婚約破棄!ついでに王子をどん底に突き落とす。

鏡おもち

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「……ちょっと、これどういうことかしら?」

パルメは、領主館の倉庫の前に立ち、腕を組んで唸っていた。

目の前には、見上げるほどの高さに積み上げられた、瑞々しいカブ、カボチャ、そして大量のジャガイモの山。

聖農具「ガイア・ブレイカー」と、隣国の王子セドリックという超高性能な「自動草むしり機」のおかげで、収穫量が去年の数百倍に達していた。

「お嬢様、どういうことも何も、大豊作ですよ。このままでは冬を越すどころか、数年分の備蓄になりますね」

アンナが帳面を片手に、遠い目で報告する。

「数年分なんていらないわ! ジャガイモは鮮度が命なのよ! ……そうだわ、余っているなら近隣の領地に『押し付けて』きなさい!」

「お嬢様、『お裾分け』と言ってください。言葉のチョイスが悪役のそれです」

「いいのよ、細かいことは。とにかく、この『攻撃的なまでの栄養価』を、他の連中にも叩き込んでやるんだから!」

パルメは、不敵な笑みを浮かべた。

彼女としては「食べきれないから腐らせるくらいなら、みんなで食べて健康になろう」という純粋な善意(と在庫処理)のつもりだった。

しかし、パルメの元・悪役令嬢としての顔立ちと、染み付いた高飛車な口調が、事態を思わぬ方向へ加速させる。

数日後。

パルメは自ら馬車に乗り込み、近隣を治めるボナパルト子爵の屋敷を訪れた。

ボナパルト子爵は、パルメが王都から追放されたと聞き、内心「落ちぶれた令嬢など相手にする必要はない」と高を括っていた男である。

「お待たせいたしましたわ、子爵。今日は、貴方のために『特別なもの』を用意しましたの」

応接室に現れたパルメは、扇で口元を隠し、妖しく目を細めた。

「は、はあ……。パルメ様、わざわざのお越し、痛み入ります。それで、『特別なもの』とは……?」

「ふふふ。……外を見なさい」

パルメが指差した窓の外には、武装した(ように見える、農具を持った)パルメの領民たちが、山のような野菜を積んだ荷馬車を囲んでいた。

「な、なんだ、あの数は……!? もしや、我が領への武力侵攻か!?」

「失礼ね。あれは私の情熱の結晶よ。……子爵。貴方には、これを受け取る『義務』がありますわ。拒絶は許しません。一粒残らず、貴方の腹の中に収めてもらうんだから!」

パルメとしては「遠慮せずに全部食べてね」という意味だった。

しかし、子爵の耳にはこう聞こえた。

(……この野菜を食らえ。さもなくば、お前の領地を私の配下(あの凶悪な農民たち)で踏み荒らしてやる!)

子爵は、パルメの背後に立つセドリック王子の冷徹な視線(ただパルメを凝視しているだけ)に気づき、ガタガタと震え出した。

「わ、分かりました! 全量、高値で買い取らせていただきます! ですから、どうか命だけは……!」

「あら? 買い取ってくれるの? タダでもいいと思っていたのに、律儀な方ね。じゃあ、遠慮なく頂くわ!」

パルメは「なんて太っ腹な人かしら!」と上機嫌で契約書にサインをした。

その際、パルメが口にした言葉が、さらにトドメを刺した。

「いい? これから毎月、これ以上の量を『送り込んで』あげるから。逃げられると思わないことね」

(……定期的な上納の要求だ! 逆らえば殺される!)

子爵は、真っ白な顔でパルメを見送った。

帰り道の馬車の中で、パルメはホクホク顔で金貨の袋を眺めていた。

「アンナ、見たかしら? 子爵様、あんなに喜んで……感動のあまり震えていたわね!」

「お嬢様。あれは100パーセント恐怖の震えです。今の発言、完全に脅迫でしたよ」

「失礼ね。私はただ、健康的な食生活を推奨しただけよ。……あ、セドリック殿下、どうして貴方まで馬車に乗っているの?」

向かい側に座るセドリックは、うっとりとパルメを見つめていた。

「……パルメ。君のあの、弱者をいたぶるような(※親切にしているだけの)冷徹な瞳。実に素晴らしかった。隣国との貿易路も、今の調子で『制圧』してくれないか?」

「殿下まで何を言っているんですか。私は平和主義者のニートですよ?」

「分かっている。君の言う『平和』とは、君の支配下にある静寂のことだろう? 全部分かっているさ」

「……アンナ、この人、やっぱり話が通じないわ」

こうして、パルメの「親切心による在庫処分」は、近隣領主たちへの「野菜による経済侵略」として噂されるようになった。

王都では、「パルメが独自の軍事ネットワークを構築している」という尾ひれがついた報告書が、リュント王子の元へ届けられていた。

「パルメ・ド・ラ・メール……。あいつ、一体何を企んでいるんだ!?」

リュントが焦り始める一方で、パルメは領地に戻り、次の作戦を考えていた。

「次は、この大量のトマトで『赤い悪魔のソース(※ただのピリ辛ケチャップ)』を作って、世界を震撼させてやるんだから!」

パルメの「悪役」としての看板は、彼女の努力(?)虚しく、ますます黄金に輝きを増していくのであった。
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