48 / 48
ふたりの進路編
48.続・傍観者Cの独白
しおりを挟む
隣の席の美少年は、どうやら低気圧に弱いらしい。
今日は朝からどんより曇り空。雨も酷くて、午後からは雷が鳴るかもしれないとの予報を聞いた。
「月島くん、大丈夫?」
朝から眉間に皺を寄せていた美少年は、四時間目が終わった途端にいよいよ机に突っ伏してしまった。
私はいつものように隣のクラスまで昼ご飯を食べに行こうとしていたんだけど、さすがにスルーできなくて声を掛ける。
「……薬、飲むタイミングを間違えて……。上手く効かなくて」
「そっかぁ…」
美少年もとい月島くんは、真っ青になった顔を少しだけ上げて返事をしてくれた。
そっか、なるほどな。いつも薬でコントロールしてるけど、たまにミスっちゃった時に死にそうな顔をしてるってわけか。
「……あんまり、いい思い出がなくて」
「ん? 雨に?」
「そう…。いろいろ……思い出す……」
長いまつ毛が伏せられ、また机の上に頬をくっつけるようにして頭が落ちる。
トラウマってやつ…? 完璧超人の月島くんにもそういうことあるんだなぁ。
いやでも、神経質って言うか繊細? っぽいからそんなに意外でもないのかな?
ちらっと視線を落とすと、さらさらの亜麻色の髪が目の前にある。……ちょっとだけ撫でちゃったりしてもいいかな?
いや違うよ、下心はないよ!? 辛そうだからね、よしよしっていう意味合いでね!?
「秋人!」
心の中で葛藤していると、いつぞやの放課後の時のように美少年の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
自分のクラスじゃないというのに遠慮なく教室に入ってきた彼は、机の上で突っ伏す月島くんを見てあからさまに表情を歪める。
「薬は? 飲んだのか?」
「飲んだ……全然効かない……」
突っ伏したまま、くぐもった声で返事をする月島くん。
教室に入ってきた彼──東城くんは、月島くんのこめかみ辺りにそっと手を添えながら声をひそめた。
「そんなことだろうと思ったよ…。朝起きてすぐ飲めって言っただろ?」
「だって、あんまり薬飲みたくなくて……」
「それでこうなってたら意味ないだろ。気持ち悪くなってない?」
「……ちょっと、だけ」
ゆっくり顔を上げた月島くんは、潤んだ瞳で東城くんを見つめつつ添えられた手に自分の手を重ねた。東城くんはその視線を受け止めながら少し困ったような顔をする。
美少年と美少年、ほんとに絵になるなぁ。月島くんは苦しんでるからあんまりこんなこと思っちゃいけないけど。
「...bleib hier.(ここにいて。)」
「……こら、そんな顔するなよ」
こめかみに触れていた手が滑り、月島くんの目元を隠す。
なんて言ったんだろ、いま。東城くんにはわかったのかな?
「よし、早退するか。寮まで送ってやるよ」
「だめ……放課後にレッスン室とってる……」
「今日は休み。ピアノなんて弾けないだろ、そんな死にそうな顔してたら」
月島くんはそのまま本当に早退していった。驚かないで聞いてほしいんだけど、東城くんが月島くんをお姫様抱っこして教室から出て行ったのだ。
いやいやいや、確かに東城くんの方が背は高いけど? 月島くんも決して背が低いわけじゃないし、そこまで身長差がなかったような気がするんですけど?
東城くんはその日、すれ違う女子たち(たまに男子も)を何人も失神させそうになりながら月島くんを寮まで連れて帰ったのだという。
今日は朝からどんより曇り空。雨も酷くて、午後からは雷が鳴るかもしれないとの予報を聞いた。
「月島くん、大丈夫?」
朝から眉間に皺を寄せていた美少年は、四時間目が終わった途端にいよいよ机に突っ伏してしまった。
私はいつものように隣のクラスまで昼ご飯を食べに行こうとしていたんだけど、さすがにスルーできなくて声を掛ける。
「……薬、飲むタイミングを間違えて……。上手く効かなくて」
「そっかぁ…」
美少年もとい月島くんは、真っ青になった顔を少しだけ上げて返事をしてくれた。
そっか、なるほどな。いつも薬でコントロールしてるけど、たまにミスっちゃった時に死にそうな顔をしてるってわけか。
「……あんまり、いい思い出がなくて」
「ん? 雨に?」
「そう…。いろいろ……思い出す……」
長いまつ毛が伏せられ、また机の上に頬をくっつけるようにして頭が落ちる。
トラウマってやつ…? 完璧超人の月島くんにもそういうことあるんだなぁ。
いやでも、神経質って言うか繊細? っぽいからそんなに意外でもないのかな?
ちらっと視線を落とすと、さらさらの亜麻色の髪が目の前にある。……ちょっとだけ撫でちゃったりしてもいいかな?
いや違うよ、下心はないよ!? 辛そうだからね、よしよしっていう意味合いでね!?
「秋人!」
心の中で葛藤していると、いつぞやの放課後の時のように美少年の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
自分のクラスじゃないというのに遠慮なく教室に入ってきた彼は、机の上で突っ伏す月島くんを見てあからさまに表情を歪める。
「薬は? 飲んだのか?」
「飲んだ……全然効かない……」
突っ伏したまま、くぐもった声で返事をする月島くん。
教室に入ってきた彼──東城くんは、月島くんのこめかみ辺りにそっと手を添えながら声をひそめた。
「そんなことだろうと思ったよ…。朝起きてすぐ飲めって言っただろ?」
「だって、あんまり薬飲みたくなくて……」
「それでこうなってたら意味ないだろ。気持ち悪くなってない?」
「……ちょっと、だけ」
ゆっくり顔を上げた月島くんは、潤んだ瞳で東城くんを見つめつつ添えられた手に自分の手を重ねた。東城くんはその視線を受け止めながら少し困ったような顔をする。
美少年と美少年、ほんとに絵になるなぁ。月島くんは苦しんでるからあんまりこんなこと思っちゃいけないけど。
「...bleib hier.(ここにいて。)」
「……こら、そんな顔するなよ」
こめかみに触れていた手が滑り、月島くんの目元を隠す。
なんて言ったんだろ、いま。東城くんにはわかったのかな?
「よし、早退するか。寮まで送ってやるよ」
「だめ……放課後にレッスン室とってる……」
「今日は休み。ピアノなんて弾けないだろ、そんな死にそうな顔してたら」
月島くんはそのまま本当に早退していった。驚かないで聞いてほしいんだけど、東城くんが月島くんをお姫様抱っこして教室から出て行ったのだ。
いやいやいや、確かに東城くんの方が背は高いけど? 月島くんも決して背が低いわけじゃないし、そこまで身長差がなかったような気がするんですけど?
東城くんはその日、すれ違う女子たち(たまに男子も)を何人も失神させそうになりながら月島くんを寮まで連れて帰ったのだという。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【本編完結】水曜日の迷いごと
咲月千日月
BL
人知れず…心に抱えているもの、ありますか?
【 准教授(弁護士) × 法科大学院生 】
純粋で不器用なゆえに生き辛さを感じている二人の、主人公目線からの等身大ピュア系ラブストーリーです。
*現代が舞台ですが、もちろんフィクションです。
*性的表現過多の回には※マークがついています。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
《完結》僕が天使になるまで
MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。
それは翔太の未来を守るため――。
料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。
遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。
涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
僕の目があなたを遠ざけてしまった
紫野楓
BL
受験に失敗して「一番バカの一高校」に入学した佐藤二葉。
人と目が合わせられず、元来病弱で体調は気持ちに振り回されがち。自分に後ろめたさを感じていて、人付き合いを避けるために前髪で目を覆って過ごしていた。医者になるのが夢で、熱心に勉強しているせいで周囲から「ガリ勉メデューサ」とからかわれ、いじめられている。
しかし、別クラスの同級生の北見耀士に「勉強を教えてほしい」と懇願される。彼は高校球児で、期末考査の成績次第で部活動停止になるという。
二葉は耀士の甲子園に行きたいという熱い夢を知って……?
______
BOOTHにて同人誌を頒布しています。(下記)
https://shinokaede.booth.pm/items/7444815
その後の短編を収録しています。
林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる