【完結】「婚約破棄ですか?分かりました」おしまい?

えるろって

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想いと決意

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翌朝。シャーベット家の広間では、アリスの父グラントが使用人を集め、何やら指示を出していた。最近の来客増加に伴い、アリス周辺の警護を強化するためらしい。  
その指示の一環で、エリック・ハリスンが正式に“アリスの護衛役”として通達されることになった。

「エリック・ハリスン。お前にはいろいろ世話になっているが、改めて娘を頼みたい。今、周囲が騒がしいからな」

「はい、グラント様。俺がしっかりとアリスをお守りいたします」

エリックはきりりと頷く。内心では「これで堂々とアリスに近づける」とほっとする気持ちもあるが、護衛としての責任も重大だ。子爵家やら男爵家やら、さらにクライヴという強力な存在もいる。どんな波乱が起きるか分かったものではない。  
グラントはエリックに伝えるべき事項を一通り終えると、最後に念押しするように言った。

「もしアリスが望まない求婚や訪問があれば、まずは私に知らせてくれ。その上で必要なら、正式にお断りする。アリスは自分で口にしないことも多いから、お前が代弁してやってほしい」

「了解しました。アリスの気持ちを大切にしながら、できる範囲でフォローいたします」

そう答えるエリックの表情には決意が宿っている。グラントは「頼んだぞ」と力強く頷き、階下へ足早に去っていった。  
その後、エリックはアリスがいる庭園へと向かった。護衛が公認された以上、これまで以上にそばに寄り添う必要がある。アリスが「鬱陶しい」と思わなければいいが――と少しだけ不安も抱えている。

「アリス、今いいか?」

「エリック……うん、何です?」

アリスは庭の花壇の前で立ち止まっていた。朝露に濡れる花弁を眺めている。相変わらずの眠たげな瞳だが、どこか穏やかな輝きが見える気がする。  
エリックはアリスのそばまで歩み寄り、護衛役を正式に命じられたことを伝える。

「これからは、前よりももっとお前の傍について、お前のために動くことになる」

「前から傍にいてくれてるけど、さらに……ですか。わたし、迷惑かけちゃわないかな」

「何言ってるんだ。俺はアリスを守りたいからやってるんだ。迷惑なんて思うわけない」

エリックは力強く言い切る。アリスはふっと笑顔になり、花壇から視線を外して彼を見た。

「ありがとう、エリック。いつも守ってくれて……。父様もあなたを信頼してるし、わたしも頼りにしてます」

「……そう言われるとこっちが照れるな」

エリックは頬を赤らめながら、鞘に収めた剣の柄に手をやる。これはまだ騎士見習い用の剣だが、護衛としては十分役に立つだろう。  
アリスが花壇を離れてテラスの方へ歩き出すと、エリックはその後ろをついていく。するとアリスが小さく声を落として呟いた。

「クライヴさま、昨日、改めてわたしと話したいっておっしゃったんです。エリックは……どう思いますか?」

「……正直、いい気はしない。あいつはお前を婚約破棄したくせに、今さら何だって思う」

素直な本音がこぼれた。アリスはそんなエリックを見て、「そうですよね……」と少しだけ苦笑いする。  
エリックは決意を新たにするように、まっすぐアリスを見据える。

「でも、お前が望むなら止めはしない。今の俺の役目は、お前の気持ちを支えることだからな。クライヴがどんな意図で戻ってこようと、お前に不利益があるなら容赦しない」

「エリック……」

アリスはその言葉を聞いて、胸の奥に温かいものを感じる。自分を守ろうとしてくれる人がいるという安心感。それと同時に、エリックの強い視線が少しだけ照れくさい。  
アリスが小さく息を整えると、庭の奥から侍女が走ってきた。何やら慌ただしい様子だ。二人は顔を見合わせ、待機する。

「ア、アリスお嬢様! クライヴ様が今、門の外に……!」

「え……もういらしたんですか?」

「はい、急に。『お嬢様に一目お会いしたい』と……。ご両親はまだ外出中ですし、どうなさいますか?」

アリスは迷いながらも、エリックに視線を送る。エリックは小さく頷くと、アリスが「会いたい」と言うなら止めない構えだ。  
しばし考えた末、アリスは決心したように口を開く。

「……わかりました。応接室へお通しください。わたしもすぐ行きます」

侍女は「かしこまりました」と頭を下げ、再び走って戻っていく。エリックはアリスの後ろに立ち、護衛として同行しようとする。

「俺もついていく。いいな?」

「はい……お願いします」

こうしてアリスとエリックは、クライヴを迎えるために屋敷へ戻っていった。昨日の“あの会話”の続き。クライヴは果たして何を伝えに来たのか。アリスの胸は、いつになく高揚とも不安ともつかない感情にざわめいている。  
エリックはその横顔を見つめ、内心で決意する。自分はアリスを守る。その気持ちに、もう迷いはない――と。
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