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カイル王子の失脚から一年後。エーデルワイス領は、名実ともに「美の聖地」として世界的な観光地へと変貌していた。
その中心にある領主の館……かつては朽ち果てたボロ屋敷だった場所は、今や純白の大理石と、領地のバラ、そして温泉の蒸気を利用した温室庭園に囲まれた、豪奢な宮殿となっていた。
そして今日、その宮殿で、一組の結婚式が執り行われる。
「……お嬢様。いや、今日からは奥様、とお呼びしなければなりませんね」
控え室で、純白のウェディングドレスに身を包んだミントに、専属メイドのアンナが涙を拭いながら声をかけた。
ミントは、ジルコンのこだわりで領地の職人たちに作らせた、壁一面を覆う巨大な姿見の前に立っていた。
「アンナ。今日という日を境に 私の呼び名が変わるなんてことはないわ。私はいつだって『世界で一番美しい私』よ。それ以外の呼び方なんて 必要ないわ」
ミントは鏡の中の自分に 近づいては離れ 様々な角度から自身の晴れ姿を確認していた。
「見てちょうだい このドレスのレース。一針一針が 私の美しさに感動して震えながら縫われたのが分かるわ。そしてこのブーケ……バラたちが『ミント様に抱かれたい!』と競い合った結果 選ばれた精鋭たちよ。ああ 私ってば なんて罪深い花嫁なのかしら」
ミントは恍惚とした表情で、自分自身を強く抱きしめた。
「……お待たせしました、ミント様。準備はよろしいでしょうか」
扉が開き、礼装に身を包んだジルコンが現れた。彼もまた、一年前とは見違えるほど堂々とした、領主の夫に相応しい風格を漂わせている。
「あら、ジルコン。貴方、今日の衣装、悪くないわね。私の純白の輝きを引き立てるための、絶妙な『影の色』を選んだわね。褒めてあげるわ」
「……ありがとうございます。私の人生のテーマは、貴女の『引き立て役』を極めることですから」
ジルコンは穏やかに微笑み、ミントに手を差し出した。
「さあ、行きましょう。村人たちも、王都からの来賓も、皆が貴女の登場を待ちわびています」
「ええ、分かっているわ。世界が私を呼んでいるのね」
ミントはジルコンの手を取り、一歩を踏み出そうとした。
だが、その足がピタリと止まった。
「……ちょっと待って、ジルコン」
「どうされましたか? ドレスの裾が?」
「違うわ。……まだ、一番大切な儀式が終わっていないわ」
ミントはジルコンの手を離し、再び巨大な姿見の前に戻った。
そして、深呼吸をした後、鏡の中の自分に向かって、今日一番の、最高の笑顔で投げキッスを送った。
「……今日も世界で一番可愛いわ、私! この世で一番愛してる! 結婚おめでとう、私!」
「…………」
アンナは天井を仰ぎ、ジルコンは肩を震わせて笑いを堪えた。
「……ふっ、くくっ。最後まで、貴女はブレませんね」
「当然でしょう? 私が私を愛さなくて、誰がこの完璧な花嫁を幸せにするというの? さあジルコン、エスコートしなさい。私という奇跡を、世界に見せつけてあげるのよ!」
ミントは再びジルコンの手を取り、今度こそ扉の向こうへと歩き出した。
その先には、彼女を称える何千もの人々の歓声と、彼女自身が築き上げた、輝かしい未来が待っている。
婚約破棄、追放、断罪。すべての悲劇を「自分への愛」という最強の武器で粉砕し、自らを世界の中心へと押し上げた、伝説の悪役令嬢ミント・エーデルワイス。
彼女の物語は、これからも鏡の前で、永遠に続いていくのであった。
その中心にある領主の館……かつては朽ち果てたボロ屋敷だった場所は、今や純白の大理石と、領地のバラ、そして温泉の蒸気を利用した温室庭園に囲まれた、豪奢な宮殿となっていた。
そして今日、その宮殿で、一組の結婚式が執り行われる。
「……お嬢様。いや、今日からは奥様、とお呼びしなければなりませんね」
控え室で、純白のウェディングドレスに身を包んだミントに、専属メイドのアンナが涙を拭いながら声をかけた。
ミントは、ジルコンのこだわりで領地の職人たちに作らせた、壁一面を覆う巨大な姿見の前に立っていた。
「アンナ。今日という日を境に 私の呼び名が変わるなんてことはないわ。私はいつだって『世界で一番美しい私』よ。それ以外の呼び方なんて 必要ないわ」
ミントは鏡の中の自分に 近づいては離れ 様々な角度から自身の晴れ姿を確認していた。
「見てちょうだい このドレスのレース。一針一針が 私の美しさに感動して震えながら縫われたのが分かるわ。そしてこのブーケ……バラたちが『ミント様に抱かれたい!』と競い合った結果 選ばれた精鋭たちよ。ああ 私ってば なんて罪深い花嫁なのかしら」
ミントは恍惚とした表情で、自分自身を強く抱きしめた。
「……お待たせしました、ミント様。準備はよろしいでしょうか」
扉が開き、礼装に身を包んだジルコンが現れた。彼もまた、一年前とは見違えるほど堂々とした、領主の夫に相応しい風格を漂わせている。
「あら、ジルコン。貴方、今日の衣装、悪くないわね。私の純白の輝きを引き立てるための、絶妙な『影の色』を選んだわね。褒めてあげるわ」
「……ありがとうございます。私の人生のテーマは、貴女の『引き立て役』を極めることですから」
ジルコンは穏やかに微笑み、ミントに手を差し出した。
「さあ、行きましょう。村人たちも、王都からの来賓も、皆が貴女の登場を待ちわびています」
「ええ、分かっているわ。世界が私を呼んでいるのね」
ミントはジルコンの手を取り、一歩を踏み出そうとした。
だが、その足がピタリと止まった。
「……ちょっと待って、ジルコン」
「どうされましたか? ドレスの裾が?」
「違うわ。……まだ、一番大切な儀式が終わっていないわ」
ミントはジルコンの手を離し、再び巨大な姿見の前に戻った。
そして、深呼吸をした後、鏡の中の自分に向かって、今日一番の、最高の笑顔で投げキッスを送った。
「……今日も世界で一番可愛いわ、私! この世で一番愛してる! 結婚おめでとう、私!」
「…………」
アンナは天井を仰ぎ、ジルコンは肩を震わせて笑いを堪えた。
「……ふっ、くくっ。最後まで、貴女はブレませんね」
「当然でしょう? 私が私を愛さなくて、誰がこの完璧な花嫁を幸せにするというの? さあジルコン、エスコートしなさい。私という奇跡を、世界に見せつけてあげるのよ!」
ミントは再びジルコンの手を取り、今度こそ扉の向こうへと歩き出した。
その先には、彼女を称える何千もの人々の歓声と、彼女自身が築き上げた、輝かしい未来が待っている。
婚約破棄、追放、断罪。すべての悲劇を「自分への愛」という最強の武器で粉砕し、自らを世界の中心へと押し上げた、伝説の悪役令嬢ミント・エーデルワイス。
彼女の物語は、これからも鏡の前で、永遠に続いていくのであった。
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