【完結】「婚約破棄ですか?分かりました」おしまい?

えるろって

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そして迎えた結婚式当日の朝。普段なら寝るのが嫌いで夜型だったアリスも、今日は早朝から起き出して準備を始めている。シャーベット家に招かれたメイク担当や侍女が、彼女のドレスや髪型を整え、バラをあしらったヘアアクセサリーをセット。  
昼の挙式は森の中の小さな教会で行う予定だ。遠方とはいえ、伯爵家が所有する管理領の一角にある由緒正しい教会で、昼間の自然光が差し込み、バラを飾ると非常に映えると評判だ。アリスの“バラ好き”とエリックの“騎士としての厳かな姿”にぴったりの場所だ。

「ふぁ……ドレス苦しい……でもわたし、今日は昼に主役としてがんばるんですよね」

アリスは鏡の前でくるりと回り、純白に近いドレスを見下ろす。普段のブルー系とは違うが、昼用の明るい衣装がまた新鮮だ。夜の披露宴では別のドレスを着る予定なので、今日は二つの顔を使い分ける形になる。

「さあお嬢様、お馬車の準備が整いました。グラント様もお待ちですよ」

侍女が声をかけ、アリスは大きく息を吐く。寝るのが嫌いだという自分の設定を思い返しながら、「今日は夜型のわたしが朝からフル稼働……不思議な運命だ」と苦笑しつつ、意を決して馬車へ向かう。

---

教会に到着すると、すでに参列者の多くが揃っていた。王宮騎士団関係者やシャーベット家の友人、ハリス家の親戚たちが華やかな服装で談笑している。昼の陽射しが周囲のバラを照らし、まるで童話のような世界が広がっている。  
アリスは父にエスコートされて教会内へ進む。エリックは既に祭壇付近で待機し、騎士の礼服をまとって凛々しい姿を見せている。アリスがその姿に目を奪われると、昼のまばゆい光と相まって、一瞬で胸が熱くなる。

「ふぁ……夜に始まったわたしたちの関係が、昼の挙式までたどり着くなんて。ありがとう、エリック」

心の中でそう呟きながら歩み寄ると、周囲が静まっていく。神父らしき聖職者が待ち受け、「お二人は夜会婚約を得て、今日この昼の世界で結ばれる運命にあります……」などという言葉を紡ぎ始める。  
アリスは照れながらも、深く頭を下げる。寝るのが嫌いだったことをテーマにしたわけではないが、神父も「昼夜の垣根を超える愛」を称えるような祝福の言葉を用意してくれている模様だ。

(クライヴさまも、ディーンさまも、みんなそれぞれの道を歩んでる……わたしはエリックと昼も夜も共有して、これから家庭を作るんだ。寝るのが嫌いでも、朝に起きる日が増えるかもしれない)

そんな想いを巡らせていると、神父から「それでは誓いの言葉を……」と促される。エリックがアリスに向けて改まった口調で「わたしは騎士エリック・ハリスン。伯爵家令嬢アリス・シャーベットを生涯守り、昼夜をともに歩むことを誓います」と告げる。アリスは目が潤み、声を震わせながら「わたし、アリス・シャーベットは、エリックがどんな昼夜を過ごしても共に支えます。寝るのが嫌いだったわたしが眠れる日が来ても、一緒に笑い合って生きたいです」と返す。  
参列者から感嘆の声と拍手が起こる。昼の陽光に包まれた教会内で、二人は大切な指輪を交換し、神父の祝福を受ける。寝るのが嫌いな少女が昼の世界で頂点に立った瞬間だ――かつては想像できなかったが、今はエリックという騎士が隣にいるから怖くない。

---

式が終わると、外のガーデンで軽い食事と歓談が行われる。アリスは花嫁として各テーブルを回り、衆人の前で「昼もいいですね……」と微笑みながら言葉を交わす。夜型のイメージが定着していたが、今はこうして朝から活動できる自分に驚いている。  
クライヴの姿は見当たらないが、「おそらく夜の披露宴にはひょっこり来るかもしれない」とフローレンスが教えてくれる。ディーンは招待していない。アリスは「まあ、もう会う必要もないです」と内心で思う。  
やがて昼のイベントが無事に終わり、夕方から夜にかけてはシャーベット家の大広間で“夜のパーティー”が控えている。アリスは昼のうちに一度シャーベット家へ戻り、着替えて夜のドレスに変身する予定だ。寝るのが嫌いでもさすがに体力的にきついが、エリックが「俺も休むから一緒に少し仮眠を取ろう」と提案。いつもなら「寝るの嫌い」と拒否していたアリスが、今は素直に「そうですね……少し眠りましょうか」と応じる。  
こうして昼の世界を乗り切ったアリス。夜の披露宴こそ、自分の本領発揮かもしれない――再び夜が訪れたとき、二人の結婚式は最高潮に達するのだ。寝るのが嫌いな彼女が昼でも頑張れるようになった以上、夜は言うまでもなく完璧に楽しめるだろう。
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