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「……ちょっと、セドリック殿下。確認ですけれど、私が貴方の国へ行くということは、またあの『お妃教育』とやらをやり直さなきゃいけないんですの?」
翌朝、パルメは荷造りの手を止めて、窓際で優雅に(しかし目はパルメを追って)佇むセドリックを問い詰めた。
「お妃教育? ……パルメ、我が国アステリアのモットーを知っているかい?」
「モットー? 『清く正しく美しく』とか、そういう反吐が出るようなやつかしら」
パルメが嫌そうに顔をしかめると、セドリックは極上の微笑みを浮かべて首を振った。
「いいや。我が国の王家の家訓は『有能な者は怠惰を極め、無能な者は勤勉を強いられる』だ。……君のように、一瞬で業務を終わらせて昼寝を貪る人間こそ、我が国の王妃に最もふさわしい」
「……何その、ニートに優しすぎる国家。ちょっと移住へのモチベーションが爆上がりしましたわ」
パルメは黄金のスコップ『ガイア・ブレイカー』を、特注の旅行用ケースにガチンと収納した。
「でも、いいんですの? 私は王都で『悪役令嬢』として名を馳せた女ですわよ。貴方の国の国民だって、私のような冷酷な女が来たら震え上がりますわ」
「それでいいんだ、パルメ。……いや、それがいい」
セドリックは一歩近づき、パルメの肩に手を置いた。
「我が国の役人どもは、少しばかりのんびりしすぎている。君のあの、ブラック企業を即座に更地にするような『悪役っぷり』で、我が国の古い体制を根こそぎ耕してほしいんだ」
パルメは、その言葉にニヤリと口角を上げた。
(……なるほど。いい子ちゃんを演じる必要はないっていうことですわね)
(むしろ、私が『悪役』として君臨すれば、誰も私に面倒な仕事を振ろうなんて思わない……。わがまま放題、寝たい放題……。これこそが、真のホワイト企業の経営スタイル!)
「分かりましたわ。……私、決めました。私は隣国へ行っても、淑女なんて目指しませんわよ」
パルメは扇をバサリと開き、高慢ちきなポーズを決めた。
「私は、アステリア王国史上、最も『最悪で最高』な悪役王妃になって差し上げますわ! 私の安眠を妨げる者は、たとえ大臣であろうとスコップで埋めて差し上げますことよ。おーほっほっほ!」
「素晴らしい……! その傲慢さ、その支配欲! 君なら我が国の経済を三日で掌握し、四日目には全土に温泉を掘るだろうな!」
セドリックは感極まったように、パルメの前に膝をついた。
そこへ、アンナが大きな鞄を引きずりながら入ってきた。
「お嬢様、準備ができました。領民たちが、お嬢様の『隣国征服』を祝って、外で火祭りを始めていますわよ」
「……アンナ。征服じゃなくて、嫁入りだと言っているでしょう?」
「ええ、表向きは。でも領民たちは皆、『パルメ様が隣国を農地に変え、実質的な支配下に置くつもりだ』と信じて疑っていませんから」
パルメは窓の外を見た。
そこには、「パルメ様、隣国の土地も耕し尽くしてください!」「アステリアの野菜を駆逐せよ!」といった、物騒な旗を振る領民たちの姿があった。
「……まあいいわ。期待に応えるのがプロの悪役令嬢ですもの。アンナ、行くわよ! 隣国の土質を調査して、私の『不労所得計画』を次のステージへ進めるわ!」
「お嬢様。その言い方だと、本当に侵略者に見えますわよ」
パルメは黄金のスコップを抱え、セドリックと共に馬車へと乗り込んだ。
アステリア王国。かつてパルメが「ブラック王宮」で苦しんでいた頃、遠い理想郷だと思っていた国。
そこへ、彼女は今、最強の武器(農具)と最狂の理解者を携えて乗り込もうとしていた。
「待っていろ、アステリア! この私が、貴方たちの国を最高に住みやすく、そして私にとって最高に楽な場所に作り替えてあげますわ!」
馬車が動き出す。
パルメの新しい人生は、今度こそ「悪役」という名の「究極の自由」を求めて、華々しく幕を開けた。
