サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない

白神ブナ

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第3章 一年三学期

第105話 女生徒SIDE:星座・血液型・性別

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 その日の午後。
帰りのHRが終わって、桜井たちはトイレ掃除をしていた。

「ハルちゃーん、ちょっとバケツに水汲んでー」

「あー、悪い。わたしもう行くから」

「え、行くって?」

桃瀬は、適当にデッキブラシで床をまるく掃除し終わると、掃除用具入れに放り投げた。

「ほーい、お終い! 行こ、柚木くん」

「う、うん、ごめんねー。美柑」

「……」

桃瀬の自由奔放な態度に、桜井はあきれかえった。

「ハルちゃん、ふたご座のB型だった。組織や人に縛られるのが苦手なタイプね」

桃瀬が帰って行く姿をにらんでいる桜井に、夏梅がスッと寄って来て掃除を手伝った。

「さあさ、桜井さん、トイレ掃除を早く終わらせましょ。あとは備品を補充すればいいんでしょ」

「夏梅ってさ、どんなときでも面倒見がいい姉御肌だよね。誕生星座はなに?」

「しし座よ。わたしはしし座のA型。華やかで目立つ女王様なの」

「そ、そう。でも、自分で女王様って言うの、恥ずかしくない?」

「別に、事実だし。そんなことより、桜井さん、早く掃除終わらせて下駄箱の中の物、ちゃんと回収するの忘れないでよ」

「あ、そうだった。ああ、やだもう、夏梅のバカ、照れるじゃないの」

「桜井さんって、ひょっとしてうお座?」

「うん、うお座のO型だけど?」

「なるほどね。現実離れした恋に恋するタイプよね」

「それって、どういう意味? 嫌味なの?」

「嫌味じゃないわ。ほら、もう掃除終わり。さっさと片付けて」

桜井は、夏梅の指示された通りに動くことが嫌ではない。
ただ、夏梅の正義感が強すぎて一緒にいると疲れることがある。

「あ~あ、結局、先生。髪を切ったのに何も言ってくれなかったなぁ。みんなの前では言いにくいのかな。そのくせ、他の子には、髪切ったのかとかよく言ってるのに……」

そんなことを考えながら、下駄箱を開けるとサトシからのプレゼントが目に入った。
桜井はプレゼントを取り出してカバンにしまうと、ニヤついた顔を隠すこともせず、スキップしながら昇降口を出て行った。


 その様子を下駄箱の陰から、サトシはじっと見守っていた。

(新しいヘアースタイルも、プレゼントに喜ぶ仕草も、可愛いすぎるんだよ、あいつは)




サトシ先生、蠍座A型男性=一途で健気に自分のことだけを見てくれる相手を好む。



 桃瀬と柚木は、新宿のファッションビルで流行の洋服を選んでいた。
可愛い系の桃瀬は何を試着しても、モデルのように可愛かった。

「あ、これも着てみよう。あっちもいいな。これとそれを合わせたらおしゃれだよね」

桃瀬春奈、ふたご座B型女性=優柔不断である。


「あー、やっぱり、やーめたっ」


桃瀬春奈、ふたご座B型女性=気分次第で行動がころころ変わりがち。今は楽しそうでも、すぐに飽きて投げ出してしまうことも。


桃瀬と柚木は、カフェで休憩をとることにした。

「全部、似合っていたのにー。ハルちゃん、結局何も買わないの?」

「あーあ、服ってやっぱり高いよね。どうしよっかなー。柚木くんは何買うの?」

「わたしは、かわいい小物が見たいなぁ」

「そういえば、柚木くんって何座生まれ?」

「わたし、おとめ座のO型よ」

「へぇー、おとめ座って面倒見がいいから、もうちょっと頼れるタイプかと思ったけど、どっちかっていうと、柚木くんは補助的存在だよね。もっと、しっかりしないと女の子にモテないよ」

