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アリスとエリックが“夜の婚約式”を終え、家や騎士団の承認も得たことで、いよいよ結婚式の日取りをどうするかが話題に上がり始めた。貴族の慣例的には昼間の明るい時間帯に挙行することが多いが、“寝るのが嫌いな令嬢”に合わせるなら夜間式もあり得るという声もある。
シャーベット家のグラントが「普通は昼にするが、夜型の式も面白いかもしれないな」と冗談めかし、ハリス家のセシリアは「でも皆さんの体力が心配では?」と苦笑する。アリスは「ふぁ……どうしよう」と頭を抱えるが、最終的にはエリックの意見が鍵になりそうだ。
「夜に挙式……一度“夜の婚約式”をやったけど、結婚式まで夜にするのは確かに珍しいですよね。でもわたし、寝るのが嫌いだから夜でも……」
アリスがつぶやくと、フローレンスは「ちょっと待って、結婚式でお披露目する招待客の数は婚約式より多いし、さすがに夜だけじゃ辛い人もいるわよ」と笑う。
エリックは「俺の騎士仲間は夜の勤務がある者も多いから、昼のほうが参加しやすいかもしれない。騎士団長も昼の行事で堂々と来られるだろう」と言う。確かに社交界の儀式は昼型が一般的だ。
(わたし、やっぱり昼か……)
アリスは“夜に挙式”という夢を捨てきれないが、現実的に昼がベストだと分かっている。寝るのが嫌いとはいえ、結婚式は一生に一度の大イベント。夜だと年配の人や昼型の貴族に負担をかけそうだ。
そこでアリスは「それなら昼に結婚式を挙げて、夜に二次会みたいにパーティーを開けばいいんじゃないですか?」と思いついた。フローレンスが「それいいわね!」と拍手し、エリックも「両方やるのか? 大変だが、アリスの色が出るな」と苦笑する。
グラントもセシリアも「なるほど……昼の式と夜のパーティーをセットなら、両方の参加者が自由に行き来できるかもしれない」と賛成ムード。こうして結婚式は昼、夜には少しカジュアルな二次会という形で進める方針が固まる。
---
後日、アリスはエリックと一緒に具体的な準備をするため、シャーベット家の書斎に籠ることになった。書斎のテーブルには日程表や招待客リスト、昼と夜の進行スケジュールなどの資料が山積みされている。アリスは眠気に襲われそうになりながらも、「ふぁ……がんばる」と意気込む。
「エリック、昼の式ってどんな服装にするんですか? あなたは騎士の正装がいいのか、普通のタキシードに近いのがいいのか、わたしも迷ってるんですよ」
「んー、騎士仲間には『せっかくなら騎士正装で来い』と言われたが、伯爵家令嬢との結婚式だからフォーマルな王宮仕様の衣装も考えたい。どっちがいいと思う?」
「わたしは……あなたの騎士正装が好きだけど、もしかすると騎士団長などが昼の式に参列するなら、騎士らしくまとめたほうが荘厳かも。ああ、迷いますね」
二人で相談し合う姿はまさに婚約カップルそのものだ。寝るのが嫌いなアリスも、昼の準備に余念がない。夜は夜で二次会のクッキーコーナーをどうするかとか、音楽をどう盛り上げるかなど話題が尽きない。
「クッキーコーナーは絶対はずせません。寝るのが嫌いなわたしとあなたが一緒に育んだ文化ですから!」
「はは、わかった。じゃあバラの装飾と合わせて、夜はお前のクッキーがメインになりそうだな」
アリスは嬉しそうに笑い合い、「そうです、みなさんにも今一度味わってもらいます」と鼻息を荒くする。彼女にとってクッキーは夜の象徴でもあり、エリックとの絆でもある。結婚式でそれを披露できるのは最高の形だ。
---
夕方になり、二人は一旦書斎での打ち合わせを終えてテラスへ出る。まだ陽が落ちきらないが、空がオレンジ色に染まっていて、アリスはうっとりと眺める。昼と夜の狭間――彼女が最も不安定になる時間帯だったが、今はエリックが隣にいるから怖くない。
「ふぁ……わたし、これまで夕方に眠くなったり、夜に活動したりしてたけど、今はあなたがそばにいるから全然平気ですね。結婚式も昼夜合わせてやるなんて、きっと疲れるだろうけど、それ以上に楽しみです」
「俺もだ。きっと大変だが、二人ならどんな時間帯だって乗り越えられる。……お前が寝るのが嫌いでも、昼夜を融合した結婚式は最高の思い出になると思う」
アリスは頬を染め、「エリック……本当にありがとう。騎士団の仕事や家のこともあるのに、わたしのことを最優先にしてくれて……」と素直に感謝を伝える。エリックは「お前と結婚するんだから当然だ」とだけ言って微笑む。
こうして昼と夜の両方を生かす“二部式”の結婚式がほぼ確定し、アリスとエリックは最後の準備へ進む。社交界や周囲からの反対はさほどなく、逆に「昼夜まとめて祝う結婚式なんて面白い」という声が上がり始めているらしい。寝るのが嫌いな少女だからこそ発想できた特別な式を迎える日が、そう遠くない将来にやってくるのだ。
