異世界には男しかいないカッコワライ

由紀

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フィッツとシュタルト

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アンリを抱きしめながら、俺は至極平静を装えていたと思う。従者の子達にはしっかり口止めし、内々に丁寧に書いた手紙を届けさせた。ファビアンにすら伝わらないよう細心の注意を払い、何か聞きたそうなジレスの視線にも笑顔で押し切った。

正直、普通に現役高校生だったら手が出そうになっただろうな。うんうん。

自身の自制心に感謝しつつ、相手からの返事は想像以上に簡潔な物だった。竜騎士団に所属し家の後継者であるから、多忙で時間がかかるかと思っていたが、俺がS級なのとファビアンの夫だということが効いたらしい。
『明日にでも時間を取らせて頂きます。』
季節の挨拶から始まり型通りの冒頭部分、ジレスの事も簡単に含めながらも最後にそう締め括られていた。

…よし、気合入れて行くか。

その夜はアンリの様子を見に行くのみで、ハレムの子とは過ごさずにしっかりと睡眠を摂っておいた。学園を離れるのが寂しい、と元気の無いアンリの姿に此方も悲しくなってしまうのは仕方ない。
普段通りに午前を過ごし、約束の時間となると然りげ無く寮に戻る。年上のタチと会う為、制服では無くあえて正装を身に纏う。


✳︎



「此方でお待ち下さいませ。」

学園の移動紋に待機していたフィッツ家からの使者の案内により、転移したのはフィッツの本家である。とはいえ、俺が会うのはフィッツ家次期当主であり、この度の事は現当主には知らされていない。本来ならば俺とジレスの婚姻の為、フィッツ家当主と俺の父親が先に会って居たのだから。

ファビアンもジレスも、アンリ本人も、フィッツの当主も、俺の家族の誰も知らない顔合わせ。知られていたら、確実に第一 正室ははには止められ叱られ、産みの親には苦笑され心配されただろう。

客間には普段アルフレッドに付いている護衛と、フィッツ家の使用人が控えていた。王族に直接仕える一族の屋敷だけはあり、庶民感覚では立派過ぎる程だ。
柱時計が16時を差したのと同時に、部屋へと一人の人物が足を踏み入れた。敢えて椅子から立ち上がらず、相手の動向を伺う。

「初めまして、私がケール・フィッツです。フィッツ家の三男であり産みの親は第2正室、ジルックェンド連合国竜騎士団の第三隊長も務めております。シュタルト殿にはご足労頂き感謝申し上げる。何か、私個人に話があると伺っておりますが?」

ジレスやアンリとは雰囲気が違うな。まあ、タチとネコの違いもあるだろうけど。
想像ではもう少し横柄だったり、タチにありがちな尊大な姿を想像していたが、どちらかと言えば無機質というか生真面目そうな人物に思えた。というより、何か違和感があるような。

「…此方こそ、時間を取らせて申し訳無い。俺はアルフレッド・シュタルト。シュタルト家の四男で、生みの親は第1側室。学園都市ケラフに通っていて、貴家のジレスを側室に迎えている。」

表面上では穏やかに会話をしながら、相手の腹を探っていく。甘やかされ、大事に育てられているタチならば顔色を探るのは難しくは無い。だが、ケール・フィッツは感情を表に出す性分では無さそうだ。騎士の家系だからか?
お互いに腰を落ち着かせ、とりとめない会話を交わしていく内にケールが使用人を呼び寄せ小声で指示をする。アルフレッドの耳には届かない声量なので、気にせず話を続けていく。
次第に会話の内容に学園での生活についても織り交ぜていくと、相手も学園都市ケラフの出身だと分かり声音にも興が乗ってきた。

「…いや懐かしい。食堂のメニューも私の時代も幅広かったが、フォーランの食材も増えているようですね。」
「ええ…そうそう、食堂で思い出した。昨日食事の前にジレスの元に向かう折、従者達がアンリの様子がおかしいと口にしていたので、気になって見に行ったのだが。」

場も温まった頃、アルフレッドが本題を切り出す。
あくまでフィッツ家の従者に呼ばれたので無く、自らアンリを心配しての判断だと付け加える。自分の弟にあれだけの躾を行えるのなら、従者に罰と称して何をするか分かったものでは無い。

「なるほど。ジレスのみならず、一護衛のアンリを気に掛けて頂きお優しい方だ。」

無感情に放たれた言葉に返事をする間も無く、入室して来たのはワゴンを押す使用人であった。豊富な種類の水差しや瓶やピッチャー…察するに酒類だろう。つまみとして、乾かした魚やナッツ類も用意されている
直ぐにケールとアルフレッドの前にはグラスが置かれ、ジルックェンドで好まれる葡萄に似た果実から造られたワインが注がれる。

「どうぞ、苦手な物がお有りでなければ。」
「…有り難く頂こう。」

ネコに比べて、タチは酒に強い。タチ同士の交流には酒が欠かせないと言われる位には必要だ。俺も12歳を過ぎてから、父の晩酌に自然と誘われていたし、この世界の普通だと理解している。
ケール・フィッツよ。俺が田舎育ちで都会の常識を知らないとでも思ってんのか?初対面で酒を勧めるのはむしろマナー違反なのは、貴族の正室はは達から教わってましたー。

ケールに勧められ、ジルックェンドでの食前挨拶を済ましグラスを掲げる。

「「乾杯」」

こいつ…俺を酔いつぶして煙に巻くつもりだな。



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