サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない

白神ブナ

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第5章 二年二学期

第150話 中間テストの平均点やばっ

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 サトシが学校から家に帰ってくると、桜井はまだ帰っていなかった。

「あれ、今日って塾だっけ?」

毎週木曜日は、桜井は西新宿にある塾へ通っている。

「ああ、木曜日か。ということは、今日のご飯は俺が準備か……。んーー……かったるい」

サトシが冷蔵庫を開けると、保存容器に何か入っているのを見つけた。

「これを焼けということか?」

容器の蓋を開けると、生のハンバーグが二個入っていた。

「焼くだけでいいのかな」

今日は仕事で疲れているので、焼くだけでも面倒くさいサトシだった。
生ハンバーグは見なかったことにして、冷蔵庫のドアを閉めた。

(はぁ……、今日はご飯食べないでこのまま寝てしまいたい)

サトシは、寝室に行くと着替えもせずそのままベッドにうつ伏せになった。



 しばらくすると、桜井が帰って来た声が聞こえた。

「ただいまー」

サトシがリビングにいないので、桜井はサトシの部屋を覗きに来た。

「先生?」

サトシは動くのもだるくてうつぶせのまま返事をした。

「んー」

「どうしたんですか? 先生、具合悪いの? うつ伏せで寝てたらメガネのフレームが曲がっちゃうよ」

桜井はベッドまできて、サトシのメガネを外して机の上に置いた。

「んー。塾はどうだった?」

「どうって、今日も勉強になったよ」

「そうか。桜井は偉いなぁ」

「先生、何かあったんですか?」

「……中間テスト、英語のクラス平均点がめっちゃ低かった」

「クラスの平均ってC組の平均が低かったってこと?」

「ああ、落ち込んでる。海よりも深く沈んでる」

「待って先生。平均点が良かったら先生のお給料上がるの? 逆に平均点が低かったら、先生の評価が下がるの?」

「そんなの、関係ないよ」

「それなら、平均点なんか気にしなくていいじゃん!」

「生徒にはわからないかもしれないけど、平均点はかなり重要なんだよ」

「ふーん。普通は定期テストの平均って、どれくらいなの? で、C組の平均点は何点だったの?」

「それは、業務秘密。言えない」

「そっか、じゃあしかたないね。ご飯にしよう」

桜井はベッドから離れて部屋を出て行こうとしたが、サトシに手を捕まれて引き留められた。
よほど話を聞いて欲しいのか、サトシは業務秘密で言えないと言った内容を、桜井にべらべらと話し始めた。

「テストってな、平均60から70点台になるように作っているんだよ。それが、中間テストのC組平均だしてみたら、48点という低さだった。ちなみに青柳先生にB組の英語の平均を聞いたら55点だった」

「……めっちゃ秘密を喋ってくる! で? 一応聞くけど、中間テストの英語の問題を作ったのはサトシ先生って解釈でいいのかな」

「うん、そう。平均が低いということは、俺が作ったテストを皆は出来てないと言うことだ」

「なんでなんだろう」

「考えられる理由は、授業をまったくみんな聞いていなかった。ということは、俺の授業のクオリティ、授業内容、指導方法。全部がイケてなかったんだ。終わった。最悪だ。期末どうしよう。無理、おれはもうこの仕事やってられない。もう今日は寝る。ご飯食べずに寝る」

「どういう凹み方? 恐いわ」

「あとは、生徒がまったく勉強しなかったのかもしれない。あるいは、テストの問題が難しすぎたか」

「難しすぎた? という声は聞こえてきたわ」

「ということは、俺が生徒の理解度を全く把握していなかった。これぐらいのテストならいけるだろうと誤解してたのか。すべて俺の責任だ」

「そんなに自分を責めないでください。中間テストの平均が低いなら、期末テストで易しくすればバランス取れるんじゃないですか?」

「そうなんだが……」

「そしたら、期末でわたし英語100点取るから。先生の授業は面白いですよ。たまたま体育祭があって燃え尽きた子が多かったのかも。そんなの、勉強しない生徒が悪いんです。サトシ先生は悪くありません。はい、この話はもう終わり。もう、わたしハンバーグ焼くよ」

「わかった。後で行く」



 桜井はハンバーグを焼き上げたところに、丁度サトシがキッチンに来た。

「先生、皿とって」

「はい」

きれいにハンバーグを盛り付けてから、ご飯になった。

「美味い。やっぱり桜井のハンバーグは最高だな」

「あれ? さっきご飯食べないで寝るって、誰かさん、言ってませんでした?」

「そうだっけ?」

「ま、いいわ。美味しいものを一緒に食べて、今日の嫌なことは忘れましょ」

「桜井さぁ、塾へ行って家でも勉強して、体調崩さないようにしろよ」

「料理がストレス解消なので、ここで料理してれば大丈夫です」

「うーーん、でも桜井は夢中になると、時間忘れて勉強に没頭しているときがあるからな。ちゃんとオンとオフを切り替えような」

「そんな時は、オフだよって先生が言ってください」

「いいよ、わかった」

サトシは、自分は教師なのに、勉強しすぎのオフ係になるとは、なんとも奇妙なことだと思った。

(まあいいか。俺のオフスイッチは桜井なんだし。お互い様だな)
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