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第2話「17回目のお見合い、相手はドS王子?」
「お嬢様、お茶はいかがでしょう?」
見合い当日の朝、アリスが入念に仕立て上げたドレスの裾を整えながら声をかけてくる。私は鏡に映る自分をじっと見つめていた。
「ドレス……派手じゃない?」
「いえ、これくらいがちょうど良いのです。ロイ王子とのお見合いとなると、注目を集めることは必至ですから」
「ふうん……」
私は小さく答え、椅子に腰かけて足を組む。黒髪に飾りをつけられるのは苦手だけど、今日だけは仕方ない。アリスの手際は良いし、全てを任せてしまうことにした。
「ドSってどんな感じなんだろう?」
ぽつりと呟いてみると、アリスが笑みをこぼす。
「さあ、実際に会ってみなければわかりませんが……お嬢様がその気になれば、相手も手玉に取れるかもしれませんよ?」
「私にそんな芸当は無理かと」
するとアリスは「そんなことはありません」と言いかけたが、ちょうどタイミングを測ったようにドアがノックされた。執事の声が聞こえる。
「お嬢様、そろそろ馬車の準備が整いました」
「……わかった」
重い腰を上げて部屋を出ると、父とセレナが揃って待っていた。父は落ち着かなそうにマントを整え、セレナは「頑張って」と言わんばかりにウインクしてくる。私は無言で会釈をした。
やがて馬車に乗り込んで向かった先は、有名な迎賓館。そこには王族や大貴族が利用する特別なサロンがある。石造りの重厚なドアが開くと、中には金色のシャンデリアが煌めいていた。
「……きれい」
思わずそうこぼすと、父が安心したように微笑む。私が何を考えているかわかりにくいと言われるけれど、意外と父は察してくれる。
「では、シルヴィア。奥の部屋で待っていなさい。王子はもう間もなく来るとのことだ」
「……わかった」
応接室に通されると、私はソファに深く腰掛けた。華やかな花が飾られている部屋なのに、あくびが込み上げて仕方ない。いつも以上に緊張しているからかもしれない。
「失礼する」
低く落ち着いた声がした。振り向くと、そこには長身で威圧感のある男性……ロイ王子が立っている。鋭い金色の瞳と引き締まった表情。噂どおりの冷酷な雰囲気……しかし、その唇にはごく僅かな笑みが浮かんでいた。
「はじめまして、ロイ・ヴェルディーンと申します」
「……はじめまして。シルヴィア・グレイメリアです」
ぎこちなく頭を下げる私に、ロイ王子は歩み寄ってくる。そして意外なほど穏やかな声音で口を開いた。
「眠そうだね。俺との見合いがそんなに退屈?」
「……っ」
驚いた。挨拶もそこそこに、いきなり核心をついてくる。私は咄嗟に言い返す言葉を失う。ロイ王子はそんな私を見下ろして、クスリと笑った。
「まあいい。ゆっくり話そうか、シルヴィア嬢」
まるで試すような視線を向けられて、胸がざわつく。でも、断言できることがある。今までの見合い相手とは全く違う。これは厄介な相手に当たってしまった……そんな予感がしてならなかった。
見合い当日の朝、アリスが入念に仕立て上げたドレスの裾を整えながら声をかけてくる。私は鏡に映る自分をじっと見つめていた。
「ドレス……派手じゃない?」
「いえ、これくらいがちょうど良いのです。ロイ王子とのお見合いとなると、注目を集めることは必至ですから」
「ふうん……」
私は小さく答え、椅子に腰かけて足を組む。黒髪に飾りをつけられるのは苦手だけど、今日だけは仕方ない。アリスの手際は良いし、全てを任せてしまうことにした。
「ドSってどんな感じなんだろう?」
ぽつりと呟いてみると、アリスが笑みをこぼす。
「さあ、実際に会ってみなければわかりませんが……お嬢様がその気になれば、相手も手玉に取れるかもしれませんよ?」
「私にそんな芸当は無理かと」
するとアリスは「そんなことはありません」と言いかけたが、ちょうどタイミングを測ったようにドアがノックされた。執事の声が聞こえる。
「お嬢様、そろそろ馬車の準備が整いました」
「……わかった」
重い腰を上げて部屋を出ると、父とセレナが揃って待っていた。父は落ち着かなそうにマントを整え、セレナは「頑張って」と言わんばかりにウインクしてくる。私は無言で会釈をした。
やがて馬車に乗り込んで向かった先は、有名な迎賓館。そこには王族や大貴族が利用する特別なサロンがある。石造りの重厚なドアが開くと、中には金色のシャンデリアが煌めいていた。
「……きれい」
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「では、シルヴィア。奥の部屋で待っていなさい。王子はもう間もなく来るとのことだ」
「……わかった」
応接室に通されると、私はソファに深く腰掛けた。華やかな花が飾られている部屋なのに、あくびが込み上げて仕方ない。いつも以上に緊張しているからかもしれない。
「失礼する」
低く落ち着いた声がした。振り向くと、そこには長身で威圧感のある男性……ロイ王子が立っている。鋭い金色の瞳と引き締まった表情。噂どおりの冷酷な雰囲気……しかし、その唇にはごく僅かな笑みが浮かんでいた。
「はじめまして、ロイ・ヴェルディーンと申します」
「……はじめまして。シルヴィア・グレイメリアです」
ぎこちなく頭を下げる私に、ロイ王子は歩み寄ってくる。そして意外なほど穏やかな声音で口を開いた。
「眠そうだね。俺との見合いがそんなに退屈?」
「……っ」
驚いた。挨拶もそこそこに、いきなり核心をついてくる。私は咄嗟に言い返す言葉を失う。ロイ王子はそんな私を見下ろして、クスリと笑った。
「まあいい。ゆっくり話そうか、シルヴィア嬢」
まるで試すような視線を向けられて、胸がざわつく。でも、断言できることがある。今までの見合い相手とは全く違う。これは厄介な相手に当たってしまった……そんな予感がしてならなかった。
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