王子様が居ないので、私が王子様になりました。

由紀

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一章~新入生親睦会~

親睦会Ⅳ

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劇が終わるとシンデレラ参加者は素早く制服に着替え、化粧を落として次の準備を始める。劇終了直後に直久に呼び止められたのだが、美景が凄い笑顔で促して来たので直ぐに別れる事となった。

何の話しだったんだろう?おっと、いやいや次の企画の準備をしないと。

流行りのキャラクター物のスタンプを胸ポケットにしまい、制服を整える。メンバーが着替えている間は、シンデレラのナレーション役だった恵の親衛隊隊長 瀬良がルール説明をして時間を繋いでいた。

さあて、そろそろだね。

着替え終わったSクラスメンバーが舞台に並ぶと、また大きな歓声に包まれた。笑みを浮かべると、耳に途切れず聞こえる歓声に内心苦笑しつつ、マイクを手に持つ。瀬良が静かに下がって行くのを横目に、少し歓声も止みやっと口を開いた。

「やあ、親睦会は楽しんで頂けているかな?」

それだけで、甲高い悲鳴が巻き起こる。

「…そう。嬉しいな?ああ、次のスタンプラリーの紙は皆持ったかい?」

瀬良がルール説明をしていた間に生徒達にスタンプラリーの用紙が配られたようで、既に全員が手に持っていた。

千里の声に「はーい!」と元気に返事が返され、軽く頷く。直久は進行役を放棄しているので、そのまま千里が続けた。

「じゃあ、僕からも簡単にルール説明をしようかな?」

そう言うと、横に並ぶ実行委員会メンバーを指差す。

「僕、春宮千里と冬宮直久、桜川恵、秋道寺明日霞が校内の様々な場所に居るから、見つけて全員のスタンプを手に入れる…それだけだよ。」

とは言え、スタンプ用紙には個人の名前があり、代わりに押して貰う等のずるは出来ないようになっている。押して貰う際には難しいクイズを出すので、直ぐに全員のスタンプを貰えないだろう。

「ゴールは体育館、守山智と園原美景が待機しているので、チェックをして貰う。10位以内には豪華商品があるので、お楽しみにね?」

わあああああと嬉しそうな声が沸く。

その他の実行委員会メンバーは、各ポイントで安全面に配慮していく。スタートは、四人が体育館を出た5分後にスタートである。

時計が10時丁度を差し、千里達が体育館を去っていく。その他実行委員会メンバーも居なくなり、あっという間に5分が経過する。時計の針を見て、美景がマイクに向かい声を張り上げた。

「…それでは、スタンプラリーー…スタート!」

美景の言葉で一斉に体育館から生徒全員が勢い良く飛び出して行く。彼の目には、戦闘を切るSクラスメンバーの親衛隊隊長の姿が見えたりしたのである。

(はあ。暇だな。)

一つ溜め息を吐く美景は、同じく暇そうに座り金平糖を食べる守山を目にした。

(彼の家柄的に仲良くして損は無いが、話題も無いし…話しづらいんだよな)

美景は思わず、誰とでも笑顔で接する麗しの方を思い浮かべうっとりとする。

「ふふ、守山君。これから、暇ですね。」 

人好きする笑みを張り付け、とりあえず無難な話題を振っておく。

「…うん。…凄く暇。」

にこりともせずに黙々と金平糖を食べ続ける守山に、美景は仕方なく普通の会話は諦めて世間話に徹する事となったのであった。 

(全く…千里様の親衛隊隊長として、優しい振る舞いをと思っていなければ、無言を貫きたいものを) 

と思う美景とは裏腹に、守山のぼんやりした表情の中では、意外と神妙にある悩みを抱えていたのであった。

(…俺も、名前で呼んで欲しいな)

体育館での静かな一時とは異なり、校舎の中は熱気と喧騒に包まれていた。





冬宮直久はと言うと、裏庭のベンチに腰掛けていた。早速見つけた複数の生徒達が駆け寄り、騒ぎ立てる。

「冬宮様!どうかクイズを!」
「いやいや、最初は僕が!」
「…いえ、私にお願いします!」

騒がしい生徒達に、様子を伺う桐埼は少しハラハラしていたが、直久は足を組み合わせ王者の雰囲気を纏う。

「…順番に相手してやる。黙って並べ、喧しい。」

低くゆっくりと言われれば、生徒達も途端に黙り込んで静静と並んだ。

直久の問題は
『1学年の教師全員の名前』である。
教師に興味の無いこの学園では、かなりの難問になるだろう。





一方…桜川恵は、屋上で親衛隊の用意してくれた長椅子に座り、欠伸を噛み殺していた。 

周囲には正座をして、頭を悩ます生徒達が見られる。

ふと、一人の生徒が手を挙げた。

「はい!えっと、ウサギの様に愛らしいです。」

「脚下。つまらないんだけど。」

恵は冷たく切り捨て、生徒はショボンと項垂れる。

恵の問題は
『桜川恵を満足させる誉め言葉を言う』である。

勿論、普段から絶世の美
形である千里に、様々な美辞麗句を浴びせられ、簡単な誉め言葉では満足出来る訳はないのである。
離れて見ていた瀬良は、少し眉を下げ苦笑いするだけである。





そして、図書館で漫画を片手に、数名の生徒を相手にするのは秋道寺明日霞である。

「じゃあ、君のセックススタイルと、オナニースタイルを言って貰おっか?」

あっけらかんと言う内容は、他人の居る場所では口にしづらい内容である。

相手がそこらの生徒なら「変態!」と罵れようが、Sクラスのイケメンでセフレも多い性にオープンな人物だ。その為、言った内容にも恥じらいも戸惑いも見えない。流石に、問われた生徒は口を閉ざすしか無くなったのであった。





その頃、春宮千里は一階の廊下で窓際に腰掛けていた。一番に自分の所に来たそっくりの二人をじっと見つめる。

「…ああ。君達って」
「「はい、守山様親衛隊隊長です!」」

千里が首を傾げると、揃った言葉で返される。

凄いな。走って来たのに息切れしないんだ。…だから、武闘派なんだっけ。

「じゃあ、問題は『』


千里の問題に、二人は間髪入れずに答えたのだった。



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