婚約破棄!ついでに王子をどん底に突き落とす。

鏡おもち

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「さあ、今日も元気に労働(リフレッシュ)の時間よ!」

パルメは朝一番に「ガイア・ブレイカー」を肩に担ぎ、鼻歌まじりに村へと繰り出した。

背後ではアンナが「お嬢様、せめてその物騒な輝きを布で隠してください!」と叫びながら追いかけてくる。

パルメが目指したのは、村の広場にある古びた井戸だった。

最近、水の出が悪くて村人たちが困っているという話をバルトから聞いたからだ。

「おはようございます、皆様! 今日も絶好の穴掘り日和ですわね!」

広場に集まっていた村人たちは、泥だらけの令嬢が現れたことに驚き、一斉に地面に平伏した。

「パ、パルメ様! このような汚らわしい場所へ、どうして……!」

「汚らわしいだなんて失礼ね。土は生命の源よ。ところで、この井戸が詰まっているのかしら?」

「は、はい。数日前の地響き……いえ、なんでもありませんが、それ以来水の出が……」

村人は、パルメが昨日「地球を叩いた」せいで地盤が少しズレたことを、なんとなく察していたが、口には出さなかった。

「任せなさい。私の新しい相棒、ガイア・ブレイカーにかかれば、水脈の一つや二つ、秒速で掘り当ててみせますわ!」

パルメは井戸の縁に立つと、黄金のスコップを高く掲げた。

(……よし、ここで一気に掘れば、私の家の風呂場にも温泉を引けるかもしれないわ!)

彼女の目的はあくまで「自分のQOL(生活の質)向上」である。

「はあああぁぁぁ……ッ!!」

パルメがスコップを井戸の底へ向かって突き出した瞬間、黄金の閃光が辺りを包み込んだ。

ズドォォォォォン!!

轟音と共に、井戸から巨大な水柱が天高く噴き上がった。

「わあ! 大成功だわ! これで今日からシャワー三昧ね!」

噴水のような水を浴びて、パルメは無邪気に喜んだ。

しかし、びしょ濡れになった村人たちは、その光景を神話のワンシーンのように見つめていた。

「……見たか。パルメ様が、我々のために涙を流しておられる(※ただの井戸水)」

「あのお方は、自分を捨てた王都を見返すために、この地を楽園に変えようとしているんだ!」

「パルメ様……! あんた、なんて慈悲深いんだ!」

村人たちは、パルメの周りに集まり、口々に感謝の言葉を叫び始めた。

パルメは、村人たちの熱狂ぶりに少し引き気味で首を傾げた。

「あ、あら……? 皆さん、そんなに喜んでいただけるなんて。まあ、水が出るのはいいことですものね」

(なんだか、思っていたより歓迎されているわ。王宮では『性格のひん曲がった公爵令嬢』って石を投げられそうだったのに)

そこへ、一人の少年がパルメのドレスの裾を控えめに引いた。

「パルメ様……。パルメ様は、本当は悪い人じゃないんだよね? 王様たちが言ってること、嘘だよね?」

パルメはしゃがみ込み、少年の鼻を指でちょんと突いた。

「悪い人? そうね、私はとっても悪い人よ。だって、自分の好きな時に寝て、好きな時に食べて、誰の命令も聞かないって決めたんですもの」

少年の瞳がキラキラと輝いた。

「……それって、誰にも縛られない『自由な王様』ってこと?」

「あら、素敵な解釈ね。そうよ、私は私の人生の王様なの一」

パルメのその言葉は、村人たちの耳には「私は王家への忠誠を捨て、この領地を独自に発展させる宣言をした」と聞こえていた。

(パルメ様、ついに……ついに独立を!?)

(おのれリュント王子、こんな素晴らしいお方を手放すとは、やはりあいつは暗君だ!)

パルメの知らないところで、王室への不満が領民たちの間で急速に高まっていく。

「さあアンナ、次はあっちの果樹園の土を入れ替えましょう! 美味しいデザートのためなら、私はどこまでも掘るわよ!」

「お嬢様……。今の発言、絶対あとで問題になりますからね……」

アンナの予感は、あながち間違っていなかった。

パルメが楽しそうに土を掘り返すたびに、領地の生産性は爆発的に向上し、同時に王宮への「反逆の噂」が雪だるま式に膨らんでいったのである。

本人はただ、最高に自堕落な余生を過ごすための準備に、全力投球しているだけなのだが。

「ああ、お腹が空いたわ。バルト、今日の晩御飯は奮発してちょうだい! なんたって、私は『人生の王様』なんだから!」

パルメの笑い声が、水が溢れる広場に響き渡った。
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