サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない

白神ブナ

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第3章 一年三学期

第92話 女生徒SIDE:結婚の噂

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「おはよー」
「おはー」
「あけましておめでとう」

 生徒たちが元気に登校してきた。
桃瀬は、昇降口で靴から上履きに履き替えていると、柚木が来たので元気に声をかけた。

「柚木くーん、おはよー! 今年もよろしくね」
「ハルちゃん、おーーーす! ことよろー」

桃瀬は、昇降口にまだ姿を見せてない桜井が気になった。

「美柑、あれからどうしたのかなー。終業式は欠席したし、わたし連絡取ってないけど」

「ああ、大丈夫だったみたいよ。冬休み中にサトシ先生と一緒にいるところを、わたし見たよ」

「え、美柑ったら、サトシ先生とデートしてたの?」

「デートというか、見かけたのはラーメン屋だけどね」

「何それ。せこっ! それじゃあ、デートじゃないわ」


桃瀬と柚木が教室に入ると、桜井はすでに席に座っていた。

「あ、美柑! 早いじゃん。どうしたの? 何かあったの?」

「おはようハルちゃん。別に何もないわよ」

「嘘よ、桜井さん」

桜井の返事を嘘だと言って席に近づいてきたのは、夏梅だ。

「桜井さんったら、朝早くから来て、校長室に呼ばれていたのよ。新年早々大変だったわね」

「えーー!? 美柑、本当? 何をやらかしたの?」

桜井は、夏梅をにらみつけた。

「はぁ? 余計なことを言うんじゃないわよ、夏梅」

「あらあら失礼だわ、桜井さん。学級委員長として、教頭先生に新年のご挨拶とお花を持って行っただけよ。そしたら、桜井さんったらひどく困ってらしたから」

夏梅の証言を聞いた柚木と桃瀬は、驚いた。

「夏梅、あんたまた教頭先生にゴマをすりに行ったの?」

「美柑、何よ。何があったのよ。教えてよ、友達じゃないの」

「う、うん。ハルちゃんと柚木くんには、あとでちゃんと教えるわよ。その時まで、ちょっと待ってて」


実は、昨日、桜井はサトシからメールを受け取っていた。

:校長先生から、例の話があるから早く登校してください

それで、今朝は早く登校し、校長室でサトシとの交際について聞かれた。
生徒と教師の危険な関係を、教頭から追及されたうえに叱責されたのだった。

「まさか、美柑、退学するんじゃないわよね」

「まさか!! ハルちゃん、やめて。それは考え過ぎよ」

「だって、サトシ先生とラーメン屋行ったんでしょ」

「そんなことぐらいで退学にならないでしょ」

夏梅は桃瀬たちの不安を増幅させるように、どや顔をした。

「桜井さん、ついに年貢の納め時ね」

柚木は怒った。

「夏梅、あんた、なんてことを言うのよ。そんなことあるわけないでしょ!」

「そうよ。美柑が退学になったら、わたしも学校辞める」

「ハルちゃーん、わたしだって学校やめるよぉ」

桜井は泣き出した桃瀬と柚木を慰めた。

「わたし、退学なんかしないわよ。だから、安心して」

「うわーーーん、みかーん!」

「ほら、ほら、チャイムが鳴ったわよ。先生がいらっしゃるから、みんな席について」

夏梅は桜井美柑のことなど問題ではないとでもいうように、クラスのみんなに声をかけた。



「はい、あけましておめでとうございまーす。三学期が始まりました。新年のあいさつはそこそこにして、さっそく出席をとりまーす」

一年A組、朝のHRでサトシは出席を取った後、クラス全員を見回した。
全員そろっていることを確認した後、始業式のために体育館へと誘導した。
サトシの指輪に気が付いた生徒たちが、ヒソヒソと話している声が聞こえて来る。

「見た?」
「見た」
「先生、薬指に指輪してたよね」
「あった、あった。あれ左だっけ?」
「左だよ。まさか、サトシ先生結婚した?」
「うっわ、マジで? 独身教師がまた減ってしまったわ」
「え? サトシ先生の他に独身教師っていたっけ?」
「いたじゃん、青柳先生」
「あー、すぐ辞めちゃった先生でしょ」
「あと残っている、男って?」
「大山、古松川、藤原、五十嵐……ゲロゲロ。みな、おっさんだわ」
「青柳先生、戻って来ないかなぁ」
「青柳先生を逃したのは、大きいよねー」




始業式が終わって教室に戻ってくると、桃瀬は柚木に小さな声で言った。

「ねぇ、ねぇ、柚木くん。サトシ先生、結婚したみたいだよ」

「みんな、噂してるけど、本当かなぁ」

「美柑は、ショックだろうね。おまけに校長室に呼ばれてさ。なんて声をかけていいものやら……」

「どうする?」

「美柑だって、指輪を見てるんじゃないの? わざわざ言わなくても……」

そこへ、夏梅がやってきて、桜井に言った。

「桜井さん」

「何?」

「サトシ先生ね、結婚したみたいよ」

「夏梅!」

「残酷!」

「あら、仕方ないじゃない。本当の事ですもの。指輪してらしたでしょ。これであなたの追っかけは終わったわ。教頭先生からもさっき注意があったんでしょう?」

「……?」

桜井は夏梅の言っている意味が分からなくて、返事に困った。
それを見た桃瀬は、桜井がショックを受けているのだと勘違いして、必死にフォローした。

「美柑、だめよ、傷ついちゃ、ほら新年あけて最初の登校日よ」

「めでたい、めでたい」

しかし、夏梅はさらに続けた。

「それにしても、ひどいわよねぇサトシ先生も。桜井さんになーんにも言わなかったなんて」

「夏梅やめなよ。美柑がかわいそう。美柑、しっかりするのよ」

「そう、そう。美柑にはまだ、あの若狭くんがいるじゃない!」

柚木と桃瀬は、桜井をなぐさめるつもりで一生懸命に若狭を推してきた。

「ハルちゃんやめてっ! なんでそういう話になるのよ」

「でも、わたしうらやましいわ」

「ねー、いっぱい恋が出来て」

桜井は全否定した。

「いやいや、あいつなんか、なんの関係もないからっ」

意外にも夏梅は桜井に賛同した。

「そうよ。若狭くんは、わたしがもらったわ。安心して桜井さん」

「はぁ?! 夏梅、おまえなぁー」

「ほほほ、そういうことよ。桜井さん、サトシ先生の左の薬指をよく見るといいわ」

「なんだ、そのことを言っているの? 知っているわよ。やーね」

桜井の余裕の対応に、桃瀬と柚木も、そして夏梅も面食らった。

「「美柑? 知っていたの?」」

「桜井さんったら、ず、ずいぶん余裕じゃないの……」

桜井は冷静になって切り返した。

「でも、あまりいいふらさないでね。先生に悪いから」

「え? 余裕のよっちゃん。美柑、やけに機嫌がいいわね」

「そう? そんなことないわよ」

「いいえ、そんなことあるわ!」

桜井は、にんまりと笑ってせみた。

(ふふふ、やだわニヤニヤしちゃう。あの指輪の相手は、だもの)


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