しかし、その背後では、廃嫡されたリュント王子が、ボロボロの作業着に身を包んでパルメの領地へと引きずられていく姿があったのだが……それはまた、別の地獄の話である。
翌朝、パルメは荷造りの手を止めて、窓際で優雅に(しかし目はパルメを追って)佇むセドリックを問い詰めた。
「お妃教育? ……パルメ、我が国アステリアのモットーを知っているかい?」
「モットー? 『清く正しく美しく』とか、そういう反吐が出るようなやつかしら」
パルメが嫌そうに顔をしかめると、セドリックは極上の微笑みを浮かべて首を振った。
「いいや。我が国の王家の家訓は『有能な者は怠惰を極め、無能な者は勤勉を強いられる』だ。……君のように、一瞬で業務を終わらせて昼寝を貪る人間こそ、我が国の王妃に最もふさわしい」
「……何その、ニートに優しすぎる国家。ちょっと移住へのモチベーションが爆上がりしましたわ」
パルメは黄金のスコップ『ガイア・ブレイカー』を、特注の旅行用ケースにガチンと収納した。
「でも、いいんですの? 私は王都で『悪役令嬢』として名を馳せた女ですわよ。貴方の国の国民だって、私のような冷酷な女が来たら震え上がりますわ」
「それでいいんだ、パルメ。……いや、それがいい」
セドリックは一歩近づき、パルメの肩に手を置いた。
「我が国の役人どもは、少しばかりのんびりしすぎている。君のあの、ブラック企業を即座に更地にするような『悪役っぷり』で、我が国の古い体制を根こそぎ耕してほしいんだ」
パルメは、その言葉にニヤリと口角を上げた。
(……なるほど。いい子ちゃんを演じる必要はないっていうことですわね)
(むしろ、私が『悪役』として君臨すれば、誰も私に面倒な仕事を振ろうなんて思わない……。わがまま放題、寝たい放題……。これこそが、真のホワイト企業の経営スタイル!)
「分かりましたわ。……私、決めました。私は隣国へ行っても、淑女なんて目指しませんわよ」
パルメは扇をバサリと開き、高慢ちきなポーズを決めた。
「私は、アステリア王国史上、最も『最悪で最高』な悪役王妃になって差し上げますわ! 私の安眠を妨げる者は、たとえ大臣であろうとスコップで埋めて差し上げますことよ。おーほっほっほ!」
「素晴らしい……! その傲慢さ、その支配欲! 君なら我が国の経済を三日で掌握し、四日目には全土に温泉を掘るだろうな!」
セドリックは感極まったように、パルメの前に膝をついた。
そこへ、アンナが大きな鞄を引きずりながら入ってきた。
「お嬢様、準備ができました。領民たちが、お嬢様の『隣国征服』を祝って、外で火祭りを始めていますわよ」
「……アンナ。征服じゃなくて、嫁入りだと言っているでしょう?」
「ええ、表向きは。でも領民たちは皆、『パルメ様が隣国を農地に変え、実質的な支配下に置くつもりだ』と信じて疑っていませんから」
パルメは窓の外を見た。
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「……まあいいわ。期待に応えるのがプロの悪役令嬢ですもの。アンナ、行くわよ! 隣国の土質を調査して、私の『不労所得計画』を次のステージへ進めるわ!」
「お嬢様。その言い方だと、本当に侵略者に見えますわよ」
パルメは黄金のスコップを抱え、セドリックと共に馬車へと乗り込んだ。
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そこへ、彼女は今、最強の武器(農具)と最狂の理解者を携えて乗り込もうとしていた。
「待っていろ、アステリア! この私が、貴方たちの国を最高に住みやすく、そして私にとって最高に楽な場所に作り替えてあげますわ!」
馬車が動き出す。
パルメの新しい人生は、今度こそ「悪役」という名の「究極の自由」を求めて、華々しく幕を開けた。
しかし、その背後では、廃嫡されたリュント王子が、ボロボロの作業着に身を包んでパルメの領地へと引きずられていく姿があったのだが……それはまた、別の地獄の話である。
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