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「アリス、ついに深夜の茶会をやるのね? しかもクライヴさまとエリックも参加……最高じゃない!」
数日後、アリスの部屋でフローレンスが興奮気味に声を上げる。アリスは赤面しながら枕に顔を埋める勢いで「恥ずかしいからあんまり大きな声を出さないで」と懇願する。
「だって、こんな面白いイベント、社交界でも聞いたことないわよ。深夜にお菓子作りとお茶会って、完全に非日常じゃない」
「フローレンス……だからわたしは“寝るのが嫌い”っていうわけで、普段から夜中にクッキー作ってるだけで……」
「そこが魅力なのよ。クライヴさまだって本気でお忍び訪問するんでしょ? しかもエリックは護衛兼参加者。もう何これ、あんたのハーレムじょうたいじゃないの?」
アリスは「ハーレムって……」と困惑しつつも、フローレンスが賛成してくれたことで心強い。フローレンス自身もこの夜会に招待される形となり、最低限の証人として参加する。
エリックとアリスとグラントで決めた日程は一週間後の深夜。フローレンスには事前に「絶対に秘密厳守」と誓わせ、クライヴにも当日の入邸方法を手紙で伝える――馬車を使わず、特別ルートから敷地に入り、応接室を経由せずに厨房へ直行、などなど。
フローレンスは「なんだかスパイ映画みたいじゃない?」と笑いを誘うが、アリスとしては興味深くとも緊張が増すばかりだ。
「わたし、寝るの嫌いだけど、こんなに動悸が激しいのは初めて。……本当に大丈夫かなあ」
「大丈夫よ。エリックがいるし、お父様も認めてるし。クライヴさまだって仕事が忙しいのに、その日の夜はしっかり時間を空けるって言ってるでしょ?」
「そう……手紙にそう書いてました。兄上さまには“少し夜遅く帰る”と伝えるとか……迷惑にならないかな」
アリスは不安を隠せないが、フローレンスは「むしろクライヴさまが楽しみにしてるわよ」と手を叩く。夜会でアリスの夜を共有することにワクワクしている、という風の噂もあるらしい。
「クライヴさま、けっこうアリスに夢中みたいだから、変に気を遣わず任せていいのよ。あんたは自分らしく“寝るのが嫌いな夜”を楽しめばいいわ」
「ふぁ……わたしらしく、ですか。クッキー作りとお茶だけじゃ退屈しないか心配だけど……」
「クライヴさまだって初体験でしょ? 夜中にシャーベット家でクッキーとか。むしろ興味津々よ」
フローレンスはケラケラ笑いながら、テーブルに置かれたレシピ本を眺める。「せっかくだから新しいクッキーの味に挑戦してみたら?」と提案する。アリスは「どんなフレーバーがいいかな」と本をぱらぱら捲り、興味を示す。
「レモンピールを入れたさっぱり系とか、スパイスを少し入れてオトナっぽくするとか……いつものチョコや抹茶とは違った味に挑戦するのもいいかもしれない」
「そうそう! クライヴさまの新鮮なリアクションも見れるし、エリックだって『お前、そんなの作るのか』って驚くかも」
アリスは妄想を膨らませ、「たしかにやってみたい」と笑みを浮かべる。寝るのが嫌いな時間を、まさに自分の新たな楽しみに変える計画――フローレンスのあざとい後押しが効いている。
一方で、エリックがそれをどう受け止めるのか、クライヴとの仲がどうなるのかは不透明だ。あまり深く考えすぎると動けなくなるので、アリスは当日まではクッキーの新レシピを研究して過ごすことにした。
「それにしてもフローレンス、あなたは本当にこの夜会に参加してくれるんですか? 深夜にわたしの家へ来るなんて、大変じゃありません?」
「当たり前じゃない。こんな面白い行事、見逃すわけないわ。あんたが寝るの嫌いだけど夜をどう過ごしてるか、この目でしっかり確かめるんだから」
「そ、そうですか……。じゃあ四人ですね。わたしとエリック、クライヴさまとフローレンス。朝までになんとか終わるといいけど」
フローレンスは「余裕余裕」と手を振るが、内心は「朝までクッキー作りするんだろうか?」と笑いが止まらない。どんなハプニングが起きるか想像するとワクワクして仕方ないのだろう。
アリスは軽く伸びをして、「ふぁ……」とあくびのような息を漏らす。「寝るのが嫌いだけど、当日までに体力を温存しなきゃ」と自分でも思う。昼間はしっかり食事と休憩を取り、夜更かしに備えるライフスタイルを確立しようと考え始める。
(これって、わたしが“寝るの嫌い”を克服しているのか、それともさらに夜更かしを極めてるだけなのか……どっちなんだろう)
不思議な疑問を抱えつつも、アリスは楽しみに胸を弾ませる。夜が苦手でもあるのに、今は夜が待ち遠しい。寝るのが嫌いだからこそ、深夜に活動できる喜びをクライヴに伝えたい――そんな気持ちが、アリスの瞳を輝かせていた。
