媚薬の恋 一途な恋

万実

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神聖魔法

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「嘘だろ?!後継者のリングを他人に渡していたのかよ!」

ペンダントの受け渡しを見ていたフィンさんは、驚愕して叫んだ。

「お前はこのリングの意味を知らないだけだ。僕がどんな気持ちでティアにこれを渡していたのか」

「そんなお嬢ちゃんにやってなんの意味がある?!って、わざわざお前を呼び出さなくてもリングはすぐそこにあったんじゃないか!」


地団駄を踏むフィンさんは、怒りを顕にして、銀色の壁に体当たりをする。

「そんな事をいくらやったとしても無駄なこと。僕の結界が破られることはない」

この銀色の壁は結界なんだ。

フィンさんがいくら傷つけようとしても、本当にびくともしない。

フィンさんは肩で息をしながらこちらを見て、嫌な笑いを浮かべた。

「アレク、確かにお前の結界は凄いかもしれない。だがな、後継者のリングの所持者が、神聖魔法しか使えないなんてな。お前は後継者には相応しくないんだよ」

その言葉を聞いたアレクはびくっとし、急に動きを止めた。

「お前の魔法が原因で、母親はいなくなり、家族はバラバラ」

フィンさんが話している内容は、プライベートなものもあり、アレクの動揺を誘うためなのは間違いなさそう。

あっ!アレクの様子がおかしい。

「アレク?」

私が呼びかけても返事がない上に、その顔には悲しみと苦痛が浮かび上がる。

この状態は見たことがある。ちょうど【媚薬】の効果が切れたときと同じだ。

「なあアレク、お前の魔法はフェザークラウス家にとって全くと言っていいほど役に立たない。さっさとその地位を他に譲るんだ」

フィンさんの言葉によって、アレクの顔からは、悲しみを覆い隠す様に表情が抜け落ちた。

「アレク!」

私は再び声を掛けるけど、それにも全く反応せず、アレクの世界が完全に停止してしまったかのように見える。

アレクの魔法のどこに問題があるというの?

アレクの魔法のおかげで視力も回復したし、右手も治してもらった。

銀色の壁の結界も凄すぎるくらいなのに。

アレクの手を取り何度も呼びかけるけど、反応は変わらない。

このままではマズい。何とかしないと。

「次期当主候補が聞いて呆れる。メンタルが弱すぎる」

私は笑うフィンさんに向き直った。

「フィンさん、私はアレクの魔法はどんな魔法よりも素晴らしいと思います」

「一般的に見たら、神聖魔法の使い手は数少ないから重宝されるし貴重だろう。でもフェザークラウス家は特殊なんだよ」

「······」

フィンさんはフェザークラウス家の特殊性について語りだした。
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