サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない

白神ブナ

文字の大きさ
65 / 273
第2章 一年二学期

第64話 白金祭② 大歓声と拍手

しおりを挟む
 舞台袖で一年A組は緊張していた。
薄暗い舞台袖でもわかるくらいに、生徒たちの顔はこわばっていた。

「美柑、わたし緊張してきたよ。ヤバい」

「ハルちゃん、スマイルよ。スマイル。みんなも聞いてる? スマイルだからねー」

そう言っている桜井の指先は、震えていた。
サトシは何気なく桜井の横に立ち、スッと手を握った。
驚いた桜井は、小声で言った。

「ここ、学校ですよ」

「誰も見てない」

サトシの手の中で、桜井の震えが徐々に落ち着いていくのがわかった。


前の演目が終わって、緞帳《どんちょう》が降りた。
次は一年A組の出番。
生徒たちは、幕の裏でステージの立ち位置に移動して、スタンバイした。

「さ、思う存分やりましょう! 君たちのいつもの可愛い笑顔で、観客を魅了させましょう」

サトシが声掛けすると、生徒たちから笑いが漏れた。

(よし、イイ感じだ)

会場アナウンスが聞こえた。

「次のプログラムは、一年A組によるダンス・パフォーマンスです。今年の一年生も頑張っています。練習の成果をごらんください」



 一年A組、生徒たちはオープニングに備え、各自の位置で観客に対して後ろ向きに立った。
館内とステージの照明が落とされた。
緞帳が静かに上がる。

曲のイントロが鳴った瞬間に、ステージはパッと明るい光に照らされ、可愛い女生徒たちが浮かび上がった。

アップテンポのイントロ、後ろ向きでリズムに取り、16カウントで一斉に彼女たちは正面を向いた。
観客席からワーーーっと歓声があがった。

ワンコーラス目、センターは柚木が中心で両側に桃瀬と桜井が並んだ。
男子高校生役の柚木を見て、観客席の生徒たちからは黄色い歓声があがる。
サビの部分で、投げキッス。
全員で同じ踊り、同じポーズをピタッと決める。

間奏に入った。
フォーメーションが変化。
移動しながら、一関のグループがセンターに移動。

ツーコーラス目。
一ノ瀬のグループが四小節をセンターで踊る。
次の四小節は、一ノ瀬のグループが下がり、すれ違う形で同時に二宮のグループがセンターに。
また次の四小節で二宮のグループが下がり、同時に別のグループがセンターに移動。
また次の四小節もメンバーの後ろから、別のグループがセンターに移動。
四つのグループが、それぞれにセンターを取った後
二手に分かれた真ん中から、柚木たちがセンターになり、サビの部分を踊る。

Bメロディで曲調が変化。
ここは寸劇仕立てだ。
柚木が、桃瀬と手を組んだり、または桜井と組んだり
浮気性の柚木に、桃瀬が怒って蹴りを入れる。
柚木は大袈裟に転んで、観客から笑いを取った。
Bメロのサビの部分になると、
ドタバタ劇の最中、いつの間に加わったのか、担任のサトシがセンターに登場しポーズを決めた。
ピンスポはサトシを浮かび上がらせる。
サトシの登場で、会場から驚きの歓声があがった。
まるでイリュージョンだ。




「キャー――――!!」
「キャー、サトシ先生!!!」
「いつメンバーに入ってた? わかんなかったー」

ソロパート。
サトシが一人でサビの部分を踊る。
背の高い男性教師が可愛くぶりっ子ポーズをする様子に、観客たちは大喜び。
桜井の指導もあって、指先から足のラインまで美しく。
そして、内股でかわい子ぶりっ子の仕草は大反響を呼んだ。

「サトシ先生が、ぶりっ子してるーーー!」
「キャー――! サトシ先生って、やっぱり女役だったのね」
「やだ、BL事件を思い出しちゃう」
「違うわよ。サトシ先生はわたしたちのアイドルよ」

サトシ先生ファンも、腐女子たちも大興奮だ。

そろそろ、曲はエンディングに入る。
センターは左から、桜井、サトシ、柚木、桃瀬の四人。
クラス全員で、サビの部分を繰り返して踊る。

曲のラスト。
柚木は桃瀬をお姫様抱っこ。
サトシは桜井をお姫様抱っこして、ポーズを決めた。

緞帳《どんちょう》が降りてきて、一年A組のパフォーマンスは終了した。
館内は大興奮で、盛大な拍手と歓声に包まれた。


 幕の裏では、

「はぁ、はぁ、終わった……重かった。ハルちゃん。ちょっと太ったんじゃない?」

「失礼ね。ちゃんとダイエットしてたわよ」

サトシも桜井を降ろして、肩から息をしていた。

「先生、わたし重かったでしょ」

「いや、いい。大丈夫……、はぁ、はぁ、そんなことより拍手が鳴りやまないようだが」

歓声と拍手は依然として鳴りやまない。

「どうしよう先生。アンコールなんて無理だよ」

「ここは、カーテンコールでしょう。皆さん、横に一列に並んで! カーテンコールですよー!」



 再び緞帳があがると、歓声はもっと大きく鳴り響いた。
サトシの先導で、左の観客に向かって一礼。
右の観客に向かって一礼。
最後に、正面に向かって一礼した。

想像もしていなかった大歓声に、嬉しくて泣き出す生徒もいた。
サトシまでもらい泣きしそうになったが、ぐっと堪え、自分の受け持ちの生徒たちに向かって、大きな拍手をした。
すると、その姿がまた感動を呼び、観客から惜しみない拍手が送られた。


そして、一年A組でただ一人、観客席側にいた生徒を忘れてはならない。
夏梅は、動画を撮影しながら感動に震え、涙で頬を濡らしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...