【完結】「婚約破棄ですか?分かりました」おしまい?

えるろって

文字の大きさ
88 / 100

88

しおりを挟む
王宮騎士団への正式報告が通り、シャーベット家とハリス家の話し合いも整い、アリスとエリックは近々「婚約式」を行う運びとなった。社交界に正式に発表し、お披露目するための場をどう設定するか――そこはグラントやフローレンスたちが協議中である。  

フローレンスがローベル家の立場から「ぜひ大規模に夜会を開いて二人の婚約を祝いたい!」と提案している一方、シャーベット家は「派手すぎるのは避けたい」と慎重だ。アリスはその狭間で「うう、どうすれば……」と悩む。

「ふぁ……夜の大規模パーティなんて、クライヴさまとのことを思い出しちゃいそうですよね。わたし、今はエリックを選んだけど、その記憶があるから複雑……」

アリスが書斎でため息をついていると、フローレンスが入ってきて「あら、何を暗い顔してるの?」と尋ねる。アリスは「あなたが派手にやりたいって言うから……」と愚痴を漏らす。

「だって、せっかくの婚約式よ? しかも騎士と伯爵家令嬢というドラマチックな組み合わせなんだから、夜会で盛り上がらないほうが損じゃない?」

「でも……寝るのが嫌いなわたしの夜会って、いつも何かしら波乱が起きてきたイメージで。できれば静かにやりたい気もあるんです」

フローレンスは「つまらないわね」と即答し、笑いながら「大丈夫よ、ディーン子爵やクライヴさまも今さら乱入したりしないわ。むしろ二人とも落ち着いてるもの」と強調する。  
アリスは少しホッとするが、同時に「本当に平和に済むのかな」とまだ不安を抱えている。そもそも社交界では“護衛騎士との婚約”というだけでも注目度が高く、騒ぎになる可能性は否定できない。

「……まあ、フローレンスの言う通りかもしれませんね。わたし、夜会は嫌いじゃないですし、寝るのが嫌いな夜を幸せな場に変えられるなら、もう一度だけ頑張りますか」

「そうそう! 私も手伝うし、シャーベット家の人達も応援するわよ。場所はシャーベット家の大広間か、あるいはローベル家の夜会場を借りるか……父様とグラント様に相談して決めるけど、とにかく盛大にいくわよ!」

フローレンスのテンションに引っ張られる形で、アリスも「はい……よろしくお願いします」と返事する。確かに大きな夜会で婚約式をやれば、今さらエリックを狙う輩も近寄れないだろうし、ディーンが再び口を挟む余地もなくなる。  
一方、エリックは「夜会は緊張するから昼の式でもいいのでは」と提案しているが、社交界はもともと夜型の儀式も多いため、シャーベット家としては夜で問題ないと返す。アリスも夜のほうが得意なので「じゃあ夜で……」という流れになるのは自然かもしれない。

---

その日の夕方、アリスはエリックと廊下で出会い、さっそく夜会婚約式の話をする。「フローレンスが派手にやりたいみたいですけど、エリックはどう思いますか?」と尋ねると、エリックは苦笑する。

「大きな夜会か……俺は緊張するけど、騎士仲間も祝福してくれるなら悪くない。お前が夜が得意ならそれもいいさ。昼でも夜でも、一緒にいられるなら俺は構わない」

「わたし、寝るのが嫌いだけど、あなたと夜に婚約式をするのって……ちょっとロマンチックかも。これまでの“夜会”はクライヴさまともあったけど、今度はあなたと……」

エリックは少し複雑そうな笑みを浮かべる。「クライヴ……そうだな、奴も夜会の舞台で思い出があったかもしれないが、今はもう俺たちの夜だ。過去を振り返らず、楽しもう」

「はい……。いつか正式に『わたしはエリックを選びました』ってみんなに言えるなんて、まだ信じられません。でも嬉しいです」

二人は笑い合う。寝るのが嫌いなアリスにとって、夜の婚約式を自分の意志で楽しむなんて、かつては想像もしなかったことだ。  
こうして“夜会での婚約式”が具体化し始める。フローレンスやシャーベット家の関係者が日程や招待客を調整し、ハリス家も母セシリアを中心に協力する流れ。ディーンからの妨害はなく、クライヴがそっと見守る形だという。  
数日後、フローレンスが「私の家の夜会場も使えるし、シャーベット家の大広間もいい感じ。どっちがいい?」とアリスに聞いてきて、アリスは最後まで悩む。結局、父グラントが「シャーベット家で盛大にしよう」と背中を押す形で決まる。寝るのが嫌いなアリスが自身の家を夜に開放し、騎士と婚約する夜――まさにドラマチックな展開だ。

「ふぁ……大丈夫かな、過去の夜会はディーンやクライヴのことがあったから、トラウマも……」

「もう乗り越えたでしょう? エリックがいるし、父様も護衛を厚くしてくれるわ。大丈夫、最強の夜会にしてやりましょ!」

フローレンスの気合に釣られて、アリスも意欲が湧いてくる。寝るのが嫌いだからこそ、夜は自分のフィールドだ――そう思えばこそ、婚約式を夜に盛り上げるのは悪くない発想。  
エリックも「俺が騎士として家を守る。お前の寝るのが嫌いな時間を最後まで護ってみせる」と宣言してくれる。アリスは「ありがとう、エリック」と頬を染め、夜会へ向けた準備を開始する。  
誰もが一度は予想した“公爵家との結婚”ではなく、あえて“騎士見習いとの婚約”を選んだアリス。この夜会は、寝るのが嫌いだった過去の総決算にもなるだろう。ディーンもクライヴも、いまや遠い背景になりつつある。夜が華々しく開かれるとき、寝るのが嫌いな少女は本当に“幸せな夜”を得られるのか。もうすぐ答えが見えそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...