シャーベット家のグラントが「普通は昼にするが、夜型の式も面白いかもしれないな」と冗談めかし、ハリス家のセシリアは「でも皆さんの体力が心配では?」と苦笑する。アリスは「ふぁ……どうしよう」と頭を抱えるが、最終的にはエリックの意見が鍵になりそうだ。
「夜に挙式……一度“夜の婚約式”をやったけど、結婚式まで夜にするのは確かに珍しいですよね。でもわたし、寝るのが嫌いだから夜でも……」
アリスがつぶやくと、フローレンスは「ちょっと待って、結婚式でお披露目する招待客の数は婚約式より多いし、さすがに夜だけじゃ辛い人もいるわよ」と笑う。
エリックは「俺の騎士仲間は夜の勤務がある者も多いから、昼のほうが参加しやすいかもしれない。騎士団長も昼の行事で堂々と来られるだろう」と言う。確かに社交界の儀式は昼型が一般的だ。
(わたし、やっぱり昼か……)
アリスは“夜に挙式”という夢を捨てきれないが、現実的に昼がベストだと分かっている。寝るのが嫌いとはいえ、結婚式は一生に一度の大イベント。夜だと年配の人や昼型の貴族に負担をかけそうだ。
そこでアリスは「それなら昼に結婚式を挙げて、夜に二次会みたいにパーティーを開けばいいんじゃないですか?」と思いついた。フローレンスが「それいいわね!」と拍手し、エリックも「両方やるのか? 大変だが、アリスの色が出るな」と苦笑する。
グラントもセシリアも「なるほど……昼の式と夜のパーティーをセットなら、両方の参加者が自由に行き来できるかもしれない」と賛成ムード。こうして結婚式は昼、夜には少しカジュアルな二次会という形で進める方針が固まる。
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後日、アリスはエリックと一緒に具体的な準備をするため、シャーベット家の書斎に籠ることになった。書斎のテーブルには日程表や招待客リスト、昼と夜の進行スケジュールなどの資料が山積みされている。アリスは眠気に襲われそうになりながらも、「ふぁ……がんばる」と意気込む。
「エリック、昼の式ってどんな服装にするんですか? あなたは騎士の正装がいいのか、普通のタキシードに近いのがいいのか、わたしも迷ってるんですよ」
「んー、騎士仲間には『せっかくなら騎士正装で来い』と言われたが、伯爵家令嬢との結婚式だからフォーマルな王宮仕様の衣装も考えたい。どっちがいいと思う?」
「わたしは……あなたの騎士正装が好きだけど、もしかすると騎士団長などが昼の式に参列するなら、騎士らしくまとめたほうが荘厳かも。ああ、迷いますね」
二人で相談し合う姿はまさに婚約カップルそのものだ。寝るのが嫌いなアリスも、昼の準備に余念がない。夜は夜で二次会のクッキーコーナーをどうするかとか、音楽をどう盛り上げるかなど話題が尽きない。
「クッキーコーナーは絶対はずせません。寝るのが嫌いなわたしとあなたが一緒に育んだ文化ですから!」
「はは、わかった。じゃあバラの装飾と合わせて、夜はお前のクッキーがメインになりそうだな」
アリスは嬉しそうに笑い合い、「そうです、みなさんにも今一度味わってもらいます」と鼻息を荒くする。彼女にとってクッキーは夜の象徴でもあり、エリックとの絆でもある。結婚式でそれを披露できるのは最高の形だ。
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夕方になり、二人は一旦書斎での打ち合わせを終えてテラスへ出る。まだ陽が落ちきらないが、空がオレンジ色に染まっていて、アリスはうっとりと眺める。昼と夜の狭間――彼女が最も不安定になる時間帯だったが、今はエリックが隣にいるから怖くない。
「ふぁ……わたし、これまで夕方に眠くなったり、夜に活動したりしてたけど、今はあなたがそばにいるから全然平気ですね。結婚式も昼夜合わせてやるなんて、きっと疲れるだろうけど、それ以上に楽しみです」
「俺もだ。きっと大変だが、二人ならどんな時間帯だって乗り越えられる。……お前が寝るのが嫌いでも、昼夜を融合した結婚式は最高の思い出になると思う」
アリスは頬を染め、「エリック……本当にありがとう。騎士団の仕事や家のこともあるのに、わたしのことを最優先にしてくれて……」と素直に感謝を伝える。エリックは「お前と結婚するんだから当然だ」とだけ言って微笑む。
こうして昼と夜の両方を生かす“二部式”の結婚式がほぼ確定し、アリスとエリックは最後の準備へ進む。社交界や周囲からの反対はさほどなく、逆に「昼夜まとめて祝う結婚式なんて面白い」という声が上がり始めているらしい。寝るのが嫌いな少女だからこそ発想できた特別な式を迎える日が、そう遠くない将来にやってくるのだ。
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