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シャーベット家とエリック・ハリスンの“非公式婚約”が内々に進められ始めると、社交界にも少しずつその情報が漏れ始めた。明確な発表はないものの、クライヴを断ってエリックを選んだとされる噂は、一部の貴族たちから驚きと批判を招いている。
「ふぁ……『ロリ令嬢が護衛騎士に落ちた』とか言われてるんですか?」
アリスはフローレンスから聞いたゴシップにショックを受ける。寝るのが嫌いで夜に活動してきた“不思議ちゃん”が、結局は地位の低い騎士見習いとくっついたという、揶揄めいた噂が一部で広まっているらしい。
「まったく失礼な話だけど、社交界なんてそういうところよ。クライヴさまと結婚すれば“高貴なロリ令嬢”扱いされたのに、騎士見習いを選んだとなれば“身分を落とした”って見る人はいるわ」
フローレンスが肩をすくめ、アリスは胸を痛める。彼女自身は身分よりも愛情を選んだだけだが、外部が好意的に捉えてくれるとは限らない。
それでも寝るのが嫌いな夜をエリックとともに生きていく決断をしたのだから、周囲の批判は仕方ないと腹をくくるしかない。
「父様はどう言ってますか?」
「グラント様は『一時の噂など放っておけばいい。正式に婚約を公表する段階で、家としてバックアップする』って。まあ、いざとなれば対抗手段はいくらでもあるわよ」
フローレンスの話を聞き、アリスは少しホッとする。シャーベット家が本気で支えてくれるなら、さほど大きな問題にはならないだろう。
しかし、エリックが他家に奪われる可能性は薄れたものの、アリス自身が“格を下げた”と見なされる風潮が強まるかもしれないのが気がかりだ。寝るのが嫌いという独特の設定も相まって、「変わり者の令嬢が騎士見習いに寄っていった」と捉える人もいる。
「ふぁ……わたし、そこまで“格”とか気にしてませんでした。クライヴさまには申し訳ないけど、エリックと一緒にいられるだけで十分なのに」
「そうそう、あんたが幸せならそれでいいのよ。社交界の噂なんて気にしないこと。むしろ“寝るの嫌い令嬢、愛を見つける”って美談に仕立てられる可能性もあるじゃない」
フローレンスが励ましてくれるので、アリスも「うん……頑張ります」と笑う。寝るのが嫌いで夜に自由を感じてきた少女が、昼も夜もエリックと歩む道を選んだ――その物語は逆風も多いが、愛の前には些細なことと思いたい。
---
ある日の夜、アリスは屋敷のテラスに出て星空を見上げる。寝るのが嫌いなまま夜風に当たり、エリックの到着を待っていた。彼が王宮の仕事を終えてから話したいことがあったのだ。
やがてテラスの扉が静かに開いて、エリックが姿を現す。アリスは振り返って微笑む。
「いらっしゃい……夜更けだけど、来てくれてありがとう」
「仕事が押して遅くなった。……今日はどうした? 疲れてるんじゃないか? 昼に出かけたんだろ?」
アリスはドレスの裾を抑えながらテラスの椅子を勧める。「ありがとう、大丈夫です。ちょっと噂のこととか、あなたと話しておきたくて……」
エリックは苦い顔をする。「噂って、俺たちの婚約もどきの話か。……相当好き勝手言われてるみたいだな」
「うん……でも、わたしは気にしなくていいって思ってます。寝るの嫌いだとか言われようが、護衛騎士との恋とか揶揄されようが、あなたがいるなら平気です」
その言葉にエリックは胸が熱くなる。「ありがとう、アリス。俺も気にしない。社交界が何を言おうと、お前が俺を選んでくれたことがすべてだ」
二人は星空を見上げ、静かに寄り添い合う。夜のテラスで、かつては“護衛”と“令嬢”の距離だったが、今は恋人として手を繋ぐことにも抵抗がない。むしろ、その温もりに支えられている。
「……父様が近いうちに、あなたの家や騎士団と正式な話をすると言ってました。わたしとあなたの婚約を形にするって」
「そうか。俺も上官に軽く報告してある。 ‘シャーベット家の令嬢と婚約を考えている’ ってね。驚かれたが、‘お前なら大丈夫だろう’ って言ってもらえた」
エリックの言葉にアリスは安堵の笑み。「よかった……これでもう、他の貴族令嬢に奪われる可能性も減りましたね」
「お前がそう思ってくれると嬉しいが……本当にいいのか? クライヴほどの地位はないし、王宮勤務も安定した地位を築くまで時間がかかる。お前にふさわしいだけの待遇を用意できるか分からない」
エリックは自責を滲ませるが、アリスは首を振り、「地位や待遇より、あなたと夜を過ごす安心感が大事なんです。わたし、寝るのが嫌いで夜中に不安になっても、あなたがそばにいてくれたら……」と答える。
エリックは苦い笑みを浮かべてから、アリスの手を軽く握る。「分かった。……俺が“王宮騎士”としての道をちゃんと進めば、シャーベット家を守れる。お前も昼夜どちらでも笑顔で暮らせるようにする」
二人は星空の下で約束を交わす。噂の逆風は強くとも、寝るのが嫌いな理由を受け止めてくれる相手と共に生きる道は、何よりの支えになる。今夜もテラスで語り合い、いずれ明日が来ても──そのときは二人で昼の世界を乗り越える覚悟だ。
