【完結】「婚約破棄ですか?分かりました」おしまい?

えるろって

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クライヴが「再婚約」を本格的に示唆してきた翌日。アリスはまだ動揺が収まらないまま午前中を過ごしていた。寝るのが嫌いとはいえ、今は昼間でも頭がぼんやりしてしまうほど、心が乱れている。

「ふぁ……どうしよう。わたし、夜更かしクッキー会も再度やろうとしてるけど、このままだとタイミングが測れない。エリックは忙しいし、クライヴさまは本気すぎて怖いような……」

そんな独り言を零していると、侍女が「フローレンス様がお見えです」と報せに来る。アリスは「あ、また……!」と慌てて体を起こし、客間へ向かった。  
客間のドアを開けると、フローレンスが以前にも増してキラキラしたドレスを纏い、上機嫌な様子で待っている。

「アリス、こんにちは。クライヴさまからの話、進んでるんですって? 再婚約、もうすぐ決まるとか?」

「そ、そんなに早くは……。昨日ちょっとお話ししただけですよ」

アリスは赤面しつつフローレンスを促してソファに座る。フローレンスは「あらそう?」とウインクし、「でも、社交界では『クライヴさまがいよいよ動き出す』と噂されてるわよ」と教えてくる。

「そ、そうなんだ……わたし、まだ答え出してないのに」

「大丈夫、噂は噂。あんたがエリックをどうするかもあるしね。……ところで、今日は一つ面白いお誘いを持ってきたの」

アリスは首をかしげ、「お誘い?」と訊ねる。フローレンスは得意気に目を輝かせる。

「そう。王宮で開催される“昼から夜にかけてのイベント”があるんだって。バラが咲く季節を祝うカジュアルな催しらしいのよ。夕方から簡単なダンスもあるんですって」

「昼から夜……バラのイベント?」

「ええ、フラワーフェスみたいな感じで、花を愛でつつ軽い食事をして夕方にはみんなで軽いダンス。夜まで引き伸ばすかは参加者次第らしいわ。――要するに、夜が苦手な人は早めに帰ってもいいし、夜まで楽しみたい人は残る形」

アリスは少し興味を惹かれ、「わたし、昼から夜……それって寝るの嫌いなわたしに合ってるかも」と呟く。フローレンスは「でしょ?」とウインク。

「クライヴさまもエリックも、騎士団方面で招待される可能性が高いのよ。おそらく二人とも出席するわ。……あんたはどうする?」

「わたし、王宮の昼~夜のイベントって苦手なイメージだけど……確かにエリックも来るかもしれないし、クライヴさまもいるなら迷う理由はないですね」

アリスはテンションが少し上がってくる。「また三角形になる?」と思うが、逆にそれが今の自分に必要な場なのかもしれないと感じる。夜更かしクッキー会を開くまでもなく、王宮という場所で二人に会って話せるかもしれない。

「じゃあ、わたしも行きたいです。フローレンスが誘ってくれるなら、正式な招待状も届くんですよね?」

「ええ、ローベル家が主催側と繋がりがあって、あんたを連れて行けば問題ないわ。もちろんシャーベット家としても、王宮からの連絡があるはずだけど、父様に言ってみて」

「うん、父様に言ってみる。……エリックとクライヴさまが一堂に会するなら、わたし、ちゃんと自分の気持ちを確かめられるかも。寝るのが嫌いでも、昼間から夜にかけてアクティブに動けるし」

フローレンスは「そうそう、昼夜混合イベントっていうのがあんたにぴったり」と笑顔で返す。アリスも心の中で「たしかにチャンスかもしれない」と思い始める。

(夜会だとエリックが不在だったり、クライヴが本気すぎて緊張したりするけど、王宮なら広い空間で自然に話せる。昼から夜……どのタイミングでエリックやクライヴと向き合うかはわたし次第)

自然に心が弾んでくる一方で、不安もある。王宮となれば公的な場だし、下手にイチャイチャすると“もう婚約間近”の噂が爆発しそう。エリックへの政略結婚話も絡む可能性がある。  
だが、アリスは「怖がってても仕方ない」と腹をくくる。寝るの嫌いだと夜に行動しがちだが、昼~夜のイベントなら、夜更かししなくても感情をぶつけられるかもしれない――

「フローレンス、ありがとう。わたし、ぜひ行きます。父様もきっと許可してくれると思いますし」

「いいわね。じゃあ準備を進めましょう。ドレス選びも大事よ。昼と夜、両方の光で映えるデザインが必要だわ!」

フローレンスが早速、ドレスの話を始める。アリスは少し照れながら、「昼と夜…」と呟き、寝るの嫌いな自分にはまさにテーマとしてぴったりだと思う。  
それからふたりは昼~夜のイベントに合わせた服装や振る舞いを話し合い、あっという間に時間が過ぎる。アリスはエリックの顔を思い浮かべながら、「久々に昼の顔のエリックとも会えるかも」と期待する。  
同時に、クライヴが王宮でどう動くかも気になる。再婚約話を正式に持ち出すかもしれないし、兄ギルバートと同行する可能性もある。夜会よりも公的な空間で、アリスは一体どんな選択をするのか――昼と夜、どちらにも馴染める自分を活かして、決断のヒントを掴むに違いない。

「ふぁ……寝るのは嫌いだけど、当日までに疲れを溜めないようにしないと。昼から夜までのイベントを乗り切れる体力が必要ですね」

フローレンスが「そこは気合でどうにかなるわよ」と笑い、アリスもうなずく。貴族の昼夜イベントは華やかさが倍増する反面、噂と視線も倍増する。アリスは半分ワクワク、半分緊張しながら、その日を待つことにする。  
こうして、新たなステージとなる“王宮の昼~夜イベント”に向けて物語は動き出す。エリックとクライヴの狭間で揺れるアリスが、果たしてそこでどんな答えを見つけるのか――寝るのが嫌いなだけだったはずの少女が、恋の選択を迫られる運命に向かう足音が一段と高まっていた。
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