【完結】【R18】断り続けた見合い『まさか17回目で捕まるなんて……』

えるろって

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第22話「ロイ王子の探り、噂の出どころを追う」

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「シルヴィア嬢、ちょっとよろしいかな」

翌日、王都の一角にある文官の館に用があるという父に付き添って出かけていた私。そこで偶然ロイ王子と出くわした。いや、偶然というよりは、わざわざ私を待っていたようにも見える。

「ロイ王子……どうしてここに?」

私が問いかけると、王子は淡々と口を開く。

「手がかりを探している。おまえに関する噂を流している輩を見つけたくてな」

「噂……」

突然踏み込んだ話題にドキリとする。王子は何も言わずに私の腕を取り、館の一角へと促してくる。人目がない場所をわざわざ選んでいるらしく、やや強引だ。

「噂の出どころは、どうやらノースバレー伯爵家周辺らしい。リリアンの父親が裏で糸を引いている可能性もある。……本当かどうか、俺は確認したい」

「そこまで調べてるんですか……」

あまりにも熱心すぎて、私は唖然としてしまう。王子は私の反応をじっと見つめると、少しだけ小声を落として続ける。

「“悪役令嬢”などと呼ばれて、本当に困っているのはおまえのほうだろう?なら、俺ができる限り排除してやる。……それで迷惑か?」

「迷惑なんて……そんなことはないです。むしろ、そこまでしてくれるなんて思わなかった」

自分のことのように憤り、解決しようとしてくれる人がいる。それは初めての経験だ。王子は表情を変えず、ただ軽くうなずく。

「いいか。近いうちにリリアンやその周りと話す場を設けるつもりだ。おまえも同席してくれ。……隠し事があるなら今のうちに言ってほしい」

「隠し事なんてないです。ただ……私自身がきちんと話していなかったのは事実。いろいろ誤解されても放置してきたから」

「それなら、おまえの口から説明すればいい。……俺はそれで十分納得するし、おまえのために動ける」

ロイ王子の瞳が、真剣に私を映している。その視線から逃れられず、私はこくりと頷く。胸の奥が熱くなり、妙に息苦しいくらいだ。

「……ありがとう」

素直にそう告げると、王子は少しだけ表情を緩めた。そして腕の力をゆるめて、私に向き直る。

「では、日程が決まったらまた連絡する。……シルヴィア、おまえは逃げるなよ」

「逃げません。今回は私も……自分の言葉でちゃんと話します」

ロイ王子は「いい子だ」とばかりに小さく笑い、私の肩を軽く叩いて足早に去っていく。いつもながら言動は強引だけれど、その根底には確かな優しさがあると知った今では、むしろ心強く感じてしまう。

振り返ってみれば、私はずっと噂を放置してきた。それで平穏に過ごせるならと、下手に騒ぎを大きくしたくなかったのだ。でも、そのせいで誰かが私をかばってくれることもなく、孤立したままでいた。

「ロイ王子がここまで動いてくれるなら、私も向き合わないと……」

廊下の壁に寄りかかり、少しだけ深呼吸をする。いつの間にか、ロイ王子のやり方に巻き込まれながらも、私自身も変わろうとしているのかもしれない。そんな思いが心の底で膨らみ始めていた。
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