私は平凡周りは非凡

由紀

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次男坊と買い物

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機嫌良く隣を歩く弟からなんとなく距離をとる。
それに気付いた慎二は、小首を傾げて距離を縮めて来る。

「何で離れてんの~?」 
…うっせえ。

「…だってあんたの制服目立つじゃん。」

弟は名門中学の制服のイケメン。
隣を歩く私は、自分で言うのも悲しいが平凡だし。遺伝子の馬鹿やろう!

「え~良いじゃん。つうか、姉さん今日可愛いね。」

おお、流石オシャレ男。こういう所は他の弟達とは違うと感じる。

「ん、分かった?パンプスとジャケットだけ買ったんだよね。」
「へぇ~!姉さんって、ピンク似合うよね。可愛いーよ。」

そう言ってにこりと笑う慎二に、由香利は苦笑してしまう。 由香利の家は両親の出張が多く、寂しいだろうと思い幼い弟達の面倒を見ていたのは自分だ。
まあ、隆とは一才しか変わらないのだが。 その為か、今では両親よりも由香利の言う事の方が聞く。

その上、寂しさのせいか弟達から妙に依存?されている気がするのだ。

…もっと放置しとけば良かったかもなぁ。今さら遅いけどね。
そんな事を考えている間に、行き付けのスーパーに着いた。

「…何買うかー。あ…。」

財布の中身を確認していた由香利は動きを止める。

「どーしたの?姉さん。」
「…う、千円しかない。」

千円で何が買えるんだよ、私。
慎二は目を瞬いて、へらりといつもの笑みを浮かべる。

「そうなの?大丈夫。俺結構持ってきたから~。」

…う。なんか情けない。中2に奢らせるなんて!でも家に戻るのは正直面倒臭いので、今日は素直にそれに甘えておく。

「…ごめんよ、慎ちゃん。」
「全然良いよ~!」

次回は財布の確認を胸に、とりあえず昼食を選びながらとりとめのない雑談を続ける。

「…そういや慎、委員会どうなったの?」
「ああ。俺、生徒会庶務だったっしょ?」
「うん。」

庶務って面倒くさそう。むしろ生徒会自体が大変だと思うわー。そんな私は、中学までは放送部やソフトテニスを緩く兼任していましたが。

「うちの中学、役員って指名制じゃん?今度は会長かも。」

は?会長?!って、生徒会の会長って事だよね!

「マジで?!」

うん、と緩く笑う慎二に、由香利は何とも言えない表情を浮かべた。
隆一はバスケ部部長だし。
慎二は生徒会会長。 
まだ帰って来てない、三弥は新入生代表だっけ。 四毅は留学して英語ペラペラだし。
スペックの高い弟達を思い、何か悲しくなってきた由香利である。

「…ジュース何買う?」

内心気落ちしながらも、目は並ぶ商品を物色をしていく。

「俺、炭酸系~姉さんは?」
「…適当に入れて。」
「おっけ~!」

沈む心のまま返事を返す。直ぐにカゴにチャチャッと入れる慎二を見ていると、ポケットの携帯が鳴った。

「…誰?ん?…隆か。みつとしーが帰ったの?慎~!」
「何ぃ?」

先ほど思い出していた三男と四男からのメールを見て、慎二に声を掛けるとのんびり顔を上げている。

「ツインズ帰って来たって!」
「あ、マジ?じゃあ、入学祝いに何か買ってこ!」

由香利も笑みを浮かべて頷いた。やっぱり、気が利く男だなと思う。下の弟二人は今日、揃って入学式である。勿論同じ年だからだが。
普段家に居ない両親も行事関連は参加する。しかし、本人たちに悪気は無いらしいが終えるとすぐに居なくなってしまう。それを知っている慎二は、代わりにお祝いをしようと言ったのだろう。

「ケーキ買う~?」
「んー良いよ。」

夕飯の材料と昼食分を買い、帰路に着く。 荷物はほとんど慎二が持っているので、由香利はのんびり歩いた。

…いやあ、弟って便利だよね。男って本当に力が違うなー。
行きと同じく短い距離の為、直ぐに家に着き荷物を運び込んだ。 

「「ただいま~!」」

慎二は食材を冷蔵庫に手慣れた様子で入れ始め、由香利は居間に入る。居間ではソファーに座る目付きの悪い金髪美少年と、静かに読書をする綺麗な黒髪美少年を見つける。

「…で?入学式どうだった?」

由香利が隣に座った途端、金髪美少年…四男の四毅は由香利の肩に寄り掛かかった。体重は掛けられず、気遣いが感じられる。

「…マジつまらな過ぎた。ちょー眠い。」

そう言って欠伸をする弟の頭を軽く撫でて置く。まあ、不良と呼ばれる四毅が入学式に参加出来ただけでご褒美ものなのだ。

「…そう。で、みつは?」
「………うるさかった。」

そうに、呟く様な小さな声で答えてきた。

…三弥にとっては苦痛だろうなぁ。
三男の三弥は、小さな頃からとても繊細で人見知りだった。特に集団は余計に駄目だ。ほんの少しでも触れられたり、例えば擦れ違ってぶつかったりするだけでも体調を崩してしまう。
まぁ…小さな頃から比べたら、随分改善してきたが。

「…うん。頑張ったね。」

由香利は微笑み、三弥の後ろから頭を撫でる。三弥は他の兄弟なら避けようとするが、由香利からならば平気らしく避けたりしない。

可愛いなぁ…と思いながら、テレビをチラリと見た。
あ…クイズ。I need you…意味?何だっけ?
あまり英語は得意で無いのは自覚している。

「…私は、元気です?」

四毅は一瞬黙り、次いでぼそりと呟いた。

「貴方が必要です…。」

……この帰国子女め!悪意は無いのは分かっているけどさ。

「…どうせ、英語は2だよ!金髪イケメン野郎!」

悪態では無い内容を叫びソファーに突っ伏すと、四毅は身体ごと寄りかかって来た。

「良いじゃねぇか、日本人だし。」
「ペラペラのあんたに言われてもさぁ…。」

眉をしかめた由香利に、四毅はべったり引っ付く。
その外見に反し、末っ子らしく甘えるのは上手である。

「…外国行く時は、俺と行けば良いだろ?」

…きゅん。ヤバい!弟じゃなかったら、告白しそうだった。
台詞にときめくものの、やはり弟であるので可愛さが勝っていた。

「…はいはい。」 

そうして三弥と四毅と話している間に、良い匂いが漂ってきた。うう…お腹空いてきた。

「ご飯出来たよ~!」

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