「うわー、言われちゃったなぁ。ワハハハ」



柚木は桃瀬の言葉に傷ついた。
女の子にモテなくてもいい。
なぜなら、柚木は女の子なのだ。
しかし、言った桃瀬に全く悪気はない。

「ねぇ、ねぇ、あそこに立っている男の子。柚木くんに似ていてカッコイイよー」

「ほ、ほんとだぁ」

柚木は涙を隠して、桃瀬の話につきあっていた。
柚木カオル、おとめ座O型女性=ちょっと気が弱いところがあるので、失敗を恐れるあまり、消極的になることがある。





 翌日
朝のHRの後、桜井が一限目の教科の準備をしていると、桃瀬がやって来た。

「ねぇ、ねぇ、美柑。先生から何かプレゼントもらった?」

「あったわよ」

「何? 何を貰ったのか聞きたーい」

「別に、教えるようなものじゃないわ」

「何よ。教えてくれてもいいじゃない。昨日早く帰ったからって怒ってるの? ところでさぁ、先生って何座?」

「蠍座のA型よ」

「じゃ、うお座O型の美柑とは……」

「くくくく……甘く、そして情熱的に盛り上がる恋愛の相性よ。同じことでケンカをしても、何度でも許し合えるんですって。やだわー、ケンカなんかしたことさえないのにぃ」

「あ、そう。よかったわね」

桃瀬は聞いて失敗したと思った。
こんなに惚気られると思っていなかったからだ。

「そういや、うお座って、夢見がちなんだよね。聞かなければよかった」

柚木も桃瀬に同意した。

「うん。うまくいっているからって、美柑は素直に喜びすぎよね」


 夏梅がやって来て、クラスのみんなに伝えた。

「一限目の社会は、急遽自習になりました。みんな、自習したノートは提出だからね。おしゃべりしないで、自習してくださーい」

桜井は、夏梅を見ながら言った。

「夏梅ってさ、しし座のA型だったよね」

「そうだけど。それと、今回の自習とは何も関係ないでしょ」

「そうだけどさ、さすがリーダーって感じだと思って」

「ふん、今度二年生に上がる時、クラス替えがあるでしょ。わたしのようなリーダーが、クラスに一人はいるように編成されるのよ」

「あらら、じゃ、夏梅以外のリーダーがいるクラスになりたいものだわ」

「桜井さんっ、そんなこと言って! いつも仲がいい桃瀬さんや柚木さんだって、同じクラスになるかどうかわからないのよ」

「それもそうね」

「あなたたち、いつも一緒にいるけど、本当に仲良しなのかしら」

夏梅にそう指摘されると、桜井は不安になった。

「仲がいいから、一緒に行動してるんだけど」

「くすっ、そうかしら」

夏梅はそう言って、自分の席まで戻ってしまった。
桜井は夏梅の態度にむかついた。



「くすっ、ですって。くすって何よ。昨日の発言を撤回するわ。夏梅ってほんとに嫌な女」

側にいた桃瀬も、はっきりと言った。

「真面目だけど、柔軟性がないから付き合いにくいんだよね。しし座のA型って」

「でも、改めて言われると、わたしたち、クラス替えでバラバラになる可能性、あるんだよね」

柚木は不安になっていた。
柚木が不安な表情になると桃瀬も不安になった。

「美柑、わたしたちバラバラになっちゃうのかな」

「そうかもね。仲がいいと離されるって聞いたことあるわ」

「嫌よ。じゃ、今日からわたしたち、仲が悪くなろうよ。ケンカ勃発よ!」

「ハルちゃん、そういう問題じゃないって」

「なんで、美柑は平気なのよ。担任の先生だって、次は誰になるかわからないんだよ。サトシ先生じゃないかもしれないんだよ」

柚木が桃瀬を止めた。

「そこまで! ハルちゃん、よしなよ。美柑はそんなことわかっているよ。言い過ぎだわ」

夏梅の忠告が飛んで来た。

「そこ! うるさい。静かに自習してください!」

桜井たちは、それから話をやめて、教室は鬱々とした時間が流れた。



 しばらくすると、桃瀬から謝って来た。

「美柑、ごめんね。……怒ってる?」

桜井は、素直に自分の寂しさを桃瀬に伝えた。

「先生、クラス替えや新学期の準備で、めちゃくちゃ忙しいんだって。当分会えないって」

「美柑……学校でいつでも会えているじゃん」

「だよね。でも、学校の外で会いたいんだよね。誕生日プレゼントもらったんだけどさ、英和辞典だったわ。笑えるでしょ」

「笑わないよ」

「なんだか、わたしって現実離れした恋に恋しているだけなのかな。卒業まで、先生からあと何回フェイントかけられるんだろ」

笑いながら寂しさを打ち明ける桜井の目には、涙がたまっていた。

「美柑」

「うん?」

「今度、わたしの彼を紹介する」

「ほんとー? いいの?」

「うん、サトシ先生みたいにかっこよくないから。美柑が見たら笑うかもしれないけど」

「そんな、笑うワケないじゃん。ハルちゃんだって、プレゼントが英和辞典ってわかっても笑わなかったじゃん」

「うん、美柑ならきっと、いい人だってわかってくれる気がするの」

「わーい、約束よ。柚木くんも一緒でいいかな」

「うん、いいよ」

「何、何? わたしのこと呼んだ?」

「後で詳しく教えてあげる―」

桜井と桃瀬と柚木は、なんだかんだ言って、仲良く机を寄せて話し始めた。
このグループならクラス替えがあっても、ずっと仲間でいたいと桜井は思った。

(それにしても、誕生日プレゼントに英和辞典はないわ。泣きたいよ)

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