96 / 100
96
しおりを挟む
シャーベット家の大広間では、昼と夜それぞれでの結婚式に向けて最終リハーサルが行われていた。フローレンスや使用人たちが忙しなく動き回り、バラの生花やキャンドル、クロス類などのデコレーションが運び込まれる。
アリスは寝るのが嫌いながらも、今は昼行動にも慣れつつあり、「ふぁ……少し眠いけど、エリックと一緒なら大丈夫」と笑う。彼女が昼間から堂々と動いている姿を見て、父グラントも「本当に変わったな」と驚きの眼差しを向けるほどだ。
「父様、昼の挙式と夜の披露宴で使う装飾がカブらないようにしたいんですが、どう配置しましょう?」
アリスが書斎で地図を広げて尋ねると、グラントは「披露宴は大広間でも夜の雰囲気を優先する。昼の挙式は庭やチャペルを使う予定だから、そこは専用にバラを配置してかまわない」と回答する。
ふたつの式を一日にまとめる都合上、装飾も二部構成となる。昼は森の中のチャペルでバラをメインに優雅な雰囲気、夜は大広間でキャンドルとクッキーを中心にロマンチックな演出――どちらもアリスとエリックのこだわりが詰まっている。
その日の夕方、エリックが王宮の仕事を終えてシャーベット家に到着し、アリスと合流。二人は庭を散歩しながら式の進行を最終的に確認する。
アリスは「ふぁ……昼と夜両方って、本当にやるんですね。朝から起きてチャペルに行き、昼すぎに食事、夕方に小休憩して夜に披露宴って流れですけど、絶対疲れますよね」と苦笑する。エリックも「そうだな。でも、シャーベット伯爵家としては前代未聞のスペシャルイベントだ」と嬉しそうに返す。
「ディーンさまやクライヴさまもきてくれるかな? わたし、どうしても後ろめたさがあるけど……」
「クライヴはまだどうするか分からないが、祝福はしてくれるはず。ディーンは分からないが、無理して呼ぶ必要もないだろう。トラブルを起こす気がないならいいが……」
アリスは頷く。「うん、呼ばなくていいかもしれないね。でも来たがっても困るし。どのみち、わたしたちを邪魔する権利はもうないしね」
二人は笑い合う。寝るのが嫌いなアリスが昼夜の式を同時にこなすのは大変だが、エリックが「当日は俺も協力する。お前が昼にダウンしそうなら、俺が支えるし、夜は逆にお前のほうが得意だろうし」と頼もしい一言をくれる。
こうして結婚式の準備は佳境を迎え、招待客もほぼ確定。アリスがエリックを選んだ物語は最高潮へ向かおうとしていた。寝るのが嫌いでも、今回は朝から起きる必要があるので意外に調整が大変だが、彼女はやる気に満ちている。
夜になり、二人は大広間へ移動し、披露宴で踊るダンスの最終リハーサルを行う。寝るのが嫌いなアリスにとって夜は活動的な時間帯だが、長い準備でさすがに足が重い。それでもエリックとステップを踏むと楽しくて笑顔がこぼれる。
「ふぁ……わたし、クライヴさまとも夜のダンスをしたけど、あのときは不安が大きかったです。今回はわたしの結婚式ですもんね。すごく安心感がある」
「俺もクライヴとは一緒に踊ったことがないが……そういう意味じゃ、あいつの得意分野だった夜のダンスを、今は堂々とお前と踊れるわけだ。勝った気分だな」
エリックの意外な冗談めかしにアリスはクスッと笑う。夜のダンスはクライヴが上手い印象があったが、今のアリスにはエリックがどんなにぎこちなくても愛おしく感じるのだ。
軽くひと踊りした後、エリックがアリスの肩を抱いて「もう少しで式だ。緊張してるか?」と尋ねる。アリスは大きく息を吐き、「実は、クッキーを焼くのと同じくらいは緊張してます」と冗談めかして答える。
「ふぁ……でも、今はあなたがそばにいるから大丈夫。寝るのが嫌いだったわたしが、こうして昼夜まとめて式をこなすなんて夢みたいだけど、一緒にがんばります」
「うん、俺もがんばる。お前が昼に不安なら腕を貸すし、夜に俺が疲れたらお前がフォローしてくれ。二人ならどんな時間帯も怖くない」
穏やかな夜の灯りの下、二人は抱き合うようにして微笑む。過去のディーンの事件やクライヴとの未練を乗り越え、今は昼も夜もなんとかできる自信が芽生えている。寝るのが嫌いという根本は変わらないが、それもまた二人の物語の一部なのだ。
数日後には本番の挙式がやってくる。アリスとエリック、二人の愛が昼の光と夜の闇を同時に祝福する。ここに至るまで長い道のりがあったが、寝るのが嫌いな少女の恋物語は最終章を迎えようとしていた。
アリスは寝るのが嫌いながらも、今は昼行動にも慣れつつあり、「ふぁ……少し眠いけど、エリックと一緒なら大丈夫」と笑う。彼女が昼間から堂々と動いている姿を見て、父グラントも「本当に変わったな」と驚きの眼差しを向けるほどだ。
「父様、昼の挙式と夜の披露宴で使う装飾がカブらないようにしたいんですが、どう配置しましょう?」
アリスが書斎で地図を広げて尋ねると、グラントは「披露宴は大広間でも夜の雰囲気を優先する。昼の挙式は庭やチャペルを使う予定だから、そこは専用にバラを配置してかまわない」と回答する。
ふたつの式を一日にまとめる都合上、装飾も二部構成となる。昼は森の中のチャペルでバラをメインに優雅な雰囲気、夜は大広間でキャンドルとクッキーを中心にロマンチックな演出――どちらもアリスとエリックのこだわりが詰まっている。
その日の夕方、エリックが王宮の仕事を終えてシャーベット家に到着し、アリスと合流。二人は庭を散歩しながら式の進行を最終的に確認する。
アリスは「ふぁ……昼と夜両方って、本当にやるんですね。朝から起きてチャペルに行き、昼すぎに食事、夕方に小休憩して夜に披露宴って流れですけど、絶対疲れますよね」と苦笑する。エリックも「そうだな。でも、シャーベット伯爵家としては前代未聞のスペシャルイベントだ」と嬉しそうに返す。
「ディーンさまやクライヴさまもきてくれるかな? わたし、どうしても後ろめたさがあるけど……」
「クライヴはまだどうするか分からないが、祝福はしてくれるはず。ディーンは分からないが、無理して呼ぶ必要もないだろう。トラブルを起こす気がないならいいが……」
アリスは頷く。「うん、呼ばなくていいかもしれないね。でも来たがっても困るし。どのみち、わたしたちを邪魔する権利はもうないしね」
二人は笑い合う。寝るのが嫌いなアリスが昼夜の式を同時にこなすのは大変だが、エリックが「当日は俺も協力する。お前が昼にダウンしそうなら、俺が支えるし、夜は逆にお前のほうが得意だろうし」と頼もしい一言をくれる。
こうして結婚式の準備は佳境を迎え、招待客もほぼ確定。アリスがエリックを選んだ物語は最高潮へ向かおうとしていた。寝るのが嫌いでも、今回は朝から起きる必要があるので意外に調整が大変だが、彼女はやる気に満ちている。
夜になり、二人は大広間へ移動し、披露宴で踊るダンスの最終リハーサルを行う。寝るのが嫌いなアリスにとって夜は活動的な時間帯だが、長い準備でさすがに足が重い。それでもエリックとステップを踏むと楽しくて笑顔がこぼれる。
「ふぁ……わたし、クライヴさまとも夜のダンスをしたけど、あのときは不安が大きかったです。今回はわたしの結婚式ですもんね。すごく安心感がある」
「俺もクライヴとは一緒に踊ったことがないが……そういう意味じゃ、あいつの得意分野だった夜のダンスを、今は堂々とお前と踊れるわけだ。勝った気分だな」
エリックの意外な冗談めかしにアリスはクスッと笑う。夜のダンスはクライヴが上手い印象があったが、今のアリスにはエリックがどんなにぎこちなくても愛おしく感じるのだ。
軽くひと踊りした後、エリックがアリスの肩を抱いて「もう少しで式だ。緊張してるか?」と尋ねる。アリスは大きく息を吐き、「実は、クッキーを焼くのと同じくらいは緊張してます」と冗談めかして答える。
「ふぁ……でも、今はあなたがそばにいるから大丈夫。寝るのが嫌いだったわたしが、こうして昼夜まとめて式をこなすなんて夢みたいだけど、一緒にがんばります」
「うん、俺もがんばる。お前が昼に不安なら腕を貸すし、夜に俺が疲れたらお前がフォローしてくれ。二人ならどんな時間帯も怖くない」
穏やかな夜の灯りの下、二人は抱き合うようにして微笑む。過去のディーンの事件やクライヴとの未練を乗り越え、今は昼も夜もなんとかできる自信が芽生えている。寝るのが嫌いという根本は変わらないが、それもまた二人の物語の一部なのだ。
数日後には本番の挙式がやってくる。アリスとエリック、二人の愛が昼の光と夜の闇を同時に祝福する。ここに至るまで長い道のりがあったが、寝るのが嫌いな少女の恋物語は最終章を迎えようとしていた。
0
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる