革命のエチュード

鳴真 のわか

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ふたりの進路編

48.続・傍観者Cの独白

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隣の席の美少年は、どうやら低気圧に弱いらしい。
今日は朝からどんより曇り空。雨も酷くて、午後からは雷が鳴るかもしれないとの予報を聞いた。

「月島くん、大丈夫?」

朝から眉間に皺を寄せていた美少年は、四時間目が終わった途端にいよいよ机に突っ伏してしまった。
私はいつものように隣のクラスまで昼ご飯を食べに行こうとしていたんだけど、さすがにスルーできなくて声を掛ける。 

「……薬、飲むタイミングを間違えて……。上手く効かなくて」
「そっかぁ…」

美少年もとい月島くんは、真っ青になった顔を少しだけ上げて返事をしてくれた。
そっか、なるほどな。いつも薬でコントロールしてるけど、たまにミスっちゃった時に死にそうな顔をしてるってわけか。

「……あんまり、いい思い出がなくて」
「ん? 雨に?」
「そう…。いろいろ……思い出す……」

長いまつ毛が伏せられ、また机の上に頬をくっつけるようにして頭が落ちる。
トラウマってやつ…? 完璧超人の月島くんにもそういうことあるんだなぁ。
いやでも、神経質って言うか繊細? っぽいからそんなに意外でもないのかな?
ちらっと視線を落とすと、さらさらの亜麻色の髪が目の前にある。……ちょっとだけ撫でちゃったりしてもいいかな?
いや違うよ、下心はないよ!? 辛そうだからね、よしよしっていう意味合いでね!?

「秋人!」

心の中で葛藤していると、いつぞやの放課後の時のように美少年の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
自分のクラスじゃないというのに遠慮なく教室に入ってきた彼は、机の上で突っ伏す月島くんを見てあからさまに表情を歪める。

「薬は? 飲んだのか?」
「飲んだ……全然効かない……」

突っ伏したまま、くぐもった声で返事をする月島くん。
教室に入ってきた彼──東城くんは、月島くんのこめかみ辺りにそっと手を添えながら声をひそめた。

「そんなことだろうと思ったよ…。朝起きてすぐ飲めって言っただろ?」
「だって、あんまり薬飲みたくなくて……」
「それでこうなってたら意味ないだろ。気持ち悪くなってない?」
「……ちょっと、だけ」

ゆっくり顔を上げた月島くんは、潤んだ瞳で東城くんを見つめつつ添えられた手に自分の手を重ねた。東城くんはその視線を受け止めながら少し困ったような顔をする。
美少年と美少年、ほんとに絵になるなぁ。月島くんは苦しんでるからあんまりこんなこと思っちゃいけないけど。

「...bleib hier.(ここにいて。)」
「……こら、そんな顔するなよ」

こめかみに触れていた手が滑り、月島くんの目元を隠す。
なんて言ったんだろ、いま。東城くんにはわかったのかな?

「よし、早退するか。寮まで送ってやるよ」
「だめ……放課後にレッスン室とってる……」
「今日は休み。ピアノなんて弾けないだろ、そんな死にそうな顔してたら」

月島くんはそのまま本当に早退していった。驚かないで聞いてほしいんだけど、東城くんが月島くんをお姫様抱っこして教室から出て行ったのだ。
いやいやいや、確かに東城くんの方が背は高いけど? 月島くんも決して背が低いわけじゃないし、そこまで身長差がなかったような気がするんですけど?

東城くんはその日、すれ違う女子たち(たまに男子も)を何人も失神させそうになりながら月島くんを寮まで連れて帰ったのだという。
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