サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない

白神ブナ

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第8章 三年二学期

第229話 先生たちにWEB出願させる桜井

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 サトシと工藤先生は、サトシの家に向かっていた。

「サトシ、本当にお前の家に寄っても大丈夫か? 桜井は本当に実家に行った?」

「ああ、放課後お前の話を聞いて、さっそく実家に行って両親に話すってLINEがあった。大丈夫さ」

「テスト問題作りも終わったし、じゃ、今からお前んちで飲むか」

「ってか、もうそのつもりだろ。コンビニでビール買って用意してるくせに」

「あ、ばれた?」


 サトシが玄関に着くと、灯りがついて、鍵は開いていた。

「あれ? 桜井が慌てて出て行ったのかな……」

サトシが玄関を開けると、揚げ物の香ばしい匂いがしていた。

「おい、サトシ……、わざわざ料理してくれる泥棒はいないぞ。桜井がいるんじゃないか? だとしたら、俺は遠慮する」

「今さら言うなよ。……ただいまー」

サトシの声で、キッチンから桜井が飛び出してきた。

「あちゃー! いるじゃん! サトシ、話が違……」

「おかえりなさー……あれ、工藤先生も一緒?」

「桜井、実家に行ってたんじゃないのか?」

「行きましたよ。お母さんに話したら、併願しなさいって。お父さんとは電話で……」

「よかったな、桜井。サトシ、俺はやっぱり帰るよ」

遠慮して帰ろうとする工藤先生を桜井は引き留めた。

「工藤先生、せっかくだからご飯食べて行ってください」

「いや、そんな図々しい……」

「いいですよね、サトシ先生。わたしの相談にのってくれたお礼です」

「そうだよ。工藤にはお礼しなきゃな」

サトシは工藤先生の背中を押して、中に入れと誘った。



 リビングに行くと、美味しそうな匂いにたまらなくなって、サトシは今日のメニューを聞いた。

「いい匂い! 今日のメニューは何?」

「先生が買い物してあった食材から推理して、とんかつを作りましたっ!」

「やった! 工藤、とんかつだって。俺が作ろうとして挫折したやつ」

「いいのか? 急に人数が増えて、足りないなんてことはないのか?」

「工藤先生、大丈夫です。サトシ先生が三人分の豚ロースを買っていたので、丁度いいです」

「悪いな、桜井。実家から帰って来て、わざわざ料理したのか」

工藤先生は、桜井の行動力に驚いた。

「あ、お母さんがね、サトシ先生と一緒にWEB出願しなさいって。丁度いいから、工藤先生も書類の内容をチェックしてもらえますか?」

「まあ、書類のチェックぐらいなら……、とんかつ食うのに、断れるわけがないだろ」

サトシは笑って工藤の脇を小突いた。

「ハハハ、じゃ、先にWEB出願してしまおう。ここにノートパソコン持ってくるから待ってて」

「わたしは、部屋から書類を持ってきまーす」

工藤先生は、観念してソファーに座り込んだ。

「腹減ってるから、早くなぁーー」



 サトシと桜井がノートパソコンでWEB出願している間、工藤先生は桜井のエントリーシートを読んでいた。
そして、一通り読み終わると、エントリーシートをテーブルの上に置いた。

「工藤先生、どうでした? どこか変なところがありました?」

「ああ……、これ急いで作っただろ」

「ええ、すみません。急に併願するって決まったから、夏期講習で習った書き方で、さっき急いで書いたんですけど……」

「さっき書いたにしては、内容がよくまとまっているし、志望理由もそれっぽくていい出来だ」

「ありがとうございます!」

「だが、……」

工藤は言葉に詰まった。

「なんだよ、工藤。悪いところがあったら正直に教えてくれよ。なあ、桜井」

「ちゃんと指摘してください。書き直します」

「内容はこれでいいと思う。だが、意味不明のところが一か所」

「なんだ? 工藤」

「どこですか? 工藤先生」

工藤先生は、意味不明だという箇所を指で示した。

「ここ。……貧乳による職業問題って何だ?」

「ええええーーー!!!」

サトシと桜井は、顔を真っ赤にして叫んだ。

「貧乳じゃなくて、貧困! 職業じゃなくて食糧です。貧困による食糧問題。すみません! 入力変換ミスですっ! 今すぐ書き直しますっ」

桜井は誤字のあったエントリーシートを工藤先生から奪うと、恥ずかしくて急いで自分の部屋に入った。
サトシと工藤先生は、大声で笑いたいのをこらえてプルプルと震えていた。

「サトシ……、笑っちゃ可哀そうだが、可笑しくて……腹筋が崩壊寸前だ」

「俺もだ」



 工藤先生とサトシに手伝ってもらいながら、桜井はWEB出願を終えた。

「桜井、とりあえず出願は済んだな。調査書は青柳先生に余分に頼んであるから、貰ったらすぐ書類を郵送しなさい」

「ありがとうございます。サトシ先生も工藤先生も、お腹すきましたよね。ご飯にしましょう」

「ううう、やっとご飯だ。やれやれ、これでやっとビールが飲める」

工藤先生は、サトシの家の冷蔵庫にビールを取りに行った。

「工藤先生ったら、勝手にうちの冷蔵庫開けて……まるで自分の家みたい……」

学校では、真面目に進路指導している教師と、まじめな英語教師が、オフになるとただのおっさんになること。
学校の同僚以外でそれを知っているのは、桜井だけだった。

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