16 / 50
第16話「舞踏会の予告、リリアンの陰謀」
「近々、宮廷で大きな舞踏会が開かれるそうですよ。王妃様が主催なさるそうで」
翌朝、アリスからそんな知らせを聞いた。晩餐会の翌日、私は公爵家に帰宅して少し気が抜けていたところだったが、再び落ち着かない気分になる。
「舞踏会か……大規模だと疲れそうだな」
お茶会や晩餐会のような少人数ならまだしも、王妃が主催するとなれば上流貴族や他国の要人まで多数集まるはず。私みたいに眠そうな令嬢がうろついていたら、悪い噂をまた増やされそうで気が重い。
「お嬢様もご参加なさるのでは?お父様が『今回こそ社交界デビューをきちんとしなくては』と仰っておりましたよ」
「……そうくると思った」
アリスの言葉に私はひとつ深く息をつく。避けられない大きな行事。そこにロイ王子も当然出席するだろうし、また翻弄されるのだろうか。
「まあ、姉上と一緒に参加するなら……少しは気が楽かも」
そう自分を励ましていると、セレナが部屋に入ってきた。
「シルヴィア、舞踏会のドレスを新調するって聞いたけど、どんなデザインにするの?」
「まだ何も決めてないよ。寝間着みたいに楽なのがいい」
真顔で言う私に、セレナは吹き出す。
「だめよ。さすがに王妃様の舞踏会だもの。ちゃんと着飾らないと。……そういえば、リリアン・ノースバレーって令嬢が参加するらしいから、一応気をつけてね」
「リリアン?……なんか聞いたことあるような」
「前に公爵家のパーティでも顔を合わせたでしょう?あなたの悪い噂を広めてる筆頭候補よ。ロイ王子との縁談も狙ってたって話」
セレナの言葉に、私は嫌な予感がした。悪役令嬢と揶揄される私は、特にこういう悪意の持ち主の標的になりやすい。リリアンが今回も妨害してくる可能性は高い。
「面倒だな……」
本音を漏らすと、セレナは同情気味にうなずく。
「そうよね。でもロイ王子がいてくれるなら、何かあってもフォローしてくれるかもしれないわ」
「……王子に助けてもらうのも複雑な気分」
そうぼやくと、セレナは「そんな強がり言わなくても」と微笑む。私自身、ロイ王子がいるだけで安心してしまう部分があるのは否定できない。
そして数日後、舞踏会当日がやってくる。城内は美しく装飾され、豪華な音楽が響き渡る。セレナと私、そして父がそれぞれの衣装を纏い、馬車で王宮に到着した。
「思ったより人が多い……」
入場の列に並びながら、私はその華やかさに圧倒される。誰もが煌びやかなドレスやタキシードに身を包み、笑顔で会話を弾ませている。おそらく、王太子や王妃様も顔を見せるのだろう。
「シルヴィア、こちらへ。……緊張するな」
聞き慣れた声がして振り向くと、ロイ王子がいつの間にか私たちに近づいていた。私の顔を見るなり軽く片眉を上げ、「ちゃんと着飾ってるじゃないか」と揶揄するように言う。
「ま、まあ。今日は舞踏会だし」
「いいじゃないか。いつもと違って華やかな姿だ。……気に入った」
ストレートな称賛に慣れていない私は、もうどう反応していいかわからない。セレナが面白そうに笑っているのを横目で捉えつつ、私は視線をそらす。
しかし、そのときふと遠くで笑みを浮かべるリリアンらしき姿が見えた。彼女もまた華やかなドレスを纏い、周囲と談笑している。その目がちらりと私のほうを睨んだ気がして、背筋が薄ら寒くなる。
果たして今夜、どんな陰謀が待っているのだろうか。ロイ王子の存在に頼りきりではいけないとは思いつつ、私はまたその金色の瞳に救いを求めてしまうかもしれない。
翌朝、アリスからそんな知らせを聞いた。晩餐会の翌日、私は公爵家に帰宅して少し気が抜けていたところだったが、再び落ち着かない気分になる。
「舞踏会か……大規模だと疲れそうだな」
お茶会や晩餐会のような少人数ならまだしも、王妃が主催するとなれば上流貴族や他国の要人まで多数集まるはず。私みたいに眠そうな令嬢がうろついていたら、悪い噂をまた増やされそうで気が重い。
「お嬢様もご参加なさるのでは?お父様が『今回こそ社交界デビューをきちんとしなくては』と仰っておりましたよ」