数日後、アリスの部屋でフローレンスが興奮気味に声を上げる。アリスは赤面しながら枕に顔を埋める勢いで「恥ずかしいからあんまり大きな声を出さないで」と懇願する。
「だって、こんな面白いイベント、社交界でも聞いたことないわよ。深夜にお菓子作りとお茶会って、完全に非日常じゃない」
「フローレンス……だからわたしは“寝るのが嫌い”っていうわけで、普段から夜中にクッキー作ってるだけで……」
「そこが魅力なのよ。クライヴさまだって本気でお忍び訪問するんでしょ? しかもエリックは護衛兼参加者。もう何これ、あんたのハーレムじょうたいじゃないの?」
アリスは「ハーレムって……」と困惑しつつも、フローレンスが賛成してくれたことで心強い。フローレンス自身もこの夜会に招待される形となり、最低限の証人として参加する。
エリックとアリスとグラントで決めた日程は一週間後の深夜。フローレンスには事前に「絶対に秘密厳守」と誓わせ、クライヴにも当日の入邸方法を手紙で伝える――馬車を使わず、特別ルートから敷地に入り、応接室を経由せずに厨房へ直行、などなど。
フローレンスは「なんだかスパイ映画みたいじゃない?」と笑いを誘うが、アリスとしては興味深くとも緊張が増すばかりだ。
「わたし、寝るの嫌いだけど、こんなに動悸が激しいのは初めて。……本当に大丈夫かなあ」
「大丈夫よ。エリックがいるし、お父様も認めてるし。クライヴさまだって仕事が忙しいのに、その日の夜はしっかり時間を空けるって言ってるでしょ?」
「そう……手紙にそう書いてました。兄上さまには“少し夜遅く帰る”と伝えるとか……迷惑にならないかな」
アリスは不安を隠せないが、フローレンスは「むしろクライヴさまが楽しみにしてるわよ」と手を叩く。夜会でアリスの夜を共有することにワクワクしている、という風の噂もあるらしい。
「クライヴさま、けっこうアリスに夢中みたいだから、変に気を遣わず任せていいのよ。あんたは自分らしく“寝るのが嫌いな夜”を楽しめばいいわ」
「ふぁ……わたしらしく、ですか。クッキー作りとお茶だけじゃ退屈しないか心配だけど……」
「クライヴさまだって初体験でしょ? 夜中にシャーベット家でクッキーとか。むしろ興味津々よ」
フローレンスはケラケラ笑いながら、テーブルに置かれたレシピ本を眺める。「せっかくだから新しいクッキーの味に挑戦してみたら?」と提案する。アリスは「どんなフレーバーがいいかな」と本をぱらぱら捲り、興味を示す。
「レモンピールを入れたさっぱり系とか、スパイスを少し入れてオトナっぽくするとか……いつものチョコや抹茶とは違った味に挑戦するのもいいかもしれない」
「そうそう! クライヴさまの新鮮なリアクションも見れるし、エリックだって『お前、そんなの作るのか』って驚くかも」
アリスは妄想を膨らませ、「たしかにやってみたい」と笑みを浮かべる。寝るのが嫌いな時間を、まさに自分の新たな楽しみに変える計画――フローレンスのあざとい後押しが効いている。
一方で、エリックがそれをどう受け止めるのか、クライヴとの仲がどうなるのかは不透明だ。あまり深く考えすぎると動けなくなるので、アリスは当日まではクッキーの新レシピを研究して過ごすことにした。
「それにしてもフローレンス、あなたは本当にこの夜会に参加してくれるんですか? 深夜にわたしの家へ来るなんて、大変じゃありません?」
「当たり前じゃない。こんな面白い行事、見逃すわけないわ。あんたが寝るの嫌いだけど夜をどう過ごしてるか、この目でしっかり確かめるんだから」
「そ、そうですか……。じゃあ四人ですね。わたしとエリック、クライヴさまとフローレンス。朝までになんとか終わるといいけど」
フローレンスは「余裕余裕」と手を振るが、内心は「朝までクッキー作りするんだろうか?」と笑いが止まらない。どんなハプニングが起きるか想像するとワクワクして仕方ないのだろう。
アリスは軽く伸びをして、「ふぁ……」とあくびのような息を漏らす。「寝るのが嫌いだけど、当日までに体力を温存しなきゃ」と自分でも思う。昼間はしっかり食事と休憩を取り、夜更かしに備えるライフスタイルを確立しようと考え始める。
(これって、わたしが“寝るの嫌い”を克服しているのか、それともさらに夜更かしを極めてるだけなのか……どっちなんだろう)
不思議な疑問を抱えつつも、アリスは楽しみに胸を弾ませる。夜が苦手でもあるのに、今は夜が待ち遠しい。寝るのが嫌いだからこそ、深夜に活動できる喜びをクライヴに伝えたい――そんな気持ちが、アリスの瞳を輝かせていた。
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