【完結】【R18】断り続けた見合い『まさか17回目で捕まるなんて……』

えるろって

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第16話「舞踏会の予告、リリアンの陰謀」

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「近々、宮廷で大きな舞踏会が開かれるそうですよ。王妃様が主催なさるそうで」

翌朝、アリスからそんな知らせを聞いた。晩餐会の翌日、私は公爵家に帰宅して少し気が抜けていたところだったが、再び落ち着かない気分になる。

「舞踏会か……大規模だと疲れそうだな」

お茶会や晩餐会のような少人数ならまだしも、王妃が主催するとなれば上流貴族や他国の要人まで多数集まるはず。私みたいに眠そうな令嬢がうろついていたら、悪い噂をまた増やされそうで気が重い。

「お嬢様もご参加なさるのでは?お父様が『今回こそ社交界デビューをきちんとしなくては』と仰っておりましたよ」

「……そうくると思った」

アリスの言葉に私はひとつ深く息をつく。避けられない大きな行事。そこにロイ王子も当然出席するだろうし、また翻弄されるのだろうか。

「まあ、姉上と一緒に参加するなら……少しは気が楽かも」

そう自分を励ましていると、セレナが部屋に入ってきた。

「シルヴィア、舞踏会のドレスを新調するって聞いたけど、どんなデザインにするの?」

「まだ何も決めてないよ。寝間着みたいに楽なのがいい」

真顔で言う私に、セレナは吹き出す。

「だめよ。さすがに王妃様の舞踏会だもの。ちゃんと着飾らないと。……そういえば、リリアン・ノースバレーって令嬢が参加するらしいから、一応気をつけてね」

「リリアン?……なんか聞いたことあるような」

「前に公爵家のパーティでも顔を合わせたでしょう?あなたの悪い噂を広めてる筆頭候補よ。ロイ王子との縁談も狙ってたって話」

セレナの言葉に、私は嫌な予感がした。悪役令嬢と揶揄される私は、特にこういう悪意の持ち主の標的になりやすい。リリアンが今回も妨害してくる可能性は高い。

「面倒だな……」

本音を漏らすと、セレナは同情気味にうなずく。

「そうよね。でもロイ王子がいてくれるなら、何かあってもフォローしてくれるかもしれないわ」

「……王子に助けてもらうのも複雑な気分」

そうぼやくと、セレナは「そんな強がり言わなくても」と微笑む。私自身、ロイ王子がいるだけで安心してしまう部分があるのは否定できない。

そして数日後、舞踏会当日がやってくる。城内は美しく装飾され、豪華な音楽が響き渡る。セレナと私、そして父がそれぞれの衣装を纏い、馬車で王宮に到着した。

「思ったより人が多い……」

入場の列に並びながら、私はその華やかさに圧倒される。誰もが煌びやかなドレスやタキシードに身を包み、笑顔で会話を弾ませている。おそらく、王太子や王妃様も顔を見せるのだろう。

「シルヴィア、こちらへ。……緊張するな」

聞き慣れた声がして振り向くと、ロイ王子がいつの間にか私たちに近づいていた。私の顔を見るなり軽く片眉を上げ、「ちゃんと着飾ってるじゃないか」と揶揄するように言う。

「ま、まあ。今日は舞踏会だし」

「いいじゃないか。いつもと違って華やかな姿だ。……気に入った」

ストレートな称賛に慣れていない私は、もうどう反応していいかわからない。セレナが面白そうに笑っているのを横目で捉えつつ、私は視線をそらす。

しかし、そのときふと遠くで笑みを浮かべるリリアンらしき姿が見えた。彼女もまた華やかなドレスを纏い、周囲と談笑している。その目がちらりと私のほうを睨んだ気がして、背筋が薄ら寒くなる。

果たして今夜、どんな陰謀が待っているのだろうか。ロイ王子の存在に頼りきりではいけないとは思いつつ、私はまたその金色の瞳に救いを求めてしまうかもしれない。
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