「……そうくると思った」
アリスの言葉に私はひとつ深く息をつく。避けられない大きな行事。そこにロイ王子も当然出席するだろうし、また翻弄されるのだろうか。
「まあ、姉上と一緒に参加するなら……少しは気が楽かも」
そう自分を励ましていると、セレナが部屋に入ってきた。
「シルヴィア、舞踏会のドレスを新調するって聞いたけど、どんなデザインにするの?」
「まだ何も決めてないよ。寝間着みたいに楽なのがいい」
真顔で言う私に、セレナは吹き出す。
「だめよ。さすがに王妃様の舞踏会だもの。ちゃんと着飾らないと。……そういえば、リリアン・ノースバレーって令嬢が参加するらしいから、一応気をつけてね」
「リリアン?……なんか聞いたことあるような」
「前に公爵家のパーティでも顔を合わせたでしょう?あなたの悪い噂を広めてる筆頭候補よ。ロイ王子との縁談も狙ってたって話」
セレナの言葉に、私は嫌な予感がした。悪役令嬢と揶揄される私は、特にこういう悪意の持ち主の標的になりやすい。リリアンが今回も妨害してくる可能性は高い。
「面倒だな……」
本音を漏らすと、セレナは同情気味にうなずく。
「そうよね。でもロイ王子がいてくれるなら、何かあってもフォローしてくれるかもしれないわ」
「……王子に助けてもらうのも複雑な気分」
そうぼやくと、セレナは「そんな強がり言わなくても」と微笑む。私自身、ロイ王子がいるだけで安心してしまう部分があるのは否定できない。
そして数日後、舞踏会当日がやってくる。城内は美しく装飾され、豪華な音楽が響き渡る。セレナと私、そして父がそれぞれの衣装を纏い、馬車で王宮に到着した。
「思ったより人が多い……」
入場の列に並びながら、私はその華やかさに圧倒される。誰もが煌びやかなドレスやタキシードに身を包み、笑顔で会話を弾ませている。おそらく、王太子や王妃様も顔を見せるのだろう。
「シルヴィア、こちらへ。……緊張するな」
聞き慣れた声がして振り向くと、ロイ王子がいつの間にか私たちに近づいていた。私の顔を見るなり軽く片眉を上げ、「ちゃんと着飾ってるじゃないか」と揶揄するように言う。
「ま、まあ。今日は舞踏会だし」
「いいじゃないか。いつもと違って華やかな姿だ。……気に入った」
ストレートな称賛に慣れていない私は、もうどう反応していいかわからない。セレナが面白そうに笑っているのを横目で捉えつつ、私は視線をそらす。
しかし、そのときふと遠くで笑みを浮かべるリリアンらしき姿が見えた。彼女もまた華やかなドレスを纏い、周囲と談笑している。その目がちらりと私のほうを睨んだ気がして、背筋が薄ら寒くなる。
果たして今夜、どんな陰謀が待っているのだろうか。ロイ王子の存在に頼りきりではいけないとは思いつつ、私はまたその金色の瞳に救いを求めてしまうかもしれない。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
悪役令嬢のはずですが、年上王子が幼い頃から私を甘やかす気でいました
ria_alphapolis
恋愛
私は、悪役令嬢なのかもしれない。
王子の婚約者としては少し我儘で、周囲からは気が強いと思われている――
そんな自分に気づいた日から、私は“断罪される未来”を恐れるようになった。
婚約者である年上の王子は、今日も変わらず優しい。
けれどその優しさが、義務なのか、同情なのか、私にはわからない。
距離を取ろうとする私と、何も言わずに見守る王子。
両思いなのに、想いはすれ違っていく。
けれど彼は知っている。
五歳下の婚約者が「我儘だ」と言われていた幼い頃から、
そのすべてが可愛くて仕方なかったことを。
――我儘でいい。
そう決めたのは、ずっと昔のことだった。
悪役令嬢だと勘違いしている少女と、
溺愛を隠し続ける年上王子の、すれ違い恋愛ファンタジー。
※溺愛保証/王子視点あり/幼少期エピソードあり
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!