13番目の天使-ソウル・クラッシャー-

きのせ

文字の大きさ
14 / 16

14話:好意

しおりを挟む
 戸崎燐には、友達が居ない。いや、上辺だけの友達は、居るのかもしれない。ただ毎日行動を共にするような気の合う友達が少ないのは、確かな事なのだ。彼は、決して自分から同級生の輪の中に入って行こうとはしない。何時も一歩退いて、後ろからそれを眺めているような人物だった。まるで何かに絶望して、全てを諦めている。最初に彼を見て要の目には、その様に映った。だが、その認識が間違いであると気がつくには、それほどかからなかった。要が戸崎燐と親しくなったのは、ある昼休みの事……ぼーっと窓際の席から外を眺めている燐に要が声を掛けたのがきっかけである。何も無いグランドをただ永遠と眺め続けている燐の姿を見て、要は、思わず声を掛けてしまった。
「何外見て、ぼーとしてるの?」
そんな要の問いかけに燐は、驚いた様子で振り向いた。
そして、気を取り直した様子で
「ぼーっとしてたんじゃない。外に居る人を観察してたんだ」
燐は、そんな事を言った。要は、とんでもない言い訳をする人物だなぁっと笑いを堪えるの必死だった。だが、燐は、本気でそう思っていた事が後になって解って、要は、戸崎燐と言う人物にとても興味を惹かれたのだ。燐は、人を観察するのが好きな人だった。同級生の輪から一歩退いて、人を観察する。要は、どうして燐がそんな事をするのか最初は、不思議でならなかった。しかし、次第にその理由が要には、理解できるようになっていった。燐は、要と同じ様に他人が羨ましいのだ。他人を観察する燐の瞳は、まるで眩しいものでも見る様な悲しみに満ちている。それが解った時、要は、燐に対して強い親近感を覚えたのだ。


 放課後。ようやく最後の授業を終えて、要は、つまらなそうに溜息を吐く。また、一日が終わってしまう。学生の身である要にとって、時間と言うものは、名残惜しいものでもあり、早く過ぎ去って欲しいものでもあった。ただ要にとって不安でならないのは、その大切な時間を無駄に浪費してしまう事。それは、要が時間を無駄に浪費する事しか知らないから。大切な時間を有意義に使う術など、今の要には持ち合わせて居なかった。ほんの小さな希望さえもあれば要は、変われたかもしれなかった。しかし、現実に要の目の前にあるのは、真っ黒な暗闇だけ。このまま大人になってしまえば……自分の未来は、不幸に違いないと確定している事に不安になる。それでも時間は、残酷に時を刻んでいくのだ。要は、席から立ち上がると鞄を提げて教室から出て行く。廊下をゆっくりとしたペースで歩き、階段を下りて一階のロビーへとたどり着いた。
「ん?」
そこで要は、一人の男子生徒が下駄箱の前で自分を見ている事に気がついた。良く見ればその男子生徒は、要のよく知る人物だった。葉月翔太。この学校で彼の名前を知らない人物は居ないほど彼は、有名人だった。それも、成績が優秀だからとか運動できるとか言う方面では、なく……最悪に性質の悪い不良として有名だった。
誰もこの学校で彼に逆らう者は、存在しなかった。逆らえば何をするのか解らないからだ。それほど短気で暴力的で切れやすい性質の不良。しかし、まてよっと要は、葉月翔太に逆らえる人物を一人だけ思い出していた。戸崎燐だ。戸崎燐だけは、彼……葉月翔太に逆らえる事ができる唯一の人物だった。どう言う理由か知らないが戸崎燐に対してだけは、葉月翔太は、かなり消極的な態度を取る。誰にでも突っかかるような態度をとる葉月翔太も戸崎燐の前だけでは、かなり慎重な行動を取ろうとするのだ。まるで何かを警戒している様な感じで不自然な行動を取ろうとする。

 金髪の髪に、銀のピアス。はだけたシャツに銀のネックレス。札付きの不良達がする見た目だけでも相手を威嚇する為の装飾を葉月翔太も例にもれずに身に纏っていた。肩で風を切るように歩き、要の方へ歩いてくる。
「よお。 今日は、いい返事を聞かせてくれるんだろうな?」
 葉月翔太は、要に息が掛かる距離まで迫るとそう声を掛けてきた。そのまま、翔太は、身を抱きしめる様に要の腰に手を回す。要は、直ぐに翔太の胸を両手で押して、突き放した。
「いい返事って? 何?」
要は、そう言ってとぼけて見せる。実は、要は、この葉月翔太に交際を求められていた。いや、そんな交際を求めると言うような生易しいものではなかった。とても強引で高圧的な態度で「俺の女になれ!」と迫ってきたのだ。正直……要は、葉月翔太が嫌いだった。戸崎燐とは、逆で人を見下す態度は、どうしても好きにはなれない。とは言え……翔太がそう簡単に諦めてくれそうに無い事を要は、解っていた。
「とぼけんなよ! 何度も一緒に寝た仲だろ?」
「なにそれ……あなたは、私の身体を金で買った。 ただ、それだけでしょ? 何勘違いしてんの?」
「勘違いだと? いや、違うな。要、お前のその瞳の中には、激しい憎悪がある。それも俺と同じ類のものだ。同じ類の人間同士仲良くした方が面白いだろ?」
葉月翔太は、そう言って要の心の奥底に眠るある種の感情を挑発してくる。確かに葉月翔太も井原要も同じ類の人間だ。人を好きになる事ができても決して人を愛する事ができない人間。それは、戸崎燐も同じはずで、少し違うのは、燐は、前向きで要は、後ろ向きであり、翔太は、破滅的であると言う点だけである。
「そう言う話なら、理解できるんだけどね。 葉月君の女になると言うのは、嫌!」
「その事については、別に拘っているわけじゃねぇ。 金なら出すぜ。 お前は、金さえ貰えればいいんだろ? だからさ、俺専用になれって言ってんだよ」
葉月翔太は、そう言って再び近づけて要の右手首を左手で掴み、右腕を腰に回してきた。要は、また突き放そうと腕に力を入れたが、今度は、ビクともしなかった。翔太に腕を捕まれて、無理な姿勢では抵抗できるような力が思い通りに出せなかったのだ。
「いや!! 離して!!」
ふと、要は、周りを見渡して誰かに助けを求めようとするが、誰もが翔太の姿を見るなり、目を逸らすだけだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

処理中です...