こうして二人が互いを励まし合いながら噂と向き合い、結婚への準備を進めるうちに、シャーベット家にも少しずつ承認の輪が広がり始めていた。
「ふぁ……『ロリ令嬢が護衛騎士に落ちた』とか言われてるんですか?」
アリスはフローレンスから聞いたゴシップにショックを受ける。寝るのが嫌いで夜に活動してきた“不思議ちゃん”が、結局は地位の低い騎士見習いとくっついたという、揶揄めいた噂が一部で広まっているらしい。
「まったく失礼な話だけど、社交界なんてそういうところよ。クライヴさまと結婚すれば“高貴なロリ令嬢”扱いされたのに、騎士見習いを選んだとなれば“身分を落とした”って見る人はいるわ」
フローレンスが肩をすくめ、アリスは胸を痛める。彼女自身は身分よりも愛情を選んだだけだが、外部が好意的に捉えてくれるとは限らない。
それでも寝るのが嫌いな夜をエリックとともに生きていく決断をしたのだから、周囲の批判は仕方ないと腹をくくるしかない。
「父様はどう言ってますか?」
「グラント様は『一時の噂など放っておけばいい。正式に婚約を公表する段階で、家としてバックアップする』って。まあ、いざとなれば対抗手段はいくらでもあるわよ」
フローレンスの話を聞き、アリスは少しホッとする。シャーベット家が本気で支えてくれるなら、さほど大きな問題にはならないだろう。
しかし、エリックが他家に奪われる可能性は薄れたものの、アリス自身が“格を下げた”と見なされる風潮が強まるかもしれないのが気がかりだ。寝るのが嫌いという独特の設定も相まって、「変わり者の令嬢が騎士見習いに寄っていった」と捉える人もいる。
「ふぁ……わたし、そこまで“格”とか気にしてませんでした。クライヴさまには申し訳ないけど、エリックと一緒にいられるだけで十分なのに」
「そうそう、あんたが幸せならそれでいいのよ。社交界の噂なんて気にしないこと。むしろ“寝るの嫌い令嬢、愛を見つける”って美談に仕立てられる可能性もあるじゃない」
フローレンスが励ましてくれるので、アリスも「うん……頑張ります」と笑う。寝るのが嫌いで夜に自由を感じてきた少女が、昼も夜もエリックと歩む道を選んだ――その物語は逆風も多いが、愛の前には些細なことと思いたい。
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ある日の夜、アリスは屋敷のテラスに出て星空を見上げる。寝るのが嫌いなまま夜風に当たり、エリックの到着を待っていた。彼が王宮の仕事を終えてから話したいことがあったのだ。
やがてテラスの扉が静かに開いて、エリックが姿を現す。アリスは振り返って微笑む。
「いらっしゃい……夜更けだけど、来てくれてありがとう」
「仕事が押して遅くなった。……今日はどうした? 疲れてるんじゃないか? 昼に出かけたんだろ?」
アリスはドレスの裾を抑えながらテラスの椅子を勧める。「ありがとう、大丈夫です。ちょっと噂のこととか、あなたと話しておきたくて……」
エリックは苦い顔をする。「噂って、俺たちの婚約もどきの話か。……相当好き勝手言われてるみたいだな」
「うん……でも、わたしは気にしなくていいって思ってます。寝るの嫌いだとか言われようが、護衛騎士との恋とか揶揄されようが、あなたがいるなら平気です」
その言葉にエリックは胸が熱くなる。「ありがとう、アリス。俺も気にしない。社交界が何を言おうと、お前が俺を選んでくれたことがすべてだ」
二人は星空を見上げ、静かに寄り添い合う。夜のテラスで、かつては“護衛”と“令嬢”の距離だったが、今は恋人として手を繋ぐことにも抵抗がない。むしろ、その温もりに支えられている。
「……父様が近いうちに、あなたの家や騎士団と正式な話をすると言ってました。わたしとあなたの婚約を形にするって」
「そうか。俺も上官に軽く報告してある。 ‘シャーベット家の令嬢と婚約を考えている’ ってね。驚かれたが、‘お前なら大丈夫だろう’ って言ってもらえた」
エリックの言葉にアリスは安堵の笑み。「よかった……これでもう、他の貴族令嬢に奪われる可能性も減りましたね」
「お前がそう思ってくれると嬉しいが……本当にいいのか? クライヴほどの地位はないし、王宮勤務も安定した地位を築くまで時間がかかる。お前にふさわしいだけの待遇を用意できるか分からない」
エリックは自責を滲ませるが、アリスは首を振り、「地位や待遇より、あなたと夜を過ごす安心感が大事なんです。わたし、寝るのが嫌いで夜中に不安になっても、あなたがそばにいてくれたら……」と答える。
エリックは苦い笑みを浮かべてから、アリスの手を軽く握る。「分かった。……俺が“王宮騎士”としての道をちゃんと進めば、シャーベット家を守れる。お前も昼夜どちらでも笑顔で暮らせるようにする」
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