺の女になれ!」と迫ってきたのだ。正直……要は、葉月翔太が嫌いだった。戸崎燐とは、逆で人を見下す態度は、どうしても好きにはなれない。とは言え……翔太がそう簡単に諦めてくれそうに無い事を要は、解っていた。
「とぼけんなよ! 何度も一緒に寝た仲だろ?」
「なにそれ……あなたは、私の身体を金で買った。 ただ、それだけでしょ? 何勘違いしてんの?」
「勘違いだと? いや、違うな。要、お前のその瞳の中には、激しい憎悪がある。それも俺と同じ類のものだ。同じ類の人間同士仲良くした方が面白いだろ?」
葉月翔太は、そう言って要の心の奥底に眠るある種の感情を挑発してくる。確かに葉月翔太も井原要も同じ類の人間だ。人を好きになる事ができても決して人を愛する事ができない人間。それは、戸崎燐も同じはずで、少し違うのは、燐は、前向きで要は、後ろ向きであり、翔太は、破滅的であると言う点だけである。
「そう言う話なら、理解できるんだけどね。 葉月君の女になると言うのは、嫌!」
「その事については、別に拘っているわけじゃねぇ。 金なら出すぜ。 お前は、金さえ貰えればいいんだろ? だからさ、俺専用になれって言ってんだよ」
葉月翔太は、そう言って再び近づけて要の右手首を左手で掴み、右腕を腰に回してきた。要は、また突き放そうと腕に力を入れたが、今度は、ビクともしなかった。翔太に腕を捕まれて、無理な姿勢では抵抗できるような力が思い通りに出せなかったのだ。
「いや!! 離して!!」
ふと、要は、周りを見渡して誰かに助けを求めようとするが、誰もが翔太の姿を見るなり、目を逸らすだけだった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる