【完結】【R18】断り続けた見合い『まさか17回目で捕まるなんて……』

えるろって

文字の大きさ
23 / 50

第23話「リリアンの再度の策動、呼び出しの誘い」

しおりを挟む
「シルヴィア様、こちらを」

アリスが手渡してくれたのは、薔薇の飾りが施された奇妙に豪華な封筒だった。差出人には“リリアン・ノースバレー”とある。開けてみると、そこには短い文章で「お話したいことがあります。明日の昼下がり、王都のサロンにてお待ちしています」と書かれていた。

「……なんで私がわざわざリリアンに会わなきゃいけないの」

思わず呟くと、アリスは神妙な面持ちで首をかしげる。

「差出人の事情はわかりませんが、警戒は必要かと。お嬢様お一人では行かないほうがいいのでは?」

「そうよね……でも、リリアンが直接私に呼び出しをかけてくるなんて珍しい。何を企んでるんだろう」

できれば無視したい気持ちもある。でも、ロイ王子が噂の出どころを探っている今、リリアンと話をするのもひとつの機会かもしれない。もしかすると彼女は何か隠し事を抱えていて、それを餌に私を陥れる気なのだろうか。

「シルヴィア、ちょうどよかった」

そこへセレナが部屋へやってきて、私が封筒を持っているのを見て軽く首をのばした。

「その手紙、リリアンから?」

「そう。明日サロンに来てほしいって」

セレナは小さく息を吐き、即答する。

「私もついて行くわ。二人きりで会ったら、どんな罠があるかわからない」

「うん……ありがとう。アリスも一緒に来てくれる?」

アリスは穏やかにうなずき、「もちろんです」と言う。こうなれば、リリアンが用意しているのが罠でも何とか対処できるかもしれない。心強い味方がいる。

しかし、翌日の朝。グレイメリア家に急用が入り、セレナがそちらへ駆けつけなければならなくなった。父も同様に出かけるらしく、私とアリスだけで会いに行くしかない状況になる。

「すみませんお嬢様、私もセレナお嬢様の用事に呼ばれてしまいました。先方の館に必要な資料を運ばねばならないらしくて……」

アリスまでもが急な用事で同行できなくなったと聞いたとき、私は天を仰いだ。まさにリリアンの思惑どおり、私を一人にしようと何か手を回したのかもしれない。

「行きたくないな……」

それでも、ここで逃げては何も始まらない。ロイ王子のことを思い浮かべれば、これも自分から動くチャンスだと気合を入れ直すしかない。私は仕方なく一人でサロンへ出向くことを決めた。

当日、王都の中心にある高級サロンは華やかだが、リリアンは予約を取っていたのか奥の個室で待っていた。扉を開けると、彼女はにこやかな笑みを浮かべて迎える。

「よく来てくれたのね、シルヴィア。あなたとはゆっくり話したことがなかったから嬉しいわ」

「……そう。で、話って何?」

素っ気なく返す私に、リリアンはわざとらしく頬に手を添えて微笑む。その表情の裏には、どうにも不穏な気配を感じる。

「あなたも分かってるでしょ。私がロイ殿下との縁談を望んでいたのに、邪魔が入ったっていうこと」

「邪魔……?私が邪魔してるわけじゃないでしょ。王子が自分で決めてるだけ」

リリアンの言いがかりに、私は眉をしかめる。だが、彼女は動じずにカップを持ち上げ紅茶をすすった。

「あなたの噂を聞いて、殿下は面白がってるのかしら。……でも、そんな関係長くは続かないと思わない?」

軽薄な笑みと挑発的な言葉。いよいよ嫌な予感が強まる。私はテーブルに手を置いて、彼女を見据えた。

「何が言いたいの?」

「あなたが自分の意思で王子から身を引けば、余計な争いは起きないわよ。お互いに……そう思わない?」

リリアンの口から放たれる言葉は、まるで私を脅すようだった。果たしてこの誘いにどんな策略があるのか。心臓が早鐘を打ち始めながら、私は彼女の真意を探ろうと身構える。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

処理中です...